転生
黄色い光が弾けて目がくらみ、目を閉じざるを得なかった。
目を閉じると、ピリピリとした感覚があった。
まるでとんでもない高さか落ちているようだった。
いや、間違いなく落下していた。
自分が正しいかどうか確かめるために目を開けた。
俺の下には大都市が広がっていて、
その都市に向かって落ちていた。
そのまま落ち続けるうちに、
いろんな人たちが俺のことを見上げているのが見えた。
歩道に近づくにつれ、目を閉じて、
痛みがないことを願った。
体は完全に無重力のように感じた。
そして、地面に着く前のほんの一瞬、
本来よりも速く倒れこんだといえるだろう。
ドーン!
瞬時に肺から空気が抜けるのを感じた。
まだ頭の中で起きたことを理解出来ずにいたが、
脳は状況を理解のすることを優先させているようだった。
ゆっくりと手を使って地面から体を起こした。
あの高さからどうやって落下して生き延びたのかさえわからない。
着地の衝撃で頭が少し混乱していたが、
それ以外はさほどのダメージは受けていないようだった。
俺は立ち上がってあたりを見渡した。
大きなクレーターの真ん中にいるようで、
外がほとんど見えないほど深かった。
自分が大都市のど真ん中に落下したことに気が付いた。
生前、大都市の近くに住んでいた。
もし同じ都市にいるとしたら、
何らかの方法で40キロの距離を移動した。
街は美しく、俺が目にしたのは歩道を行き交う人々だけで、
そのうちの多くは立ち止まって俺を見ていた。
もともと、注目を集めるのは好きではない。
何百人もの人が俺を見つめているように感じたが、
実際はそうではないのだろう。
道路を振り返ると、俺が立っていたクレーターからわずか数センチのところに数台の車が見えた。
突然、1台の車が前方によろめき、
車がこちらに向かって迫ってきた。
その瞬間俺はなぜか、
普通の人がするように車を避けようとはせず、
即座に手を伸ばした。
驚いたことに、車は驚くほど軽かった。
車を持ち上げる時に、ボンネットを押し潰してしまったため、
いくらかの金属が手の皮膚に刺さった。
ゆっくりと持ち上げ始めたとき、
俺は自分が実際にやっていることが信じられなかった。
先ほど車が落ちた場所と同じ高さまで持ち上げた。
「すごい」
かなり非常識な力を手に入れたことに間違いはなかった。
この車もありふれた車ではなかった。
以前見たことのあるミニバンのようだが、
重さは400キロ、いやもっとあったかもしれない。
運転席に座っている女性は、
俺が車を道路に押し戻し始めたとき、
かなり驚いたように見えた。
車を動かすときにカリカリという音が聞こえた。
車を押し戻すと、俺はクレーターから立ち上がった。
車から手を離し、驚いた表情で車の中の八つの穴を見つめた。
各穴は小さなフックのように曲がり、車に食い込んでいた。
上を見上げると、目に入る限りの車が後ろに戻っているのが見えた。
通りに並ぶ車をただ驚きながら見つめることしかできなかった。
そして、反対方向からサイレンの音が聞こえてきた。
俺はパニックになった。
これに巻き込まれないわけがなかった。
16歳のスウェットパンツと赤いTシャツを着ている人間がオゾン層から落ち、
車を1メートル持ち上げ、金属フレームをつぶすのは、尋常じゃない。
また、俺が作ったでっかいクレーターがこの交通渋滞の原因だということもあり、
彼らがそれを喜ぶはずがない。
俺がこの状況で事情を説明しても、それだけで済むわけがない。
仮に俺がこの能力の唯一の保持者であるとしたら、
おそらくどこかの科学者の実験室に送られたり、
精神病棟に入れられたりするだろう。
全力で路地に駆け込み、数秒で次の通りに着いた。
走りながら、歩道を歩く人々の間をすり抜け、
ついに自転車レーンを走っていたことに気づいた。
隣の道路の車よりも速く走っていることに気づいた瞬間、
走るのをやめ、次に何をすべきか考えた。
俺はあの車を持ち上げ、
高い場所からの落下したにも関わらず、
まだ生きているということは、
すでに何らかの超能力を手に入れたのだろうと気がついた。
ため息をついて、隣にあったベンチに完全に崩れ落ちた。
両腕を横に垂らし、上空を見つめた。
おそらく俺にできる最善のことは、この街からできるだけ多くの情報を収集し、
それから自分に何が起こったのかを理解することだろう。
俺が知っていることから考えると、いつこの状況が悪化してもおかしくない。
異世界転生の世界だと考えると、長く楽しいことばかりではないと感じる。
ただし、通常のファンタジー異世界にテレポートされたわけではなさそうだ。
むしろ、未来的な社会にテレポートされた逆異世界のようだが、
それすら確実には分からない。
そもそもすべてが俺の出身地とかなり似ているように見えるからだ。
急いで左ポケットの中身を確認すると、
充電の残りがたった24%の携帯があった。
右ポケットには学生証の入った財布があった。
三日分の現金があるはずだと思う一方で、
すぐに使ってしまって、何に使ったのかさえ思い出せないかもしれない。
だからこそ、友達の家にバッグを持って行くべきだった。
少なくともその方が俺の持ち物が増えたのに。
一通りポケットの中身を確認した後、ふとベンチに目をやると、きちんと折りたたまれた新聞が置いてあるのに気づいた。
ちょうどいいところにあった。
早速新聞を掴み、ベンチに座った。
新聞のタイトル欄には「サンタ・マルタ・ニュース」と書かれていた。
その次に目に入ったのは、日付だった。年は2012年と記されていた。
つまり俺はどういうわけか過去にタイムスリップしてしまったということになる。
俺は自分の見ているものが信じられなかった。
逆異世界にいるだけでなく、文字通り逆異世界にいる!
なんと俺は12年前にタイムトラベルしてしまったのだ!
記事をざっと読み始めた。
大部分は、俺が過去に来たことを考えれば普通のものだった。
政治についての話や、テクノロジーや医学に関する話がいくつかあったが、それらは全て飛ばした。
世界の有名人のゴシップページもあった。
しかし、俺の概念をすべて変えるような記事に目がとまった。
その記事は、新聞の7ページにあるスーパーヒーローチームについてのものだった。
ここではスーパーヒーローが本当にいる!
それは本当にすごいことだ!
ベンチに一人で座り、頭を抱えて上を見上げた。
青い空が広がっていて、
雲が少し動いているのが見えるだけだった。
スーパーヒーローがいる世界ってことは、
この場所は住むには最悪かもしれない。
記事をもう一度読み返して、その内容をじっくり読んだ。
スーパーヒーローチームについてのセクションで、
彼らは自分たちを『ワールド・ウォリアーズ』と呼んでいる。
記事には、チームが結成されて今年で50周年を迎えると書かれていた。
つまり、この世界では1962年から存在している。
俺が生まれる45年前ということになる。
これについて理解するのは本当に大変だった。
この世界は、人々が異世界について想像するような典型的なファンタジーの世界ではない。
いや、確実に逆異世界に来たんだ。
でも、これは過去にタイムスリップするような異世界なのか?
どう説明すればいいんだ?
未来的な街にいるけど、正直、
ただの東京に見える。
でも、ここでは2024年ではなく2012年なんだ。
お腹がグーグー鳴って、集中が切れた。
そういえば、友達の家を出てから何も食べていなかったのを思い出した。
おそらく、次にやるべきことは食べ物を手に入れることだろう。
ゆっくりとベンチから立ち上がり、
歩道を歩く人々の流れに加わり、横断歩道まで歩いた。
横断待ちをしている間、あの天界の存在を思い出した。
あれは何だろう。おそらく高次の存在だろう。
もしかして神のようなものか?
信号が青に変わり、歩き始めた。
もしあの存在が何かの神だとしたら、
俺が戦う相手は神を怖がらせるほど強いに違いない。
反対側から来る人々が俺の横をすり抜けていくのを感じながら。
でも、神が誰かを呼ぶのに列車を使うなんて考えにくい。
たぶん召喚されるには死ななきゃいけないんだろうけど、
列車に轢かれるのがその方法なのか?
少なくとも、他の異世界転生者みたいにトラックに轢かれるよりはマシだ。
遠くで何かが聞こえたが、気に留めなかった。
しかし、何かを打つような音がどんどん激しくなっていった。
もう一つ気になるのは、
俺に与えられた能力が基本的な超人的強化能力だけだったことだ。
悪くはないけど、もっと良いものがあるはずだ。
現代のアニメでどれだけのキャラクターが壊れて再起不能になったかを考えると、
少なくとも俺の人生を楽にするために何らかのOPスキルを与えてくれるべきだった。
通り過ぎる人たちが肩にぶつかってきた。
周りを見渡すと、俺以外の全員が全力で走っているのが見えた。
何が起こったのかと思い振り返ったところ、見慣れた白い車体が見えた。
異世界転生小説で多くのキャラクターと共に旅をする白いトラックだ。
何が起こっているのか理解できないまま、
トラックに正面衝突されて道路に吹き飛ばされた。
鈍い大きな音を立てて地面に叩きつけられた。
頭蓋骨が激しく痛み、トラックにぶつかった場所がズキズキと痛んだ。
素早く立ち上がり、まだ痛みの残る肋骨を押さえた。
トラックのクラクションが聞こえたが、
先ほどまで気にも留めなかった音だと今になって気づいた。
「くそっ」
俺が立ち上がる間に、トラックはUターンした、
再び俺に向かって高速で走ってくるのが見えた。
避ける時間がないのは分かっていた。
幸運にも、近くに逃げ込める公園が見えた。
衝撃に備えたが、それでは不十分だった。
再び空中に飛ばされ、今度は顔から地面に叩きつけられた。
時間を取らずに、手を使って素早く歩道に這っていった。
歩道を使って立ち上がり、まっすぐ公園の木立ちに向かって走り出した。
満足して振り返り、手を空中に突き上げた。
「ハッ! バカなトラック、 まだ俺を殺せてないぞ!」
突然、木が割れる音が聞こえた。
振り返ると、トラックが公園の木々を突き抜けて俺に向かってきた。
「トラックはテレポート!?」
走ろうとしたが、時すでに遅かった。
今度はトラックが俺を完全に轢き、
車体が俺を地面に強く押し付けた。
トラックが完全に俺の上を通過したとき、
それを感じたが、あえて動かなかった。
全身が痛くなり、筋肉が悲鳴を上げてきた。
ここで動くと、またトラックが戻ってくるかもしれない。
だから死んだふりをして待つことにした。
読んでいただきありがとうございます。
私はまだ日本語が流暢ではないので、小説は進行中です。
見逃した間違いがあれば教えてください。
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