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【注目御礼】近世無用! 娘と父とあと一人 近代への永い道  作者: 浅間 数馬


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97. 潜入 天正12年3月(1584年)

 セヲリツヒメ様からアドバイスを受けた翌日、早速大学校へ。久しぶりに長安を伴った。

 まだ移転していない国立研究所の歴史と文学の研究員を招集した。ついでに同分野の大学院研究生、教授らも同席させて方針を共有する。


「(前世も含めて人生で初めての)ご神託を受けた。朝廷はかつて、神々に対して無礼な行いをしたとのことである。糾弾するので、その証拠を集めて欲しい。

 大学院生は純粋に学問として調査、記録、考察せよ。

 研究所研究員は国策として、朝廷を糾弾し、今後の交渉するための資料として吟味し、不足する情報の追加収集、こちらに不利になる情報の一時隠蔽などを行ってくれ。隠蔽は一時的なものだ。朝廷との交渉から3年後に公開せよ。決して処分などするなよ。

 大学院生も隠蔽部分の閲覧は公開されるまで我慢してくれ」


 重大な研究、関わる相手は朝廷ということで皆が緊張している。

 政治って言うものはある程度汚いものだ。だから一時隠蔽もやる。だが、記録抹消とか、証拠隠滅とか、将来の学術研究に影響が出るようなことはさせてはダメだ。あくまでも一時でなければならない。


「して、所長。何を研究するので?」

「これはしたり。まだ言っていなかったか」


 今気がついた。私、いつになく興奮しているな。

 一同が笑っているよ。お陰でちょっとほぐれた。


「記紀を存じているな? 古事記と日本書紀である。

 古事記は天武天皇の命で編纂されたとされている。日本書紀は曖昧だが、同時期に編纂された正史とされているので、天武天皇が関わっていると考えられる」


 ここまでは一同理解しているな。


「この天武天皇が怪しい」

「「「え!?」」」


 一同ビックリ。


「天武天皇は壬申の乱によって自ら即位している。その正当性が疑わしい」

「「「あ!」」」


「戦の勝者が己の都合の良いように歴史書を書く。古今東西常套手段じゃ。平家物語も太平記も、唐国の史書も多かれ少なかれそのような記述がある。西洋でも然りじゃ」

「「「なるほど・・・」」」


 記紀が偽書だとか、そう言う具体的な話しは姫様はしていない。この辺りは私の独断だ。好きにやって良いと言われているのだから、これで良いのだ。


「その記紀であるが、前半は創作と言っても良い。元になった言い伝えなどはあるが、奴らの都合に合わせて作り直されている。諸君にはそれを暴いて欲しい」


 前世の歴史学者は記紀を正として、対立する古文書を偽書と決めつけていた。恐らく朝廷が作った固定観念がいつまでも続いていたのだろう。だからいつまで経っても疑念が晴れない。

 だが、この世界では逆だ。真実を暴いてやる!


「して、所長。如何にして暴くのでございましょう?」

「うん。四国の阿波を調べよとのご神託じゃ」

「「「阿波?」」」


「阿波はかつてヤマトという地名であったそうじゃ。つまり、四国で起きたことを畿内の大和で起きたかのように書き換えたのじゃ」

「「「なんと!!!」」」


「地名を調べよ。阿波と大和に同名の土地がたくさんある。土地の位置関係や距離などを考慮すれば記紀に記された事柄が、本当のところは四国と畿内のどちらで起きていたのか分かるであろう」

「「「・・・」」」


「恐らく、壬申の乱も近江や山城ではなく阿波で起きている。地名と位置関係を確かめれば近江では話しに無理があることが分かるだろう。

 つまり、大和に移ったのは壬申の乱以降じゃ。それ以前のことは阿波で起きていると仮定して証明せよ」

「「「んんん・・・」」」


 まあ、事例が出てこないと素直には納得できないよな。


「それからな。神代の話しはその後の話しを装飾したものが多いはずじゃ。例えば山幸海幸の海幸は大海人皇子、即ち天武天皇のことであろう。話が前後するので惑わされないようにな」

「「「はぁ・・・」」」


 ますます混乱しちゃったな。


「それとな、古い神社仏閣を調べよ。古文書があるはずじゃ。その写本をとれ。

 阿波風土記が最も重要じゃ。原本は失われているかも知れんが、部分的な写本はあるはずじゃ。探せ。

 また、古文書の中にはカナや漢字ではない異なる文字のものがある。それは漢字が伝来する前に書かれたものじゃ。写本は難しい故、写真を撮る。写真とは瞬く間に生き写しの絵図を作るもので、今開発中じゃ。数年内にできる見込みであるから、写真に撮りたい書物の所在と頁数を明らかにせよ」

「「「御意」」」


 よし。皆理解したな。ここらかが問題だ。


「なお、四国は敵地も同様じゃ。東日本のように学者が自由に動けない。土地の領主が邪魔するであろう。故に四国にいる山の民(情報本部エージェント)から支援を得る。研究員は商人に扮して潜入せよ。学生はこちらで集まった資料を整理せよ。

 そして、朝廷に消された歴史に関係する者を探せ。復権してやると約束すれば協力してもらえるであろう」

「「「・・・」」」


 皆文官だからな。潜入捜査なんてやりたくないよね。


「状況は月次で報告書にまとめて札幌に送ってくれ。では頼んだぞ!」


 強引に締める。


壬申の乱:672年。天智天皇の太子・大友皇子(明治になってから弘文天皇の称号を追号)に対し、天智天皇の弟・大海人皇子(後の天武天皇)が起こした皇位継承紛争。琵琶湖を取り囲む各地で戦っていますが、道が整備されていない時代にそんなに短期間に軍勢が長距離移動できるのか、という疑問から、実際には阿波で起きたという説が小説「ヒミコの暗号」(伊勢谷武著)にあります。くうはそれを読んでいます。


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