偽風道落 壱 その3
蛇骨会の沢部と、そんな話しがあった事をユキオンナに伝えた。
「それって、乗っ取られたな、、、」
ポツリと言った。
モコも、同意する。
「多分な。それ以外、無いやろ」
視線を再びFFに戻したユキオンナ。
「今天王寺に居るヤツ、全員殺そっか、、、」
「?!」
ギョッとした。
これだけ驚くのは、マジでヤるかも知れないと思ったから、、、。
正確に言うと、全員殺そうが反対に殺されようがそんな事はどうでもよく、この女は、そういう行動に出る事に快感を憶えるタイプだと、モコの中で確信めいていたからだ。
――道連れにされんのはゴメンや、、、
サイラーなんかのために、死にたくない。
この女の私闘に、巻き込まれたくない。
――FFなら、、、どう言う?
「今は、止めといた方が良えんちゃうかな」
FFを頭に浮かべたら、自然にそんな言葉が口から出ていた。
そう言ったモコに、思ってもみない答えだと云うような表情でユキオンナが見返してきた。
「何で~な?」
普段見せない、ドロドロとした内面のヘドロ状の念が湧き出る。
加虐性欲者の、獲物を欲する眼、、、。
――ビビるな!
ビビる心理も、“魅惑”の好物、、、。
「今、天王寺に行くってのんは、ここで苦しんでるFFを置いて行くって事や。それはつまり、FFを見殺しにするって事ちゃうの?」
正論ぽい言葉を吐きながら、モコは心の中で『死ぬなら一人で死んでくれ』と願う。
全否定の感情を隠しながらユキオンナを見ると、ポツリと独り言のように話し始めた。
「あたしなぁ、あの口だけサイラー、、、結構好きやってん。虚勢を張る人間ってなぁ、小っちゃい針でチョンって刺すだけで、ボロボロ崩れるやん。崩れながらまだ何か言い訳言って来るやろ? それがオモロかってんけどな、、、」
暴力で権力を誇示していたサイラーは、ドM。
それをいち早く気付いたユキオンナは、ドS。
二人は、たま~~に“秘密の関係”になっていた。
どうやら口調から、天王寺に行くのは考え直してくれてるみたいだが、話しがこれまたヤバい方向へ行きそうなので、モコは慌てて次の話題を考える。
考える、、、。
――何か無かったっけ?
思い出す。
「あ、あぁ~、そんな天王寺より、今は桃谷の方が大変らしいで」
ツインピンクスの話題を振ってみた。
「何かあったん?」
興味を示したユキオンナに、モコは見えない角度でガッツポーズ。
「サイラーがおかしなったって言う通天閣との戦争で、桃谷のツインピンクスがトバッチリ喰うてどっか飛んだらしいで」
「え?」
この話題は、ユキオンナにとって、なかなかにビッグトピックだったみたいだ。
「あの二人が、、、飛んだ? マジで?」
「マジらしいわ、、、」
「何で?」
「いやそれが、飛んだんは事実やけど、何でそうなったんかは解らん。肝心の目撃者が居らへんねん」
しばし眉を顰めて考える。
ユキオンナは想像する。
あの二人を相手に、そんな事が出来るEG使いはそうは居ない。
それは自分も、一度対戦してみて身に染みている。
特に、ひ弱さをひけらかしている女の方。
そっちが曲者。
ユキオンナは思い出し、同時に感じた恐怖を脳裏に浮かべてしまう。
――アイツが波動を上げて、EG波を畝らせて能力を展開し始めた瞬間にヤバいって、、、
認めたくないが、身震いする。
京弁天ほどでは無かったが、何か強烈なモノを感じた。
感じたら身体が反応して、あの時、一目散に逃げた。
イキッた方の女との戦闘を、放り出して逃げた。
思い出すだけで、、、
――ムカつく!!
なので正直、どんな能力なのかは解らないが、ユキオンナの感覚が危険と判断した。
味わった事の無い、EG波の畝り。
それに、怯えた。
ユキオンナはまだ知らないが、それはツインピンクスぱるるが放つ、インダイレクターの波動。
これまで能力の力勝負みたいに、ダイレクターとの戦闘ばかりを体験していたユキオンナには、それがとても異質なものとして感じた。
それくらい、桃谷のツインピンクスは強かったハズ。
それが、トバッチリ程度で何処かに飛ぶなんて思えなかった。
何かあったハズだ。
ツインピンクスを飛ばすほどの何か、、、。
考えられるのは、、、
――また、デンタイか、、、?
「状況からみると、やっぱデンタイの仕業かな、、、」
何気に言ったモコの『デンタイ』って単語が、頭の中で考えていたモノと一致してしまい、ユキオンナの中で『デンタイがツインピンクスを飛ばした』ってのが確定になった。
――やっぱり、主犯はJK、、、か?
「やっぱデンタイのJKって、相当強いねんやろな。なんせNGも使えるEG使いやねんから、、、」
これもまた、勝手な想像に添うよう、モコの口から頭に浮かべてた名前が出たので、二人をヤったのはデンタイのJKに確定となった。
ちなみに、、、
モコが言った『なんせNGも使えるEG使いやねんから』は逆で、正しくはEGも使えるNG使い。
モコの代りに、お詫びして訂正。
「しゃーから今、桃谷は“空き”状態やねん。なんやったらスグ獲れんで」
モコの顔を見て、ユキオンナが可愛く笑った。
「要らんわ。いっこンとこでジッとしてンのん、何か合わんわ」
それを聞いて、モコが鼻から大きく溜息。
「やっぱそうか。おユキやったら桃谷くらい、簡単に獲れんのになぁ~」
「前に言うたやん、、、」
ユキオンナは立ち上がり、テーブルの上にあるペットボトルを取りに行った。
行って、キャップを開けてそのカワイイ唇に含む。
飲む水が、少し口から零れた。
顎に滴る。
拭こうともせずに、モコを見る。
「あたしは、“浮遊層”やって、、、」
アイドル級の笑顔から覗くパッチリ二重の瞳から、加虐性欲者の暗い光がモコを見つめていた。




