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カ・ル・マ! ~水の中のグラジオラス~  作者: 后 陸
水の中のグラジオラス 三の章
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策束静巡 壱 その2

 結界の中、外と、EG使いの間で、モコは顔が()く。

 浅く、広く。


 だからついこの間イザコザがあった天王寺と通天閣の両方にも、モコは(つな)がりがあった。

 もちろん、()()()桃谷の2人にも連絡を取る間柄(あいだがら)

 そんなモコだから、『仕事を受けてくれるEG使い』を探してるってインド人が居れば、誰かが連絡先を教えたのだろうと考えるのに(むずか)しくは無い。


 モコにとっても、そうやって連絡を取って来る(やから)はアホほど居たので驚きはしなかったが、内容が内容、、、。

 幸か不幸か、その時、取り掛かった別の仕事で組んで行動していたのが、この2人だった。


 FFと、ユキオンナ。


 インド人から始めて連絡が来た時も、2人と一緒の時だった。


 「何の電話なん?」


 ユキオンナが興味を示すと、つられてFFもモコの相手が気になりだした。


 「モコ、眉間の(しわ)(ふこ)ぅ~なったで。それ、嫌なヤツか?」


 FFに(なん)て答えようかと迷ってるうちに、ユキオンナに言われた。


 「スピーカーに」


 その時もファミレスだったか、テーブルの向いに座るユキオンナの提案を、横に座っていたFFがモコが耳に当てていたスマホをヒョイ、と取ってテーブルに置いた。


 「え?」


 モコが戸惑う間もなく、FFがスピーカーを押す。


 「、、、一度会って話しをさせて貰えますか?」


 そこだけ聞こえた。

 間髪入れず、FF答える。


 「会おか」

 「え?」


 驚いたのは、モコ。

 通話の相手もか、、、。

 それを見て、ニヤ付くユキオンナ。


 「他に、誰か、、、?」


 スマホの向こうで、(いぶか)()な声。


 「モコと一緒に動いとるモンや。会おか。場所と時間言え」

 「ちょっとアンタ?!」


 (あせ)るモコに、ジェスチャーで『任せとけ』と自分の胸を叩いて見せるFF。

 その2時間後、天王寺駅の近く、結界の()()にあるカラオケボックスでモコ、FF、ユキオンナの3人と、インド人の4人が落ち合った。


 多分もう何人かのEG使いに会って、断られてきたんだろうと思った。

 初対面で、すでに(あせ)りと(あきら)めが混じっていた印象。


 カラオケボックスの、パーティルーム。

 テーブルを挟んだソファの片側に交渉役1人が座り、2人はそのサイドに立つ。

 残りの1人は、ドアの前。

 座っている交渉役以外の3人は3人とも、すでに臨戦態勢。


 対して、モコはソファの左に座り、右にはユキオンナ。

 真ん中に、足を組んで両腕をソファの背に掛けたポーズで(くわ)煙草(タバコ)のFFが居た。


 「横の兄ちゃんと、あの兄ちゃんは話しに参加せえへんのか?」


 FFの問いに、交渉役のインド人は笑顔で答える。


 「彼らは日本語が解りません。座っても狭くなるだけです」

 「なははは。せやな。日本語は喋れんでも、()()()()()()()()()?」

 「?!」


 室内の波動が濃くなった。


 「()()()()してたら、こっちもやんで」


 これは、警告。

 FFは、立っている3人が展開する“神効術(しんこうじゅつ)”が気に入らない。


 ちなみに、、、

 FFは、インド人が使う神効術を知らない。

 神効術とは、神の力を再現するインド特有の術式。

 ()()()()をその身体に受け入れ、神の力を使()()()()()()


 日本風に言うのなら、“神通力”ってのがニュアンス的に近い。


 波長から見ると、どうやらアスラ系神効術の使い手。

 かなりメジャーな神効術。


 もう一度言うが、FFは神効術を知らない。

 知らないが、解る。


 ()()()()()()()


 バレないようにインドの術式を展開したみたいだが、この狭い空間を術で満たせば違和感に気付かない方がおかしい。

 そんな術師はスグ死ぬ。

 FFも、EG波を畝らせる。


 驚く3人。

 交渉役の男が、異変に気付く。

 波動や“氣”は解らないが、雰囲気が変わった位の事は交渉役の男にも解る。


 違和感。


 それを感じ、仲間を見る。

 両サイドに立つ、そしてドアの前に立つ仲間の緊張感が増したことに、普通でない事が起きていると察する。


 動揺。


 神効術の使い手である3人のインド人は、互いに視線を交わして現状を把握しようと必死だ。

 自分達が考えているより、波動が()()だ。


 日本のEG使いは、レベルが高いのか?


 畝りの()は、ソファにふんぞり返る男、FFからだ。

 自分達が展開した神効術に対抗して、EG波を展開している。

 感覚で言うなら、自分たちの出した神効術を鷲掴(わしづか)みにして、“上書き”をしている。    


 しかも、速い。


 FFは、見た目よりも理論派か?


 よく見ると、FFの顔が、ニヤ付きながら自分で驚いてるのが解かる。

 エラい今日は調子()えなぁ、くらいの感覚。

 横に座ってるモコも、あまりにもFFの波動が()()()()()ので、『どしたん?』って顔を向けていた。


 室内の7人。

 実は、誰も今の状況を正確に把握していなかった。


 何が起こっているのか?

 この顔合わせ、依頼者側であるインドの使い手たちが余計な事をしてしまっている。


 日本のEG使いを警戒した術師の3人は、用心のために神効術を室内に展開した。

 これは防御も()ねるので、EG使い同士でもこのシチュエーションは“あるある”だし、術師同士なら普通の行動と言える。


 問題は、展開した術式の種類。


 土地柄なのか信仰的要素なのか、インドの使い手は日本的に言うと風属性が多い。

 EG使いで言うところの、火属性の使い手がゴロゴロ居る感覚に似ている。


 先程述べたように、展開されているのは神効術の代表格と言えるアスラ系の神通力。

 そのなかでも一番有名で、一番多く使われているのがインドラの術式。

 これを四大術式に当てはめれば、風属性の雷系の術、、、になる。


 雷系の術式は、文字通り電気ものに反応しやすい。

 ここはカラオケボックスの部屋。

 12人入れるパーティルームと言えど、狭い空間に違いない。


 雷系の波動が、通電(つうでん)する機械に干渉(かんしょう)し始めた。

 インドラの術式と通電する電気が、いつハウリングを起こしてもおかしくない状態。


 なのに、術式を解かない。

 “減算”しない。

 この部屋で、そんなに術の構築(こうちく)()らない。


 これは霊的エネルギーの、興和(こうわ)状態。

 やり過ぎ。

 インドの術師は、3人ともが経験値不足を露呈(ろてい)する形になっていた。



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