策束静巡 壱 その6
それほどに、ユキオンナの“カワイイ”はカンペキ。
――ここで、『違う』って言うたら、どうなんねやろ、、、
「しゃーけどホンマ、お前も、モノアイも、、、」
「言うたやん。あたしら、オトナやって」
FFにウィンクする。
それがまた、カワイイ。
――、、、けど、気持ち悪っ
「へいへい。おユキは大人やな~」
「せやろ? しゃーからオトナ同士の話しでちょっとお願いしてな、紹介してもらったヤツ居てんねんやんかぁ」
話し続けるユキオンナの言葉はモコに届かなかったが、代りにFFの言葉が脳内にリフレインする。
『この仕事終わったら、アイツから離れるで』
「お願いって、、、フェラでもしたったんか?」
「なんでやねん。せやけどめっちゃ色々言われたわ。アイツねちっこいなぁ」
「おっさんはねちっこいぞ~w」
「あんま調子乗ったら摘んだろ思たけどなwww」
『せやないと、死ぬで』
吐きそうな言葉で笑う2人。
テーブルの下で、足を蹴られた。
――そうか、笑わんと、、、
ユキオンナの笑顔に、笑って応えたモコ。
「ほんで、何をお願いしたんや?」
「桜ノ宮に憑いたEG使い、知ってる?」
「知らん。モコは? 知ってんのけ?」
「噂は廻って来た」
「へ~~。さすが。ほんでソイツ、どんなヤツ? 強いんか?」
一度、ユキオンナを見た。
笑顔だ。
どうぞ、あなたが喋って。
多分、そう言ってる。
「強いんやなくて、レアや」
「ほぉ、、、」
「理屈は知らんけど、相手シャブ中みたいにして、廃人にしよる」
「なんやそれ?」
「完全な、術的間接攻撃型や」
「名前は?」
「ブラックマウンド」
FFがスマホを触りだす。
「此処、結界の外やで」
「あ、、、」
不貞腐れて、スマホをテーブルの上に置く。
「まぁ、見ても名前くらいやで。管理者もまだよう解ってへんみたいやわ」
「ちっ、、、」
ポスシステムのデータでほぼ名前しか解らないのは、新参者と言うだけではない。
インダイレクターの攻撃は、どうしたってカメラだけでは解りにくいのだ。
そもそもの話し、このEG使いはシステムに参加していない。
それでもポスに名前が載っているのは、管理者が『不良参加者』と認定したからだ。
不良参加者=悪者。
結界内の常識。
少しでも名を上げたいEG使いにとって、それは力を行使して良い理屈になる。
悪者を殺したところで、何処からも文句は出ない。
しかも管理者が不良参加者と認定した者、ソイツは賞金首。
大手を振って殺せる。
それどころか、殺して褒められる。
そして、お金が貰える。
こんな都合の良い話し、滅多にない。
現に単体で、あるいは徒党を組んで桜ノ宮に乗り込んだEG使いたちが居た。
その彼らの末路は、、、。
誰もが使い手としては再起不能に、場合によっては人として廃人にされた。
真面な状態で戻って来たヤツは、誰一人として居なかった。
ブラックマウンド。
そいつは、突如出現れた天才的なEG使いか?
それとも、突然やってきた古豪のNG使いか?
どちらにしても、かなりの使い手。
厄介な土地に、厄介な使い手が憑いた。
元々桜ノ宮は“磁場”の関係で、他の土地よりも多くのエレクトリック・ゴーストが出現する。
暦によっては昼間に現れる事もあり、土地のクセを知っていないと生活しにくい。
それに加え、ラブホテル街って事で結界外からのちょっかいも多い。
これは風俗を生業にする輩が居るから。
そう言う輩は得てして、反社と繋がっている。
商売上の問題が起れば、そういったヤツラが出てくる。
結界内で起こった問題なのに、反社の息の掛かったEG使いが、ナシを付けに外からいちいちやって来る。
とってもメンドクサイ。
なので、管理者にとって土地の価値は低い。
土地に憑けば何らかの手段を考えたりもするのだが、普段はそこに居ない。
反社に雇われ、反社の代理としてて桜ノ宮に来るEG使い、、、。
言わば用心棒的なポジションなので、揉め事が起こらないと結界の中に入って来ない。
そんなヤツらをわざわざ結界の外まで追っ駆けて、どうにかしようとは思わない。
労力の無駄。
冷静に見れば、桜ノ宮で問題を起こすってのは大概が風俗絡み。
管理者にとっては興味の無い下ネタ発端のイザコザなので、そんなものは自分達で解決してほしい。
もっと言うなら、誰かが桜ノ宮に憑いてくれた方が良い。
管理者としてはその1人を管理するだけで良くなるので、正直有難い話しなのだ。
土地に憑くって事は、反社も抑えるって事になるし、、、。
桜ノ宮にEG使いが憑いたって噂が立ち始めた時、結界内なのに対外的なメンツのため、管理者は2人ほど“カクセン”を送り込んだ。
送り込まれたEG使い、、、さっきモコが言った通り、容赦なく廃人にされた。
一応これで管理者も『動きましたよ』的なポーズは取ったし、引き続き対応しているとアナウンスしておけば文句も出難い。
しかも“カクセン”より強い使い手が土地に憑いたとなれば、いちばん五月蠅い“浮遊層”の連中の不満が管理者側に向く事もなくなる。
桜ノ宮に憑いたEG使い、ブラックマウンド。
今は、土地のアガリで反社連中とちょこちょこやり合ってる最中だとか、、、。
管理者にすれば、互いに潰しあってくれる方が有難い。
理想は共倒れしてもらって、その後自分の息の掛かったEG使いに桜ノ宮の土地を治めさすのが一番。
まぁ、それが無理でも、ハピハピの所為で増えすぎたEG使いが減ってくれるだけでも管理者にとっては管理しやすくなるので都合の良い話しだ。
現状、管理者は進んで桜ノ宮には手を出す気が無い。
理由は二つ。
一つは今言った、EG使いと反社が潰しあってくれるのを待っている。
二つ目は、インダイレクターの術式は、カメラ越しでは結果しか見えないこと。
これでは対抗策どころか、術式がどういったモノなのか説明すらできない。
それでモコの先程のセリフ、『管理者もまだよう解ってへんみたいやわ』になる。
管理者はポスシステムにクレームが来ないか、そっちの方が心配だ。
桜ノ宮のEG使いは、謎。
結界内では、それが共通の認識だった。
「桜ノ宮でな、レプリックを見たってヤツが居ってな、、、」
モコとFFが話し終えたのを確認してから、ユキオンナが話し始めた。
「それって絶対、どんなヤツか見に行ってるやろ?」
「せやな」
FFが同意する。
「ほんで、レプリックが桜ノ宮に行ったんは、1人の判断や無いやろ?」
FFも、モコも、頷く。
レプリックの後ろには、モノアイが居る。
「あのオッサンの事やから、管理者より早う桜ノ宮のEG使いと繋がる気ぃや! って思ったんや」
「せやのぉ。言われたら、そうやわ」
ユキオンナの仮説に、FFの同意が激しくなる。
モコもそう言われると、そうとしか考えられなくなった。
なにせモノアイと管理者が、敵対関係ってのは有名だし。
「しゃあから教えて貰おう思てな、ブラックマウンドの能力を、、、」
「え?」
ユキオンナの話しが、やっと初めの答えに戻った。
モメに揉めてるハズのモノアイに会いに行った理由が、、、。
「知りたない? インダイレクターの能力」
正直、そんな理由? とモコは思った。
互いに殺し合ってたのに、そんな理由で会いに行った?
大胆と言うか、何も考えて無いと言うか、、、。
彼女の場合、本能のままって言うのが正解なのかもしれない。
改めてユキオンナの考え方に付いていけないと、モコは思った。




