策束静巡 壱 その5
容器の液体、中身が半分以下。
「もう、使ったん?」
「実際にお試しせんと、アホには伝わらんやろ?」
無垢な笑顔で、見つめられた。
媚薬より、その貌の方がヤバい。
「おぅ! どやってんどやってん?」
前のめりに聞くFF。
「そこの事務所に3人のアイドルが居ってな、事務所に呼び出して飲ませてん」
「おぅおぅ、ほんで?」
「何かいつもと違う雰囲気って気付いて警戒してたけど、それ飲んだらキッタナイ社長のチンポに皆でしゃぶり付いてオナったりレズったり、やり過ぎて見てるこっちが引いたわ」
おいおいホンマか? って言いながら、モコの手から媚薬の容器を奪い取るFF。
それを天上の灯りに掲げて見る。
「容器見ながらチンポ勃ててんちゃうやろな」
ユキオンナの言葉に急にマジメな顔で、FFがお辞儀をするように頭頂部を出して言った。
「見てくれ。頭から我慢汁出てへんか? って、わしゃ亀頭かっ」
――しょーもな、、、
冷ややかなモコ。
ノリツッコミが会心の出来だったと言わんばかりのドヤ顔を向けて来るFF。
ウザいので、ユキオンナに話しを振る。
「せやけど、どっからそんな媚薬、仕入れたん?」
右手を前に出した。
ちょっと待っての合図。
「コーヒー入れてくる」
パフェを食べ終えたユキオンナは、立ち上がってドリンクバーに向かった。
それを横目で確認したら、FFがモコの方を見ずに言った。
「アイツ、俺らとちょっと違う方へ行っとるな」
「!?」
驚いた。
いつもと声のトーンが違う。
これは思ってもみなかった。
FFも、ユキオンナに違和感を感じてる??
「ち、、、違う方、、、って、、、?」
「ドリンクバーや、すぐ帰ってきよるから手短に言うけど、答えるな。顔は笑っとけ」
ちょけたFFは居ない。
今横に居るのは、数々の戦闘を潜り抜けた術師。
「この仕事終わったら、アイツから離れるで。なんやったら途中でも『ヤバい』ってどっちかが感じたら、一緒に飛ぶで」
これにはモコも、ドびっくり。
自分よりも思慮深く、ユキオンナの事を見ていた。
しかも、それを全く表に見せずにやっていた。
――って事は、今までスグにバレる嘘をついてヘラヘラしていたのは、こういう時のためのフェイク?
「せやないと、死ぬで」
その言葉に、『確かに』と納得してしまった。
「何の話し?」
コーヒーカップを手にしたユキオンナが、ドリンクバーから帰って来た。
席に着くとテーブルの上に上半身を投げ出すようにして、モコの顔を覗き込んでいた。
「エラい真剣な顔やん?」
「いやな、この仕事で大金入ったらどこ行きたい? って聞いたら、モコがめっちゃ悩みだしよってん。笑うやろ?」
そう言って、ガハハハッとバカ笑い。
――すげ。まったく動揺無し、、、
バカ笑いのFFに感動してしまった。
「ふ~ん。FFはどっか行きたいとこあんの?」
「そんなん決まってるやん」
「どこ?」
「ソープランド」
「夢の国のテンションでよう言うなぁw」
「男にとって、夢の国やからな」
「ほんで、モコはどっか思いついたん?」
聞かれた。
責められてる様にも聞こえた。
――顔に出すな、態度に出すな、波動に出すな!
「いやぁ、いざ真剣に考えると、案外思いつかんモンやな、、、」
「ふ~~ん」
「おユキはどっか行きたい場所ある?」
「行きたい場所か、そやな、、、ホンマや、意外とパッと思いつかんもんやな」
笑い掛けられた。
純粋無垢な、美少女の笑顔。
――笑い返さないと、、、!!
「しょーもないガールズトークはええから、さっきの話しの続きや」
FFのツッコミに、視線が外れた。
――助かった、、、
「何やったっけ?」
カワイイとぼけ顔をFFに向ける。
シカメっ面&呆れ顔を、真正面からユキオンナにぶつけてた。
――サンキューやわ。FF
「どうやってそんな媚薬を手に入れたんやって話しや」
ああ~と小さく頷きながら、両手で持ったカップを口元へ運ぶ。
その仕草、カワイイ。
「モノアイや」
「?!」
これには2人とも驚いた。
「お前、モノアイとモメてへんかったか?」
カップをテーブルに置きながら、縁に付いたリップを右手の親指で拭い取る。
「億の仕事やん。昔の因縁は置いといて、、、」
「嘘やろ? お前もモノアイも、よ~うそんなん横に置いとけんのぉ」
「オトナやからな」
――何やコイツら?!
モコは、ハッキリと嫌悪感を抱いた。
嫌悪感を抱いたコイツらってのは、もちろんユキオンナとモノアイ。
聞いてた話しでは、互いに互いの仲間を殺されてるハズだ。
なのに、、、。
今は休戦。
しかも、協力関係。
「で、でも、、、」
口ごもるモコ。
こんな顔をすれば、誰でも言いたい事は解る。
、、、が、ユキオンナに一切の遺恨は無い。
何故なら、、、。
「死んだヤツはもう、しゃーないやん?」
アイドルのインタビューのように、笑顔で言っていた。
マジで、言ってる。
心底言ってる。
この思考を、モコは理解できない。
「おユキはドライやな~。俺ちょっと怖いわw」
「え~、そんなん言いなや、あたしら仲間やんww」
――うちが殺された時も、しゃーないって言うん?
モコは、冷静に自分を見た。
「な~~、モコも仲間やんな~」
――仲間って、、、何?
そして、ユキオンナを見た。
無邪気に嗤う、少女の貌。
その瞬間、モコは何故かユキオンナを、急に理解出来た。
――あ、この女にとって、うちらは道具なんや、、、
信じられないくらい、カワイイ笑顔だ。




