策束静巡 壱 その4
FFが、自分の顔を凝視しているのに気付いた。
「どうしてん? モコ、調子悪いんか?」
「あ、いや、、、何でもない」
まさかこの間の事を思い出して、未だに自分の取ってる行動がこれで良えんかどうか迷ってる、、、なんて言えない。
「そうか。俺はまた生理でも始まったんかいな思てな」
――ちっ、、、
「それ、1ミリもオモんない」
「ちゃうがな、心配しとるっちゅうこっちゃ」
反対側に顔を叛けるモコに、これでも気を使ってるんだと言い訳して謝る。
傍から見てると、これはイチャ付いてる様に見えるのか気になる。
理由は、、、ここ最近みょ~~に感じるのだが、FFとこういったふざけ合いをすると、決まっておユキの視線が冷たくなる。
これは気の所為ではない。、、、と思う。
――おユキって、FFがタイプなん?
なんにせよ、空気が悪くなるのはゴメンだ。
これから仕事をするのに、その間だけでもギクシャクはしたくない。
気を使うモコとは違うFFは、冷たくユキオンナに言葉を投げつける。
「ほんで続きや。プロダクションが、どうしてん?」
またパフェを口に運ぶ。
「だいたい芸能プロダクションに入ってる人間って、アホやん?」
「えげつない偏見やな」
「そんなアホが集まるプロダクションって、結局アホが社長やん?」
「偏見止まらんなぁ」
「しゃあからな、まず、アホの社長を捕まえてん」
ユキオンナが言った、『捕まえた』には色んな意味が含まれる。
どの、『捕まえた』にせよ、ユキオンナからはもう逃げられないだろう。
「社長にな、お金あげてん。出資したるわ言うて。やっぱアホやな。急にペコペコし出したで」
「必要経費って言うて持っていってたんて、それか?」
モコから、ユキオンナが多額のお金を欲しがってると相談されたのを思い出したFF。
その時は取り敢えず、取り分の三千万円までは出してやれとモコに言っていた。
「あたしのこと、どっかの社長令嬢とでも思ってるみたいや」
うすら笑いのユキオンナ。
「オマエみたいなブサイクが、令嬢に見えたんかいな」
ふふん。と笑って、ユキオンナがパフェを口に運んだ。
――あ、あれ? FFにもその眼すんの?
軽蔑だろうか、嫉妬だろうか、、、。
そんな視線を最近よく感じるようになった。
ユキオンナが、自分に向けて来る視線。
それを今、FFにも向けてた。
感情を上手く読み取れない。
ただ、アブナイってのは、何となく感じる。
気になり出したら、ちょっとした動きも意味があるんじゃないかと深読みしてしまう。
隣のFFは、全く気にしてない。
、、、と、思う。
そんなに頭の良いタイプじゃないし。
ハッタリは上手いが、嘘は下手だ。
なので、フェイクってるのは無い、、、
、、、と、思うモコ。
――FFみたいに、気にすること無いんかな?
冷たいと感じるユキオンナの視線は、単に性格の悪さがちょいちょい出てるだけなのかと思った。
それはどちらかと言えばFFが防御型の使い手で、近くに居るEG使いの波動にはかなり敏感な性質なのに、そのFFの波動がまったく乱れて無いから。
そう思い、考えても、モコはもひとつ納得できない。
何だろうと自問自答する。
――納得できないのは、何でだろう?
こんな疑問が浮かぶのは、モコが自分自身の心情に気付いていないからだ。
この、ユキオンナと言うEG使いが、、、そうじゃない。
この藤田由起が、、、怖い。
モコの根源が、藤田由起という個の存在を拒否し始めている。
生理的に無理、、、ってやつだ。
それに気付いたとしても、まだ離れられない。
この仕事が終わるまでは、、、。
「ほんで次はな、、、」
話し始めたユキオンナの声に耳を傾けながら、気付かれないように機微を読み取る事に集中する。
「、、、気に入った女をヤれるようにしたった」
「ヤれるようにって、セックスをって意味か?」
「他に何かある?」
ほほ~という顔をFFがした。
下ネタ大好き。
興味津々。
「どうやって?」
「媚薬を使った」
「媚薬?」
聞いたのは、モコ。
「うん」
今度はFFが聞く。
「なにかい、それは惚れ薬みたいなヤツの事か?」
「そんな可愛いモンちゃうねん。強烈な催淫剤やで」
「強烈って、どんくらい強烈やねん」
「聞いたら、引くで」
もったいぶるユキオンナ。
俄然、興味をそそられるFF。
と、まさかのモコ。
もぞもぞと、ポケットから眼薬の容器みたいな物を出した。
ユキオンナはそれをテーブルの上に出すと、二人の間に置く。
「コーヒーカップくらいやったら、一滴で充分。入れ過ぎたら、脳が溶けてまうらしいわ」
「え、、、?」
「しゃーからどれくらい効くねんって?!」
FFを見ながら、唇に付いたクリームを舌で舐め上げる。
「全身クリトリスになんねんて」
「く、、、???」
単語を理解するのに、タイムラグのモコ。
理解して、赤くなる。
――ファミレスで言う言葉ちゃうがな、、、
「たまらんの~~」
眉毛を二回上げて笑うFF。
下品極まりない。
「FFは男やから、全身亀頭って感じかな」
「おいおい何かい、ほんだら俺は頭のてっぺんからガマン汁出すんか?」
ガハハハッと笑う。
さすがに恥ずかしい。
ユキオンナを見たら、一緒に笑ってる。
――いや~、これ笑う感覚無いわ、、、
笑いたくなかったので、眼の前に置かれた容器を手に取ってみた。




