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天下統一だけじゃない! 近代への永い道 ~父子で開拓! 平和で希望に満ちた明るい未来~  作者: 浅間 数馬


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72. 奪還 天正6年5月(1578年)

 その後も新聞発行は続いた。主要メンバーが捕縛されていても主筆の私と学校卒業生達がいくらでも原稿を書く。印刷所も複数ある。府中の印刷所にも地方から職人がやってきて印刷してくれる。

 連合もその後の妨害をしなくなった。


 新聞で繰り返し訴えたことは、『とにかく勉強しろ!』だ。バカには何も任せられん。血筋だの家柄だの、何の保証にもならん。ということだ。


 新聞のお陰で評議員達の考えもだいぶ変わった。中道派は2つに割れて革新派に流れる人が増えた。今や守旧派が2割、革新派が5割、中道というか日和見が3割だ。

 今選挙すれば簡単に政権を奪還できる。だが、不信任決議という制度がない。あと4年、小田氏治を上手いこと使っていかなければならない。


 そんなわけで、天正6年の連合総会は大荒れだったそうだ。


 連合のやり方が良くないとか、税率を下げろとか、分割した領地を連合直轄に返還しろとか、様々な突き上げがあったそうだ。

 父上は憲景殿と一緒に黙って、内心ニヤニヤしながら総会を眺めていたそうだ。


「新聞社に捕縛が入ったとき、民衆がたくさん居たよな。あれ、長安?」

「はい。私が配下を使って集めました。やっぱりデモクラシーですからね。

 でも、民も関心が高かったようですよ。ちょっと声をかけただけでどんどん広まって、予想以上に人が集まりましたから」


 大事に至らなかったから良かったが、集まった民衆に対して権力が暴力を振るったという事件は古今東西あまたある。気をつけねばならんな。




 5月15日。連合に激震が走った。


 小田氏治出奔。


「何があった?」


 父上と2人で地下組織、かつての情報本部の事実上のトップである大蔵長安に尋ねた。


「薬が効いたようです」

「「薬?」」


「総長の枕元にネズミの死骸を置いてきました。呪詛の札と一緒に。3日ごとに半年ほど」

「「・・・」」


 父上と顔を見合わせる。互いに首を横に振る。『俺は指示していないぞ』ってな。


「長安・・・、独断はいかんぞ。相談ぐらいしてくれ」

「はい、そうですね。次から気をつけます」


 忍者部隊が勝手に動くようじゃ困るよな。

 あ、前世で長安の子供以下が徳川秀忠に族滅させられたが、まさかこれが原因か?


「で、氏治はどこに行ったんだ?」

「西に逃げました。毛利と文のやり取りをしていたことは確認済みです」


「毛利? 随分遠いな。何か縁があるのか?」

「氏治は12代将軍足利義晴の従兄弟なんだよ。だから義昭のところに行ったんじゃないかな」


 父上の見解。

 氏治から見て義昭は従兄弟の息子ってことか。知らんかった。『へぇボタン』いっぱい押したいな。


「ところで父上、総長はどうなります?」

「うん。出奔は想定していなかったが死亡と同じ扱いになるだろう。だとすると、間もなく公示で来月には選挙だ」


 急だな。準備できてるのか?


「父上、立候補されますか?」

「いや、また防衛奉行になりたい。くう、おまえ立候補しないか?」


「はぁ? まだ11歳ですよ。被選挙権無いでしょ。それに私は根っからのエンジニアです。政治家には向いていません。憲景殿は如何されました?」

「今回の件で『これからの時代の政治の難しさを痛感した』と言っていた。もう引退する気だ」


 そうか。まあまあのお歳だしな。

 反体制運動をしていたものの、こっちの体制を考えていなかったな。漠然と元に戻るものだと思っていた。私も甘いな。


「誰か別に人はいないのですか?」

「そうだな・・・ うん、心当たりがある。そっちは任せてくれ」




 3日後。父上に連れられて候補者のお宅にお邪魔した。成田長親なりたながちか殿。武田が攻めてきたときの上野防衛の副将だ。


「里見くうでございます。よしなに」

「前の顧問殿。よく存じております。こちらこそよろしくお願い申し上げます」


「そういう訳でくう、今回は長親殿を推薦してくれ」

「勿論でございます」

「某が当選いたしました暁には、くう殿には再び顧問になって頂きたいと存じます」


 その件はちょっと考えてたんだよな。


「いや、顧問が勝手なことをしていると、先々よくありません。ちょっと形を変えましょう」

「「どのように?」」


「諮問委員会というものを作ってください。その委員長に任命して頂きたい」

「ああ、なるほどね」

「諮問委員会?」


 令和の日本政府にもある仕組みだ。総理が『専門家の意見を聞いて・・・』と言うときは、諮問委員会に諮ることを言うのだ。

 政府としては諮問委員会の答申に従う必要はない。答申は公表されるので、従わなかったり、変更するときは、国民に対してそれなりの説明が必要だが。


 これを長親殿に説明した。


「で、何の諮問委員会にする?」


 諮問委員会は、必要なときに対象のテーマごと作られる。そこを父上が聞いてきた。


「そうですな。『基本方針等諮問委員会』で如何でしょう? 連合の組織体制や制度、運用方法などの基本方針はこうあるべき、ということを考えるのです」


「他の委員は誰にする?」


 そこだよな。


「調整しておきます。お任せください」


 メンバーは当選後に任命するので、それまでに委員候補者に説明して了承を得ておくことになった。


「それよりも選挙運動をよろしく頼みますぞ。中道派は皆こちらに関心を持っていると思いますが、彼らの心をしっかり掴んでください」

「心得申した」


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