プロローグ
「やった!バカなクトゥルフ・ワナビーをやっと倒したぞ!」
その瞬間、誰かの視線を感じて顔を上げると、
みんなが俺に注目しているのに気がついた。
顔が赤くなるのを感じながら、
急いでスマホに意識を集中させた。
「すみません」
消え入りたいくなったが、それができないとわかっていた。
友人に勧められてダウンロードしたこのバカげたゲームを非難したくなった。
最初は楽しかったが、急に難しくなった。
このくだらないレベルをクリアするのは9回目のチャレンジだった。
そして、すべてはチーム全体の10倍のHPを持つこのバカなイカのせいだった。
まるで開発者がユーザーを怒らせるために作ったかのようだった。
画面をタップして報酬を確認すると、
キャラクターのアップグレードにしか使えないゲーム内通貨の束があった。
携帯を歩道に投げつけたい気持ちを抑えなければならなかった。
友人の家から帰る途中だった。
その友人は俺が住んでいる大都市のはずれに住んでいた。
今は、友人の家からほど近い屋根のあるオープンエアの駅に座っている。
スマホのスイッチを切り、左前のポケットに入れた。
ベンチから立ち上がり、レールの端まで歩いて電車が到着するのを待った。
電車は7時に来る予定で、今は6時55分だった。
駅周りを見て時間をつぶすことにした。
この駅はかなりぼろぼろだった。
駅の壁のペンキは剥がれ、ベンチには錆が散らばっていた。
駅の角にはよくある落書きがあったが、俺には読めなかった。
駅の壁に描かれた落書きを眺めていると、視界の隅に女性が現れた。
彼女は平均的な外見で、黒髪と眼鏡をかけていた。
OLを思わせる黒いドレスを着ていて、鞄のようなものを持っていた。
すぐに目をそらし、これ以上注意を向けないようにした。
電光掲示板に視線を戻したが、時間はほとんど変わっていなかった。
スマホをポケットから取り出し、時間を確認するためにスイッチを入れた。
6時58分だった。
列車は近くにいるはずだが、
通常は到着する前に聞こえる。
列車が早く到着しないと、
間に合わない。
家に帰って荷物を片付けて、
1時間後に始まる授業に行かなければならなかった。
ちょうどその時、さっき駅に入ってきた女性が俺の隣に立った。
心臓のドキドキが速くなるのを感じた。
わざわざ俺の隣に立ってくれる人はめったにいない。
彼女に他に選択肢がないわけではなかった。
どうすればいいのだろう。
彼女と話しかけるべきか。
またバカなことを言ったらどうしよう。
なぜコーヒーの匂いがするのだろうか。
待って、コーヒー?
いや!集中するんだ。
隣にはきれいな女の子が立っている。
いや、待てよ、俺は彼女の顔さえ見ていない。
俺はすぐに隣に立っている女の子を見た。
その動きが彼女の注意を引いたのか、
彼女もこちらを見て、目があった。
彼女の深い茶色の瞳を見つめている間、
何が起こっているのかわかるのにほんの数秒しかかからなかった。
俺は再び前を向いた。頬が熱を帯びるのを感じながら、
前を向くことに集中し、隣の女性のことは考えないようにした。
Stupid!Stupid!Stupid!俺は何も学んでいないのか?
つい1分前に恥ずかしいことをしたばかりなのに、
また知らない人をこっそり見ている。
「こんなに早く街に出るには、あなた少し若すぎない?」
「ええ、たぶん」
…俺は自分が嫌いだ。
俺は自動操縦か何かなのだろうか。
16歳の若者が町の中心にある駅にいるのには少し早い時間なのかもしれない。
ちらりと時計に目をやると、あと3分で電車が来るようだった。
2人とも何も話さず、電車が来るのを待った。
しかし、待っている間に彼女からシナモンのような香りがすることに気づいた。
突然、風が駅に吹き込み、冷たい風が肌を撫でた。
俺は無地の赤いTシャツにスウェットパンツという、
かなりカジュアルな服装だった。
「あっ!」
ふと見ると、隣の女性が鞄から落ちた紙切れを必死に拾おうとしていた。
風に吹かれて遠くに飛んで行ってしまうものもあれば、すぐに落ちるものもあった。
心の奥底では、彼女を助けようと思った。
その考えが頭に浮かんだその瞬間、足元に一枚の紙が落ち、
列車が到着する音が聞こえてきた。
すぐに身をかがめ、まるで自分のものであるかのように紙片を拾い始めた。
列車が警笛を鳴らし、近づいてきたことを知らせる音が聞こえた。
絶妙なタイミング!
俺は立ち上がり、最後の一枚の紙を拾おうと身を乗り出している女性を見た。
線路の少し下ったところにある支柱に列車のライトが反射しているのが見えた。
ポ キッ !
振り返ると、女性は履いていたヒールの片方が突然折れて、線路に向かって倒れていた。
思わず手を伸ばして彼女の手を掴んだ。
気がつくと、俺も下の線路に引きずられていた。
最後の瞬間は、対向列車のライトを見つめながら過ごした。
最後の行動は、全く知らない人の命を救おうとすることだった。
最後の言葉は「ええ、たぶん」だった。なんと愚かな最後の言葉なのだろう。
この世で俺がとった最後の行動は、目を閉じて溜息を吐くことだった。
読んでいただきありがとうございます。
私はまだ日本語が流暢ではないので、小説は進行中です。
見逃した間違いがあれば教えてください。
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