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天下統一だけじゃない! 近代への永い道 ~父子で開拓! 平和で希望に満ちた明るい未来~  作者: 浅間 数馬


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16. はかる 元亀元年7月(1570年)

今回の話はSF好きの人は楽しめると思いますが、面倒くさいと思われる方は後書きだけお読みください。


 父上への手紙を書いている。この時代、文字は縦書きが当たり前。紙も横置きで上下に折って片側に書くという形式がある。

 だが相手は父上だ。紙を縦置きにして文字を横書きで書く。文字は前世の現代字、算用数字、楷書で書く。


 内容は単位系についての相談だ。工業を興すにも、政治をするにも単位は重要だ。この時代でも諸国では検地と升の統一とかやってるはずだ。重要単位について考えたので、父上に裁可を得るのだ。


 長さと重さの基本単位は何でも良いのだが、尺貫法はそのままでは使いたくない。なぜならば10進法ではないからだ。


 長さの最小単位が寸で、約3cm。厳密には違うが、どうせ地方や時代によって異なるので、ここでは大雑把に考えよう。

 次が尺。10寸で1尺だ。そして10尺で1じょう。ここまでは良い。


 ところが突然、けんという単位が登場する。6尺だ。せっかく丈があるのになぜか中途半端な間が出てくる。しかも別名でがあるから更に面倒だ。ま、多分、実用上便利なんだろうな。令和でも建築関連では使っていた気がする。


 そして60間、360尺で1町になり、36町で1里になる。

 実に面倒だ。暗算も難しいが、将来コンピュータ化するときにバグの元になる。データ構造も複雑で余計な計算時間がかかってしまう。


 小さい面積は方寸とか方尺という感じで尺がベースになっているが、土地のように広くなると坪とかたんが出てくる。この坪と反の間にうねがあるが、1畝が30坪なのだ。ああ、面倒。

 そして体積はごうしょうこくと単位が多くて面倒だ。


 さらに質量になると1貫が100両で、1両が10もんめだが、途中に16両で1きんというのが出てくる。どうしてもキレイに並べたくないんだな。

 ひょっとすると暗算が得意な奴が、暗算を苦手とする人たちをごまかすために作られているのかも知れん。よろしくないな。


 単位はすべて10進法で組み立てて、接頭語の組み合わせで表したい。前世で言うと単位はメートルとかグラムのことで、接頭語というのはキロとかミリのことだ。合わせてkmとかmgとかいう感じにしたい。

 そういう訳で、まったく新しい単位を作ろう。昭和でも尺貫法廃止の時に若干もめたからな。公式は新単位に限るが、非公式には尺貫法の使用を認めよう。学校で教えていれば世代交代とともに単位も自然に切り替わるのだ。


 接頭語だが、前世の国際標準のSI単位系では3桁毎なのだが、それはヨーロッパ語が3桁単位で数を表現するからだ。この世界では日本語に合わせて4桁ずつにしたい。万、億、兆をそのまま接頭語にしよう。小さい方は1桁ずつ分厘毛でいいだろう。当面はこの範囲で済むはずだ。必要になったら微とか塵を制定すれば良いだろう。


 で、単位だが。SI国際単位系の基本単位は7つある。時間の秒、長さのメートル、質量のキログラム、電流のアンペア、熱力学温度のケルビン、物質量のモル、光度のカンデラだ。

 このうち、モルとカンデラは後回しで良いだろう。モルなんて私も使ったことがないからな。


 ケルビンは絶対0℃ありきの単位だ。これは将来制定すれば良い。当面、温度は摂氏で良いな。

 単位はただの度だ。Cは要らない。Cは米国が使っている華氏(ファーレンハイト考案°F)ではなく、世界標準の摂氏(セルシウス考案℃)ですよという意味だ。

 この世界の日本ではセルシウスさんとは関係なく独自に考案するテイなので漢字の度だけでいい。--ちょっと画数が多いな。将来略記法を考えるかーー


 水が凍る温度を0度、沸騰する温度を100度に制定する。0とマイナス、1より小さい数の概念は数学で教えなければな。


 過去の経緯(?)から、長さの単位をじょうにしよう。錫杖の長さが由来ということにしておく。1m≒1杖≒3尺だ。1里はおよそ4000杖、10kmが1万杖だ。小さい方は1cmが1厘杖、1mmが1毛杖だな。


 そして面積は平方杖、体積は立方杖にする。かけ算と合わせるわけだ。

 私や父上も含めて全員初めて使うので、当面は戸惑うことになるが、こういうのは慣れだ。すぐに慣れる。


 1尺が大体30cmというのは覚えているが、重さはグラムともんめの換算比を知らない。宮内に頼んだら、これが1匁、これが1両、これが1貫とサンプルを渡されたのだが、私は幼児だから筋力がなくてグラムでいうとどのくらいの重さなのかさっぱり解らない。


 直感で、1匁の1/3を基本として、単位はしゅにした。何か良い単位がないか周囲の人に聞いたところ、国語審議会委員の学識のある僧--名前失念・・・というか最初から覚えてない--が教えてくれた。中国で使われていた匁より小さい重さの単位だそうだ。1銖が約1グラムだと良いのだが・・・


 で、長さと重さの基準は原器を作ることにしよう。経年変化によって精度が維持できないので、すべての原器が20世紀の終わりには廃止になったが、16世紀の現在ならこれで十分だろう。多分、狂ったことに気がつけない。

 問題は材質と形状だな。温度や衝撃に耐性がなければならない。これは職人達と相談しよう。


 SI基本単位の1つ、アンペアだが、これはこの後研究で決める。父上からは電話を作ってくれと言われているからとても重要なのだが、まだ先だ。その前にやることがいっぱいある。




 さて、残った基本単位。秒だ。


 時間に関係するものに暦がある。基本は太陽暦だ。太陰暦は面倒だし、朝廷が関わっているので政治的にも面倒だ。朝廷の政治とは切り離して客観的な尺度にしたい。


 時間は地球が自転する時間を1日、公転する時間を1年としよう。1年はおよそ365と1/4日だ。4年に1回閏年が来る。公転が自転の倍数になっていないから10進数ではないが、これはもう仕方が無いな。人間の力ではどうにもならない。


 ただ、1日の分け方は考えたい。なんで24時間なんだ? 10時間とか、昼夜10時間ずつで1日20時間にできないものだろうか? ほんと、時間の計算は面倒なんだよ。小学生の時も苦しんだが、ライブラリが普及する前の初期のコンピュータプログラムでも苦労した。楽にしたい。


 仮に1日を20時間としよう。南中の時刻を基準にして、そこから地球が半回転した夜中を0時として日付を変更しよう。そうすると、南中は逆算して午前10時、午後0時だ。

 そして、1時間は100分に、1分は100秒にしよう。計算が楽になる。と言うことは、1時間は1万秒だ。単位の接頭語ともぴったり合うな。1日を20時間にすると、1日は20万秒になる。


 さてその場合、1秒の長さはどれくらいになるんだ? 前世の時間で言うと、1日は24時間で8.64万秒だ。1日を20万で割ったら新1秒が前世の0.432秒だ。

 前世では、1,2,3とカウントできたが、同じことをしようとしたら舌を噛みそうだ。使いづらいな。新5秒前からカウントダウンしたら、旧2秒で発射! 早すぎるだろ。


 じゃ、1日を10万秒にしよう。それなら新しい1秒の長さが前世の0.864秒になる。ちょっと早くなるぐらいだ。

 1日は10時間。午前、午後という言い方は無用だな。今世の現在は1日を12等分しているからそれほど差はない。うん、スッキリした。これでいこう!


 ついでに暦も新しくしよう。なんで1年が12ヶ月なんだ? 30日にこだわる意味がわからん。そもそも2月は28日だからな。30日にこだわっているわけでもない。

 確かローマ時代あたりに決められたんだよな。ユリウス・シーザーだっけ? カエサルに代わったんだっけ? よく覚えてないが、まあどうでも良いか。


 1年を10ヶ月にしよう。偶数月は35日、奇数月は36日だ。4年に1回閏年が来て、10月36日ができる。

 1月1日はヨーロッパと合わせておいた方が便利だよな。年がずれない。たしか、今頃グレゴリオ暦ができたか、まもなくできるか・・・そのタイミングで新しい暦を導入しよう。父上を通してポルトガル人に確認しないといかんな。


 ・・・この世界のヨーロッパの歴史は変わってないよな・・・


 週はどうしようかな。これもずれると未来で面倒だから、暦を合わせるときに導入するか。月日は違うけど曜日は一緒なら、商取引はやりやすいと思う。




 基本7単位のうち3つが後回し、4つが決まった。


 数字はアラビア数字を使おう。やはり計算とか筆記が楽だからな。私も慣れているし、数式もヨーロッパからもらった方が楽だ。

 父上に頼んでポルトガル人から数学や物理の本を仕入れてもらおう。航海士が幾何学の本を持ってるんじゃないかな。

 で、その表記が便利だから採用するって言う建前だ。勝手に作ったことにするとなぜ同じになったのかという無駄な疑問を後世に残すことになってしまうからな。またオーパーツができてしまう。


 ヨーロッパと異なる単位系だから、将来交流が盛んになると換算が問題になって、どちらかに揃えようという話になるだろう。そのとき、ヨーロッパと日本のどちらが力を持っているかが本当の問題になるのだ。どうなるかな。


 それに、前世のアメリカのように、力さえあれば世界に合わせずに自分勝手なこともできる。ヤードやマイル、ガロン、°Fみたいにな。




 手紙が書けた。あとは、留三が考案して宮内が執筆してくれたかん水の精製作業手順書を同封する。私が査読して3回書き直させた。図解入りだから曖昧さはない。問題は読み手が正しく読み取れるかどうかだが・・・

 これを使ってヨードチンキとうがい薬を量産して荒稼ぎしてもらおう。


 最後に一之宮移転プロジェクトの進捗報告書、日本近代化計画書、関東連合財政好転化計画書を同封して・・・


 と言うわけで分厚い封書になってしまった。和紙だからな。結構厚みがある。5kgぐらい・・・違った5000銖ぐらいありそうだ。


 表には秘密区分として「極秘」をつける・・・余計に危険か? 荷物に紛れ込ませた方が良いな。


「手紙というものは、こう、折りたたんで懐にしまえるような・・・」


 などと宮内は言っていたが、


「今後はこのようなものが封書として往来するのだ。慣れよ」


 で押し通した。


 それにしても、コーヒーが飲みたいな。

 大人の言葉で話すようになったら梅がおっぱいをくれなくなった。やっぱり気持ち悪いよな。普通にしゃべる幼児なんて。

 少し早いが乳離れした。最近、こんな仕事が多い。一息つくとおっぱいの代わりにコーヒーが飲みたくなった。日本での栽培は難しいよな。小笠原諸島でもダメかな?

 ポルトガル人使って輸入か。父上におねだりしてみよう。


SI:国際単位系。英語だとInternational System of Unitsだが、略称はフランス語を採用しているのでSI。


くう考案の基本7単位

温度:   1度=1℃

長さ:じょう 1杖≒1m

重さ:しゅ  1銖≒1g

時間:びょう 1秒≒0.864sec

電流:後日検討

物質量:後日検討  おそらく本作では対象外

光度:後日検討


余談:角度も1周を100度にしようともくろんでいます。ただし、ラジアンはそのまま。ラジアンに合わせて1周を200度にする案も検討中。


単位についてのご感想、ご意見を募集しております。


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― 新着の感想 ―
一分百秒はともかく、朔望月は平均約29.5日なんで、地球上に住んでる以上暦が一月約30日になるのはしょうが無いというか……
角度の話ですが、三角定規が面倒になりそう  航海術にかんしても、1日に1度星の位置がズレていく方がわかりやすいのでは?
結局廃れたけどフランス革命期に似たようなことやってなかったっけ。 あと時間はどう考えても24時間の方が便利。 20だと2.4.5.10だけど、24なら2.3.4.6.8.12に分割できる。特に3で割れ…
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