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近代への永い永い近道 --近世無用! 娘と父とあと一人--  作者: 浅間 数馬


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105/107

105. 手紙 天正12年8月(1584年)

 計画通り冬用住宅を作ることにした。

 街自体が建設中とは言え、街並みも大体分かったので、ちょっと離れた丘の上に外断熱鉄筋コンクリート3階建の屋敷を作る。


 1階は広めの玄関ホール、キッチン、パントリー、納戸、水回りと住み込みの使用人用の部屋など、バックヤードだ。2階は執務室、応接室、会議室、会食用のダイニングと公用だ。そして3階が私用だ。

 それほど長期間居住する予定では無いが、私がここを去った後も何かに使えるだろう。後世まで残れば歴史的建造物になることは間違いない。


 鉄の需要は大きい。鉄筋にも少しまわせるようになったが、半ば職権乱用だ。新しい建築技術開発の名目で、強引に釜石からまわしてもらっている。研究なので、設計から施工まで研究所の研究員も参加して試行錯誤しているような状況だ。


 石の上に柱を載せただけのこの時代の基礎とはまったく異なり、ベタ基礎だ。職人達も戸惑っている。

 不安なんで毎日現場に行ってチェックしてアドバイスしている。強度不足で崩れたら死ぬからな。私が! 命がけだ。


 ようやく基礎ができて、基礎から突き出した鉄筋に柱の鉄筋を結びつけて形作っていく。こういった作業はこの時代の職人にはお手の物のようだ。日に日に形作られていく。

 それにしても、柱の太さはこんなもんで大丈夫だろうか? 北海道も結構地震が多いし、大地震もあるからな。しっかり作っておかなければならないが、建築はほとんど知識が無いので不安だらけだ。


 1階の柱と壁の鉄筋が組めたら型枠を付けてコンクリートの流し込み作業だ。型枠は板を並べるだけなので、コンクリートが漏れないようにと釘を刺しておくだけで十分だろう。


 問題は流し込みだ。流し込んだコンクリートに棒を挿し込んで突いたりかき混ぜたり、型枠を叩いたりして気泡を追い出してやらねばならない。


「棒を挿してかき混ぜると自ずと固まるなんて神話みたいですね」


 研究員が感心している。

 伊弉諾尊いざなぎのみこと伊弉冉尊いざなみのみことが天から降りてきたとき、そこは海だけだった。海に棒を突き刺してかき混ぜると自ずと固まって島となったので、その島に降りて国産みを始めたのだ。

 自ら固まった島の名前はオノゴロ島という。実際にどの島なのかハッキリしないが、淡路島の脇にある小島がそれだという説があるな。


「なかなか良い比喩だな。冗談に使えるのならば本物の知識だ。それでよい」


 褒めてやったら嬉しそうだ。


 あれ? ひょっとすると古代にもコンクリートがあったのかなぁ? 古代コンクリートってのはローマ時代には常識だったな。ギリシャ時代にはもう使われていたんだったっけ?

 オノゴロ島もその知識からできた神話かも・・・ ユダヤ人の知識が入っているのか?


 神話と言えば阿波研究はどうなってる? 全然報告来ないな。催促するか。




 イソンノアシ殿と突っ込んだ協議をする。鉱山開発だ。

 神域になっているところもあるだろう。そこに踏み込んで木を伐採して穴を掘る。対策は立てるが毒性のある物質が川に流れ込む可能性もある。嫌がるよな。


 案外あっさり了承された。

 出された条件はこれだ。


一つ、調査にアイヌの人を同行させて、ホントのホントに入って欲しくないところには入らないこと

一つ、鉱毒対策の徹底と、鉱害発生時には採掘を休止して対処すること

一つ、採掘にはアイヌ人も参加させ、連合から来た労働者と同額の賃金を払って福利厚生を提供し、安全衛生管理すること

一つ、利益の2割をアイヌに支払うこと

一つ、条件は5年後に見直すこと


 利益分配の割合決定には時間がかかったが、5年後に見直すことで一応落ち着いた。5年もやれば結構な利益も出るだろうし、連合から持ち込んでいる資金、技術、資材、人材、販路などの重みも理解してもらえるだろう。


 そういう訳で、長安が育てた山師系の山の民をリーダーとして鉱山探索チームが編成された。本格的な冬が来る前に、近隣の状況を確認して来春から効率的に調査できるように準備するのだ。




 学校建設が大詰めだ。校庭の整備とか校門とかは後回しで、取りあえず校舎だけはできた。現在、机と椅子、黒板などを急ピッチで量産しているところだ。

 1期生の入学式は屋外で行うことになる。体育館は雪が降る前になんとか建てたいところだ。冬の運動不足を回避したいからな。講堂や図書館建設に着手できるのは来春だろうな。


 連合からやってきた職員、職人、商人たちの子弟のほか、松前の武士、北海道南部のアイヌの若者も来月入学予定だ。


 なんと学生の1/3がアイヌの皆さんだ。予想よりもかなり多い。

 連合人と分け隔て無い教育を行うのが理念だが、言語の壁が厚い。1年生は連合とアイヌの学生を分けて、アイヌ学生には標準語の学習を優先してもらう。


 標準語は武蔵言葉をベースに国語審議会で制定した。前世の標準語とは少し違うが、父上も私も違和感ない。


 で、逆に、連合学生にはアイヌ語授業を行って今後の北方開拓とアイヌ文化の保護に携わってもらうのだ。シベリアとの交流にも少しは役立つだろう。


 正規の学生は全員寮に入る。寮の方もとりあえず寝床はできたってところ。食堂とか風呂の建設が開校までに間に合わないかも。


 さらに、札幌周辺のコタンに住む大人達も聴講する予定だ。遠方の方もいらっしゃるが、すぐに雪が降るので長期間の聴講は難しく、来られるときに見学していく形だな。




「ご無沙汰しております。お元気そうで何より」


「おぉ! どうした!? そなたが来るとは思ってもみなかったぞ」


 8月下旬。大蔵長安が山師をたくさん連れてやって来た。


「陸奥と出羽の鉱山は大体調査完了しました。現在、採掘計画を立てています。

 次はこの蝦夷地です。連れてきた者達に調査させます。

 この機会に私も一度北海道に来てみようと思いまして。前世でニセコの雪はすごく質が良いと聞いていたので、冬になったら行ってみようと思ったのですよ。

 もっとも、この時代の冬のニセコは地獄でしょうね。夏で十分です」


 私も夏のニセコしか知らない。スキーではなくバイクだ。国道5号線から羊蹄山を眺めたな。


「なるほどな。北海道はもう秋だけどな。

 北海道に鉱山がたくさんあることは知っている。どこに何があるかは知らないが・・・

 アイヌの皆さんと話が付いている。鉱山調査には積極的に協力してもらえるから上手くやってくれ。

 それと、前世でニセコは国道と鉄道が通っていた。今世でも鉄道ルートの候補地だ。ニセコに行くならその観点でも見ておいてくれ」


「はい。それと、件の件で」


「あぁ、父上の・・・」


 長安から説明を受ける。

 なんと! 護衛の情報本部エージェントは皆知っていたのか!? プライベートなことなので長安に報告していなかったそうだ。


「6人か・・・ 多いな」


「ええ、前世では大問題ですね。私も元女性としてちょっと・・・

 でも、この時代の武将なら普通ですよ、普通」


『天正好色番付 西の秀吉 東の家翔』


 週刊武蔵の見出しになりそうだな。子供の数では圧勝だぞ。世襲制じゃないけど。

 あ! 家康がいるじゃん! 圧倒的じゃないか! 奴の方が!


 よし。死亡フラグも立ったことだし、この件はこれで終いにしよう。


 兄弟が3倍に増えてしまった。病や事故で幼くして亡くなった子もいる。生きているだけで6人だ。その中には件の出羽里見家の男子も含まれていた。


「とにかく、父上に諫言しなければならないな。母子を全員呼び寄せて父親として接するように、子供は全員学校に入れろ、母親達の暮らしの面倒も見ろ、とな

 そうそう、亡くなった子の母にも見舞いをさせなければな」


「ですね。そこは姫からお願いします」


「ああ、私が手紙を書こう。府中に帰るときに届けてくれ」


 戦国武将じゃ無いんだから、総長の年俸ってそんなに多くないよな。5000万円だっけ? 手取はいくらだ?


 年俸4500万円の副総長の私の方が裕福だ。いろんなパテントとかマージンとか有るからな。確か、去年の収入は1億円超えてたはずだ。所得税6000万円も払ったな。税率高すぎるな。残りは大半を投資に回しちゃって手元にないから実感湧かないが・・・


 どうすんだ? あいつ? 私はとっくに自立してるし、姉も兄ももうじき巣立つが、それにしてもあと6人か。

 子だくさんの貧乏父さんって、テレビの長期追っかけ対象じゃないか!


 あ! 直轄地の年貢があったな。あれってどのくらいの収入になってるんだ? 今まで全然気にしてなかったが・・・ でも、家臣もいるからなぁ。年貢は家臣の禄になってんじゃないのかなぁ・・・




 長安が乗ってきた船にはたくさんの手紙が積まれていた。

 両親からそれぞれ手紙が届いた。それぞれに姉のりくと婿の伊達政宗の結婚がつつがなく執り行われたとある。姉上は家を出て伊達家に入った。婚儀は伊達家で執り行われたようだ。

 祝いの品として贈ったヒグマとラッコの毛皮が好評らしい。良かった、良かった。


 鳥獣保護もしなければならないがな、毛皮は貴重な資源だ。連合には富裕層が増えたから、毛皮の需要も増えている。乱獲しないように狩猟の管理もしなければならん。


 お、政宗から礼状が来てるな。そうか、そうか、礼状なんてものが書けるぐらい成長したか。どれどれ・・・


『姫が大活躍して退治した暴れ大熊を毛皮にしてお贈り頂き恐悦至極・・・』


 だからウィリー・ウィリアムスじゃねぇよ!

 話が盛られすぎている! 熊は逃げただけで暴れてねぇし! 退治してねぇし! まだ生きてるし!


 だいたい、あの熊は檻の中で大切に育てられていたのだ。今思えば運動不足で体力が低下して動きが鈍かったのだろうよ。でなければ、いくら少林拳とヌンチャクを使ったとはいえ、か弱い女子が2mを超えるヒグマを一撃できるわけないだろう!?

 ・・・2m? 檻に入った奴を見たらそんなにでかくなかったな。1mちょっとぐらいだったかな? まだ子供だったかも・・・


 説明しても誤解は解けないだろうな・・・

 年末には新巻鮭といくらやカズノコの塩漬けを贈ってあげよう。塩だらけだな。高血圧に注意してくれ。


死亡フラグ:機動戦士ガンダムのギレン・ザビになぞらえています。


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