表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カ・ル・マ! ~水の中のグラジオラス~  作者: 后 陸
水の中のグラジオラス 三の章
37/49

策束静巡 壱 その1

 天六(てんろく)のファミレスに、アイドル級のグッドルッキングガールが入って来た。


 ピンクのもこもこワンピが、前を開けた白いダッフルコート下に見えるだけで店内の男たちは喜んだ。


 魅惑。


 いちど視界に入れると、もう眼が離せない。

 言葉通り、その可愛さに釘付けになる。

 誰もが彼女の(とりこ)になる。


 、、、あくまで、見た目。

 内面にあるヘドロのように()(かた)まった艶陰(えんいん)な悪意の(かたまり)を、見た目の可愛さで見事に(おおい)(かく)している。


 完璧に、カワイイ。

 魅惑のオーラ。


 ただちょっと気が緩むと、そこから内面のヘドロが流れ出し、拷問(ごうもん)好きのドSが顔を見せ始める。


 彼女は加虐性欲者、藤田由起。

 HN(ハンドルネーム)は、ユキオンナ。


 その彼女に、奥のテーブルから手を振る男女がいた。

 FFとモコ。


 「お~~い、こっちこっち!」


 周囲の目も気にせず手を振る姿を見ると、どうやら事故で痛めた身体は全快に近い状態まで回復しているようだ。

 そんなチンピラファッションのFFに、満面の笑みを浮かべながらユキオンナがテーブルへ向かう。

 ファミレス内の男性陣は、軒並みガックシとほほ状態。


 呼ばれた時にはFFとモコは向かい合って座っていたのに、ユキオンナがテーブルへ着く前にモコがFFの横に座り直す。


 ――またや、、、


 (にら)みそうになる眼を、笑顔のままキープ。

 2人の前に、(よど)みなく座った。

 いつもの構図。

 3人で居る時は、決まってこの構図。


 ――いちいち、、、。変わんねんやったら初めっからそこ座っとけよ


 モコの何気(なにげ)無い行動が、何故(なぜ)(しゃく)(さわ)るようになってきたのは、微塵(みじん)も見せない。


 ――同じ人間と長い時間()るんは、やっぱ()う無いな


 この仕事が終わったら、FFとモコとはちょっと離れようとユキオンナは思った。

 一緒に居る時間が長くなると、その相手の顔が(ゆが)むのを想像してしまう。


 どんな顔で泣くのか、苦しむのか、そして、、、どんな顔で命乞(いのちご)いをするのか、、、。

 その時の表情を想像するだけで、興奮する。

 (ほほ)が上気し、()れてくる。


 ――ヤバい。今、()()()()()から、、、ヤバい、、、


 と、考えてても、表には出さない。

 ユキオンナのカワイイは、完璧。

 FFも、いつも通りの感じで話し掛けていた。


 「なんや神戸に行ってたって聞いたけど、作戦か?」


 モコから聞いた事だ。

 自分が動けないうちから、ユキオンナが結構色々と動いていたらしい。

 暴れるだけのEG使いと思っていたら、以外にも段取りを組めるんだとFFはちょっと感心していた。


 「高野山に()る坊主ん中に使えそうなんが一人()ってな、その親と繋がり作ったんや」

 「ふ~ん、使えそうなヤツって、(なん)かさすんか?」


 タブレットで、パフェを注文。

 この寒いのに。

 注文を終えると、FFの質問に答えるユキオンナ。


 「密秘を、ソイツに盗ます」


 コーヒーを飲む手が止まるFF。

 ユキオンナを見た。

 笑ってる。

 カップを戻す。


 「出来んの?」


 質問は、モコ。

 ユキオンナが、ゆっくりとモコに視線を合わせた。


 「そのためにわざわざ神戸まで行ってケツ(たた)いて来てんで。やって(もら)わな(こま)るわ」


 ダッフルコートを横に置きながら、ユキオンナの口調が荒くなる。

 声が聞こえない店内の男たちには、可憐な少女がコートを横に置く愛らしい仕草に見えていた。


 「シロートが、、、出来んのんか?」


 これはFF。

 当然の疑問だ。


 「パフェ遅いなぁ。、、、ってか、正直どっちでもええねん。ホンマに取って来てくれたらラッキーぐらいに(おも)て。アカンかったら、ソイツ()()()犯人になって貰うから」


 それを聞いて、FFは納得した。


 「あぁ、失敗した時の保険ね」

 「うん」


 そう返事する笑顔が、カワイイ。

 が、同時に疑問も沸く。


 「相手、高野山の坊主やろ? そう簡単に説得なんか出来そうに思えんのやけど、、、」


 FFが聞いて来た。

 モコも、続けて聞いて来る。


 「なぁなぁ、さっき言うてた親と繋がったって、どうやったん?」

 「それな、、、」


 パフェが来た。

 ロボット給仕が不愛想に愛想の良い言葉で早く取れと促す。


 「FF、取ってくれへんの?」

 「甘えんな。自分で取れや」


 ――そういうFF、好きやわ~


 ユキオンナがFFと仕事を一緒にしようと思ったのは、この理由が大きい。

 FFは自分に、全く興味が無い。

 今まで知り合った男の中で、()()だ。

 FFだけが、ただ一人、ユキオンナを性の対象として見ていない。


 自分で言うのもなんだが、驚いた。

 歩くたびに声を掛けられ、誰もが自分とヤりたがってると感じてた。

 下半身を服で隠しても、脳ミソが勃起してる。

 男とは、そういうモノなんだと思ってた。


 FFも初めは仲間だから気を使ってそういう風に見せないだけかと思っていたが、マジでタイプじゃ無いらしい。

 確かめた事もあった。


 ちょっと“誘惑”してみた。

 今まで、失敗したことが無い。

 必ず落としてきた。


 口を少し開け、上気させた表情で眼を(うる)ませる。

 その顔のまま、甘えて願い事をする。

 これをすれば、男の首は縦にしか動かない。

 ところがFFは、、、。


 「オマエみたいなんがメスの顔すな! キモいねん!!」


 バッサリやられた。

 思わず声に出して、『え?』と言いそうになったのを覚えている。

 (たま)らない。

 全く自分に興味が湧かないなんて、堪らない。


 萌える。


 興味の無い男をこっちに向かせ、気を引き、惚れさせる。

 惚れさせたら、たっぷり時間をかけて、この細く白い指先で、()()

 ちょっとづつ、ちょっとづつ、死なないように、死なないように、生命(いのち)を、()()


 これは、萌える。


 (おのれ)生命(いのち)をこの指先で摘まんでやったら、FFはどんな顔で自分を見るのか?


 命乞(いのちご)いをする?

 それとも黙って、死んでいく?

 狂おしく(にら)むくらいはしてくれるだろうか、、、。


 それを想像するだけで、全身震える。

 全身鳥肌。

 それを誤魔化すように、冷たいパフェを口に入れた。


 ――()()()()生命(いのち)()()までは、仲間、仲間、仲間、、、美味(おい)


 舌で上あごにアイスを押し付け、口の中に広がるように、ねっとりと溶かした。


 ――アンタらも、、、


 純粋で狂気な眼差しが、FFとモコを見ていた。

 そのFFの、眉毛が一瞬引き()る。


 ――魅惑?!


 ナチュラルに出るユキオンナの波動に反応。

 ペースを取り戻すため、自分から話しを振る。


 「おいおい、そんなん食ってんと、どうやったか()えや」


 モコも、どうやったかは気になるところだ。

 ユキオンナ、笑顔になる。

 FFの横柄(おうへい)な態度が、知らずユキオンナを興奮させる。


 「依頼主のインド人が、あたしらより先に買収した坊主が高野山に()るやろ」

 「あぁ、色々調べて情報くれるヤツな」


 「ソイツがまぁ色々と調べた情報で、学生坊主ん中に親が芸能プロダクションしてるヤツが()ってん」

 「芸能プロダクション? お笑いの?」

 「ちゃうわ!」


 モコの顔が、少し不安に曇る。

 ユキオンナが言った、依頼主のインド人。

 初めにコンタクトがあったのは、モコ、にだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ