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第二話

 翌日も、同じようなダンボールが到着した。


 郵便屋さんは事務的な仕草でわたしに押印を求める。

 昨日とまったく同じ動作で開封し、手紙を封筒から引っ張り出した。



『昨日はいきなりでびっくりしたでしょう。

 そして、ストーカーじゃないかと心配したと思います。

 だけど誓います。今の私は、あなたの前に姿を現わすことはありません。

 とにかく、病気でぐずついた思いを払拭(ふっしょく)して下さい。

 それだけを望みます』



 差出人は自分がストーカーであることを否定している。

 もちろん文面どおりに受けとることはできない。わたしは少し身震いして、警察に連絡しようかどうかと考えた。


 が、警察に連絡してもあまり効果がないと聞いたことがある。それに、わたしはまだ十九歳。未成年の大学二年生だ。被害を受けた(あるいは受けかけた)ことがわかれば、そのまま親に連絡される恐れがある。


 この、親に連絡、というのがくせ者なのだ。


 そもそもわたしの両親は、故郷から遠く離れた都会の大学にわたしを通わせることを一貫して反対していた。女子だからどうとか、故郷に後ろ足で砂をかけていくのかとか、もうわたしにとっては噴飯(ふんぱん)ものの反対理由だったので、わたしは断固として都会の大学を受けることを主張した。テレビで見るだけだったテーマパークにテレビ局。週末はまだ見ぬ友達とウインドウショッピングを楽しむんだ。個人店のカフェでジンジャーイタリアンティーと洒落込むのだ。ラーメン一辺倒で押す地元になんか用はない。

 それでも両親は入学から一年半が経過した今でもわたしの都会行きを快く思っておらず、週に三回の電話による安否連絡を義務づけている。その通話でも、「なにか問題があったら、仮面浪人してもいいからこっちの大学に通いなさい」と釘を刺される始末。


 こんな現状で警察沙汰になるなんて、アーチェリーで十点を仕留めるようなものだ。金メダル確定。そして、わたしの田舎出戻りも、バシッと確定。


 どうしよう……。


 ただ、この手紙の内容だけを見てみると、けして悪いことは書いていない。


 病気が治ってからも部屋に閉じこもっていたけど、それは相手に居場所を教えているも同然だ。もちろん住所は知られている。それでも、『常に部屋にいる』と認識されることだけは避けたい。


 その二つの理由が、わたしの心を少しばかり動かした。


 翌日わたしは、一ヶ月半ぶりに大学へと向かった。


 ちょうど梅雨晴れの、気持ちのよい日だった。


挿絵(By みてみん)

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