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近代への永い永い近道 --近世無用! 娘と父とあと一人--  作者: 浅間 数馬


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107. おかず 天正12年10月(1584年)

 家の躯体ができた。鉄筋コンクリート3階建て。立派だ。


 武蔵の家もでかかったが、平屋だし、昔っていうかこの時代の作りなんで無駄というかゆとりがあるというか・・・

 あれはあれでのんびりできて良いのだが、日常生活は前世のように機能的でありたい。そして寒さ対策も。


 日本の伝統住宅って言う奴は防寒性能がまるっきりないからな。完全に南方の文化だ。やっぱ赤道直下のスンダランドから来たんだな、遙かな先祖達は。


 躯体の外側に断熱材を分厚くあてて、その外側にレンガで外壁を作る。外観はレンガ作りだな。外断熱にすると躯体の温度が一定になるので、冷暖房のエネルギーが少なくて済むのだ・・・

 大丈夫かな? 昔--前世で--、家を建てようと思って勉強したが、結局建てずにずっと団地住まいだった。知識だけでやったことないし、北海道の寒さはハンパナイ。関東ならこの知識で十分かも知れないが・・・


 しかも、断熱材は前世のものとはだいぶ違う。藁を編んで座布団のようなものを造り、その中にガマの穂、いろんな鳥の羽毛などを積めて作っている。ひょっとしたら令和のものより性能が良いんじゃないか? なんて期待しているが・・・


 カビとか、虫とか、いろいろ被害が出そうな気もする・・・ ま、これも実験だ。


 薪ストーブの設置場所も3カ所用意されている。ここにストーブを置いて、屋内に煙突を這わせてから排気すれば、余熱で家中温まるというもくろみだ。

 うち、1台は半地下におく。煙突を1階床下に這わせることでオンドルのような床暖房にするのだ。風呂も洗面所もトイレも皆温かくするのだ。


 トイレ・・・ 暖房したら臭いかなぁ? 水洗じゃないからな・・・

 私は若いからまだ良いが、家で働いてる者の中にはまあまあな歳の人も数人居る。卒中とか有り得るよな。

 匂いはともかく、暖房は入れよう。


 風呂も造るぞ。

 燃料があまりないから3日おきぐらいかな。侍女も料理人も女中も下僕も皆入れてあげよう・・・

 五右衛門風呂じゃ足りないか。要検討だな。


 内装工事も始まった。前世では打ちっ放しが格好いいって言う人も居るが、私は古い人間のせいが、コンクリートを見ながら過ごすというのはどうも馴染めない。むしろログハウスみたいに木材むき出しの方が和む。


 と言うわけで、木造で内装を作ってもらっている。フローリングに木の壁と天井。完成後を想像して今からワクワクだ。


 窓はガラスだ。厚めのガラスをペアガラスでさらに二重窓にしている。窓1カ所につきガラス4枚だ。ガラスの透明度がイマイチなので全部閉めるとちょっと暗い。仕方ないな。


 アルミサッシではなく木製の窓枠なので、窓枠からの冷えはない・・・


 はて、隙間風は大丈夫だろうか? 新築はともかく、経年劣化で木材が痩せて隙間風が入ってくるような気がするが。

 そんときはそんときだ。実験だから。




 船が入ってきた。大量の文書が届いた。片っ端から目を通していくが、優先順位が付けられない。秘書が欲しいな。


 暦検討の結果報告があった。『申し分なし。500年は補正無しで使える』とある。そりゃそうだ。450年後に使っていて問題なかったからな。


 それにしても、この時代によくもまあまあ正確な天体観測とか計算ができたものだ。ヨーロッパの天文学には改めて感心するよ。

 そして確かちょうど今頃、キリスト教圏が天文学でイスラム教圏を追い越そうとしているはずだ。50年ぐらい前まではイスラム教圏の方が観測精度が高かったが、宗教的に地動説について行けなかったとか。


 ま、地動説についてはキリスト教圏も公式には否定しているからな。今、西洋と中東を追い越して日本がトップに立つチャンスだ。頑張ってくれ、賀茂殿!

 ・・・って、もう結構なお歳だったよな。後継者は育っているだろうか・・・


 それはさておき、早速『グレゴリオ暦を採用すべし』との意見を閣議宛てに送る。あとは父上が手はず通りやってくれるだろう。

 年末の総会で採用決定して、来年は猶予期間、再来年正月から太陽暦に切替だ。


 あらかじめ決めたとおりの茶番劇。若干馬鹿馬鹿しいとは思うが、歴史を作っているのだから後世の人が納得するストーリーにしておかなければならない。


 各地の学校も無事に開校したとの報告だ。札幌の他、羽前、羽後、陸中、陸奥、信濃に中学校を開校できた。これで各県に1校以上中学校ができた。

 各地に県を設置中だが、まだ業務の移管ができていない。文部方としては中学校設立は最後の仕事だ。キリの良いところでキレイにまとめられたな。


『豊かになりたければまず人を育てよ』


 これが連合内に浸透して来ている。上手くいっているな。


 通商産業方から北海道を除いた領内の主だった街に電信が通ったとの報告も入った。気象観測のデータが定期的に送られる他、各役所の簡易連絡が増えているらしい。勿論、正規の報告は紙文書で、荷駄や船を使って送られることに変わりないが。


 電信は遠からず民間にも開放しなければならないな。株取引とかに占有されそうな気がするが・・・


 そして北海道と島嶼部の電信も考えなければ。


 流石に海底ケーブルは難しい。あれはケーブルだけでなく、途中に中継器も入っているからな。故障したからと言って一々引き上げて交換や修理することはできない。すべての中継器がメンテナンス無しで10年以上の長期間、故障せずに安定動作してくれないと困る。

 そんな品質に到達できるのはいつの日か・・・


 となると、やっぱ無線か。電波利用のきっかけって・・・


 私の記憶が確かならば、マクスウェルが理論的に存在を予言して、ヘルツが実験で立証したんだっけ。確か、火花放電で放射器から発した電磁波を離れた共振器で検出したんだっけ・・・


 電磁方程式は大学校で教えているな。じゃ、そこから電磁波の存在は予言できるわけだ。




「そういう訳で、電線を使わずに電気信号を送れる可能性がある。立証せよ」

「「「・・・」」」


 武蔵から連れてきた研究員の電機組メンバーに、電磁方程式の変形を説明して無茶振りする。目が点になっているな。


「式の変形は理解できましたが、本当に電気が空気中を流れたら皆、感電してしまうのではありませんか?」


 ああそうか。電波が発見されていない世界ではそう考えるか。

 前世ではいつ電波の存在を知ったのか思い出せない程身近な存在だったから、そんな疑問はまったく出なかったな。


「雷のような大きな電流が流れると感電するだろうな。だが、微弱なものなら静電気のようにちょっとピリッとするとか、全然感じないと思うぞ。初めはわずかな電力で実験せよ」


 火花放電の放射器とか共振器って、言葉は知っているがどんなものかしか知らない。発振器で使う共振回路のことじゃないよな?

 本で読んだだけの知識って奴はこんなもんだ。読んだときに疑問に思って調べないと役に立たん。


 仕方が無いので最初から極基本的な送信機と受信機の回路図を描いて渡す。


『里見くうはどこからこの発想を得たのか』


「またトンデモ歴史マニアのおかずが増えてしまったな」


「済みません。今のお言葉の意味が分かりません」


「・・・独り言だ。気にしなくてよい」


 つい声に出してしまった・・・ 反省。




 10月下旬。まだ太陰暦だから、太陽暦に直すと11月の半ばだ。

 北方探検隊が帰着した。雪が降る前に無事に帰ってこれて良かった。


 どうやら樺太が見えたようだ。今回は北海道の海岸線を確認することが主目的なので上陸はしていないが、先に渡したラフな地図が大体合ってることが確認された。


 各地のアイヌに挨拶して物々交換などで補給もできたという。来年からは札幌周辺のアイヌからも探検隊員を出してもらって、南側の状況説明と、北側の皆さんも仲間になってもらえるように説得してもらう算段だ。


 来年以降だが、ニシン、ホッケ、昆布など、海産物をどんどん買おう。

 こっちからは米、麦、大豆、味噌、醤油、木綿、ヨードに石けんなど、いろいろ売ることができる。


 連合の商人達に船を出してもらわなければならない。小樽辺りに支店を開設してもらおう。


 さらにはじゃがいもとトウモロコシの種を譲ってたくさん作って売ってもらおう。

 鉱物資源も必要だ。一緒に採掘したい。商人にも資金を出させよう。


 収穫した農産物と採掘した鉱物は鉄道で港まで運びたい。やることいっぱいだな。


 そして防衛だ。西洋人が進出してくる前に防衛体制を築くことを合意してもらうのだ。


マクスウェル:James Clerk Maxwellジェームズ・クラーク・マクスウェル(1831 - 1879)。イギリス・スコットランドの理論物理学者。1864年に電磁方程式を導いて古典電磁気学を確立。電磁波の存在を理論的に予想し、その伝播速度が光の速度と同じであること、および横波であることを示した。(参考:Wikipedia)


ヘルツ:Heinrich Rudolf Hertzハインリヒ・ルドルフ・ヘルツ(1857 - 1894)。ドイツの物理学者。1888年に電磁波を生成・検出する機械の構築によって、電磁波の存在を初めて実証。(参考:Wikipedia)


くうは前世でデジタル電話の開発者です。有線が基本ですが無線の知識もあります。電磁気学は大学で修めて--学生運動の影響でほとんど自習--います。電磁方程式は関東大学校の授業で教えている設定です。


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