第7話 オルフェルの物語 <反撃>
【2026.01/22|文章を加筆修正】
・本話は誤字修正および表現の微調整を行い、戦闘描写と終盤の流れを中心に1,645文字を加筆しました。
森を抜け、オレは草原の先にある遺跡へ辿り着いた。
日差しで熱された石の匂いが、肌を撫でる柔らかな風に乗って鼻を抜ける。
不快ではない。むしろ心を静める、凛とした清潔な香りだった。
黄土色の巨大建造物が、空を突き刺すように層をなして連なり、乾いた土の上に長い影を落としている。
そこには、無機質な歴史に取り残されたような沈黙だけがあった。
オレは、その圧倒的な静けさへ足を踏み入れた。
石畳の隙間に溜まった砂が足裏にまとわりつき、歩くたび薄く土煙が舞う。
見上げるほど巨大な出入り口らしき開口部。
その横に四角い窓穴が並び、住居施設と思しき遺構が奥へと続いていた。
長い年月で角が削れたのだろう。
表面は風化してざらつき、触れれば指先が削れそうだ。
「どれだけの時間が経てば、こんな風になるんだ?」
壁や柱には幾何学文様の名残がある。
そのほとんどは削れ落ち、文明の記憶は静かに摩耗していた。
植生は、地面の端にわずかにしがみついているだけ。
奥へと進むと、巨大な階段が見えてきた。一段一段がオレより高い。
悪魔の脚力で大地を蹴り抜き、重力を嘲笑うかのように段差を一気に飛び越える。
広場に出ても風景は変わらない。
住居施設らしき建物ばかりだ。
「これから、どうするかだな」
円蓋に戻るにしても、オレ単独でコタを倒すのは無理だ。
あの泥の沼地をどうにかしなければ、戦いにすらならない。
広場を抜け、遺跡内を歩きながら思案していると、オレの影が別の影に覆われた。
「おった、おった。簡単に見つかって張り合いないわ〜」
——。
思考が空転した。
心臓が喉の奥まで跳ね上がり、鼓動が耳の奥で一度だけ爆ぜる。
全身の筋肉が意志を拒み、石像のように固まった。
遺跡の静寂を裂いたのは、蝙蝠の翼を持つ鼠の悪魔——オレの兄弟だ。
見上げた先には、羽を広げたまま空中で静止している姿があった。
まばたきすら忘れ、視神経が兄弟に釘付けになる。
何故ここに?
「簡単に見つかって」と言っていたが、オレを探していたのか?
何のために?
ろくなことはなさそうだ。
「……どうしてここにいる?」
「あんさんを追いかけてきたんや。あっ、勘違いせんといてや。心配してとかちゃうで、兄弟を殺したらレベルなんぼ上がるかなって、純粋な興味やで。せやから、痛ぶってから殺すけど勘弁な」
オレの思考が一瞬止まる。
だが次の瞬間、身体が熱を帯び、全身が臨戦態勢に入った。
距離を取る。
理由なんてどうでもいい。
こいつは「殺す」と言った。だから敵だ。
それだけで十分だ。
太陽を背に、頭上高くから勝ち誇った睥睨。
濃紺色の悪魔は、それを鋭い眼光で撥ね返した。
「そや、先言うとくけど、ワイはギネマタを五体倒しとるから、めっちゃ強いで」
軽薄な口調とは裏腹に、その双眸からは獲物を逃さない捕食者の圧が漏れていた。
蝙蝠鼠の左右の掌の上に、シャボン玉のような球が現れた。
高密度の大気の塊が、虹色の干渉縞を浮かべている。
それは滑らかに膨れ上がり、濃紺色の悪魔と遜色ない大きさまで一気に肥大した。
掌から離れ、二つの球体がふわりと宙に止まる。
円環状に揺れる淡い暗斑が影となって落ち、光の縁が滲んでひしゃげていた。
どんな攻撃か分からない。だが、あれから魔力を感じるということは魔法か。
オレは大人しく攻撃魔法が来るのを待つつもりはない。
「焼夷灼質魔焔珠!」
速度重視の灼熱の火球を、シャボン玉の球体へ放った。
「音律干渉珠」
魔法名を高らかに叫ぶ濃紺色の悪魔に対し、蝙蝠鼠は落ち着いた声音で唱える。
火球よりも遅く、二つの球体は地上へ一直線に進んだ。
二つの魔法が衝突し、相殺され——なかった。
——。
驚きで一瞬だけ身体が硬直する。
音律干渉珠が火球をすり抜けた。
「わお! 思考実験の通りや。すり抜けたで」
蝙蝠鼠はほとんど動かない。翼をわずかに畳むだけで、二発の焼夷灼質魔焔珠が体の外側を通り過ぎた。
すり抜けた二球の音律干渉珠が、濃紺色の悪魔へ低速で直進する。
この速度なら余裕で避けられる。
そう思考し、回避に移ろうとした刹那。
眼前の虚空で、二つが同時に炸裂した。
唸るような重低音。大気が壁のように打ち寄せた。
鼓膜の奥でバチンと断裂音が弾け、キーンという金属音が頭蓋を貫く。
視界の輪郭が白く滲み、世界が断続的に明滅した。
耳と鼻からは血が滲み、吐き気と目眩が波のように押し寄せた。
「ふらふらやん。なんや、ダンスでも披露しとるんか?」
平衡感覚が崩壊し、天と地の区別が溶ける。
両膝から崩れ、掌が乾いた地面を打った。
思考の回転が、錆びた歯車のように軋み、回らない。
無理に回そうとするほど、思考の輪郭がぼろぼろと崩れていく。
「周波数90ヘルツ、音圧185デシベル、パルス幅12ミリ秒、指向性120度。これなんの数値かわかりまっか? 実はな、音律干渉珠の共振点を魔力で固定させた際の設計値やねん。すげーやろ。これだけ緻密に弄れるんは、ワイのスキル音律完全統御のおかげやな。しかも任意のタイミングで起爆できるし」
一気に捲し立ててから、自身の鋭敏な耳をピクリと動かした。
「……って、聞こえてへんか」
一拍置いて、蝙蝠鼠の笑い声が遺跡に反響した。
——このままでは殺される。
魔力も上手く練れない。思考が泥のように重い。
それでも、動かなければ。
濃紺色の悪魔は、風に翻弄される落ち葉のようにゆらゆらと上体を揺らしながら、崩れた膝を無理やり押し上げた。
「うそやん、立ち上がるん? すごいやん! あんさん最高やわ〜。ほな、次は何を試そうかな……」
秒が経つたび、思考と身体の歯車が少しずつ噛み合ってくる。
万全じゃない。だが、やるしかない。
「フィ、フィエロ……イグニオ」
掠れた詠唱とともに、震える掌から弱々しい火球が生まれた。
弾くように飛び出すはずの灼熱ではなく、頼りない速度で滞空する蝙蝠鼠へ向かう。
魔力循環が、まだ正常に駆動しない。
先ほどの音響干渉で、神経系と魔力経路の同調が致命的に阻害されている。
「おっっそ! 速度おっそ!」
嘲笑とともに、巨大な蝙蝠鼠が身を翻す。
その体躯に似合わぬ柔軟さで、ほとんど位置を変えぬまま、空中で不自然な角度に体を曲げた。
まるで骨という概念が存在しないかのようだった。
無情にも、焼夷灼質魔焔珠が空を切り、虚空を通り過ぎていく。
「めっちゃおしい。ワイがあと五メートルあんさんの近くやったら当たってたのに。実に惜しい」
掌を叩きながら侮蔑した。
その目は、弱った獲物を観察する学者のように冷淡で、生物としての敬意など微塵も感じられない。
もはや、戦いではなく一方的な検収作業に過ぎないと言いたげだった。
「そやな、次は……この魔法やな」
まだ音律干渉珠の共鳴干渉から回復しきれていない濃紺色の悪魔へ向けて、蝙蝠鼠は、試すように手をかざした。
「虚圧天衝」
無音の衝撃波が、濃紺色の悪魔を正面から蹂躙した。
同時に、周囲の石畳が跳ね上がり、剥がれた破片と砂埃が爆ぜるように噴き上がる。
斜めに叩きつけられた衝撃が地表へ逃げ、足元の石畳が波打つように軋み、乾いた音を立てて砕け散った。
さっきの音とは違う。これは、純粋に殺すための一撃だ。
瞬時に表皮がせん断され、放射状に走る裂溝。
体内へ侵入した圧力波が跳ね返り、臓器を血泥へと攪拌していく。
肋骨と頭蓋骨に細かな亀裂が刻まれ、意識は衝撃の瞬間に暗転した。
身体は宙を転がり、叩きつけられた地面を慣性のまま削りながら滑った。
唇の端から血泡がこぼれ、もはや意思を失った肉体は、ただ神経の混線による痙攣を繰り返すのみだった。
「なかなかの威力やな〜。てか、もはや極上のサンドバッグやん。あんさん」
仰向けに倒れた濃紺色の悪魔を見下ろし、蝙蝠鼠は狂気を含んだ声で笑った。
不快な笑い声で、意識が再び灯り始めた。
視界が戻るより先に、耳の奥を突き刺すような——キーン、という音が脳を支配する。
肺が焼けるように熱い。
無理に呼吸すると、肺の奥で砂利が擦れるような違和感が鳴った。
そして、損傷した体内が再生を開始する。
肉が戻り、骨が繋がり、神経が悲鳴を上げる。
遅れて、激痛が一気に押し寄せ、オレは強引に意識を引き戻された。
「しっかし、あんさん弱すぎるやろ〜。同じ兄弟やのにここまで弱いと、さすがに驚き通り越すで」
腕に力を込め、重力を撥ね除けるように上体を起こそうとする。
だが、痺れが抜けきらず、思うように力が入らない。
一発。たった一発喰らっただけでこのざまだ。
まともに戦っても勝ち目は、ない。
蝙蝠鼠の背後に、コタの頭部が二つ浮いている。
オレと相棒でも勝てなかった相手を、こいつは……。
生きて母さんの元へ戻る。
母さんとは、まだ何も話せていない。
産んでくれてありがとう。その一言すら、まだ伝えられていない。
だから、ここで死ぬわけにはいかない。
だが、どうする。どうやって、
なんの前触れもなく、意識の狭間から突然閃きが爆ぜた。
——この方法ならいける。
あとは、あいつを地面に落とす方法なんだが……。
「次は何を試そうかな〜」
蝙蝠鼠が愉悦に浸った瞬間、遠方で巨大な鞭を振り下ろしたような、鋭く硬い衝撃音が大気を叩き割るように走った。
「……あれは相棒の雷魔法やな。そろそろ戻らんとあかんから、あんさん殺すな」
愉快そうに、蝙蝠鼠は続けた。
「そや、魔法実験付き合ってくれてありがとうな。音律干渉珠は機能破壊が主やって分かったし。止めは、虚圧天衝でええか?」
濃紺色の悪魔は、両膝に力を込めて、地面を踏み締めるように立ち上がった。
「おまえが地上で戦っていたら、オレは負けていなかった。宙に浮いて怯える様は、無様だな」
「おもろいこと言うな自分。挑発してるん? 勘違いしたらあかんけど、ワイは宙に浮いてても地上と何ら変わらん感覚やねん。せやから、空でも地上でもどっちでもええねん。お分かり?」
「よく喋るな。知ってるか? そういうのをな、びびってると言うやねん」
「はあ? なにワイの喋り真似とんねん。喧嘩売っとんか? しかも間違うてるし! 「言うやねん」やなくて、言うねんやし。あほか、ほんまに」
一瞬の沈黙。
次の瞬間、蝙蝠鼠は獰猛に笑みを浮かべた。
「ええやろ。ほな、地上に降りたろうやないか。至近距離から虚圧天衝ぶちかましたる。どんくらい吹っ飛ぶんやろ〜な〜」
空中に静止していた悪魔が、見えない糸を断ち切られたかのように、滑らかに降下する。
地面に両足が触れた。
距離は十メートルもない。
「自分、覚悟しいや」
悠然と歩み寄ってくる。
濃紺色の悪魔の外見上、傷はすでに塞がっている。
だが、臓器が血泥へと攪拌された体内では、いまだ再生痛が燻っていた。
魔力経路も無理やり繋ぎ直したせいで、呼吸一つにも軋みが走る。
気づけば、肩で息をしていた。
短く、思考を巡らせる。
余裕は、思っていた以上にない。
チャンスは、一度きり。
「地上はオレの領域だ。地上に降りた時点で、おまえの負けだ」
「はあ? まだ言うとるんかワレ! 楽には殺さん。苦しましたる」
「フィエロ——」
「また、焼夷灼質魔焔珠かいな。しょ〜もな」
「イグニオ!」
そう発した瞬間。
分厚い筋肉と脂肪が、内側から強引に引き裂かれたような、鈍く湿った音が響いた。
「……えっ」
蝙蝠の翼をもった鼠の悪魔の声が、奇妙なほど平坦になる。
「……なんや、これ。ちゃうやん、これ。なんなん?」
感情の抜け落ちた棒読みのような声が漏れる。
その声色には困惑だけが滲み、現実を脳が処理しきれていない空虚さがあった。
「さすがに、これは予測できなかっただろ?」
岩石の巨槍が、蝙蝠鼠の胸を、背後から貫いていた。
「地嶽隆穿滅絶槍だ」
——成功だ。
これで、確実に仕留められる。
口では焼夷灼質魔焔珠を叫びながら、心の中で地嶽隆穿滅絶槍を唱える。
声音にしないぶん威力は落ちる。だが、意識外の背後からなら十分貫けた。
「フィエロ・イグニオって言うてたんやけ! なにしてくれとんねん!」
オレは応じない。
この機会を逃せば、もう勝てない。
胸から数メートル突き出た岩石の巨槍。その先端へ飛び乗った。
これで終わりと思うな。確実に仕留める。
身動きの取れない蝙蝠鼠の顔面へ、至近距離から両手を突き出した。
「あんさん……なにをする気や」
両の掌へ魔力が圧縮されていく。
「ちょ、ちょ、待って。ちょ、待ってって——」
赤黒い光が滲み、灼熱の土石が形を結び始めた。
魔力の密度が跳ね上がる。
土石はさらに肥大し、熱を孕んで脈打つ。
悲鳴を上げる敵の口へ、マグマ化した土石を力任せに押し込む。
空気が震え、青白く電離する。
歪んだ空間が、軋むような悲鳴を上げた。
自己再生を繰り返す蝙蝠鼠。
だが、再生速度はついに追いつかなくなる。
炎の温度はすでに四千度を突破。土石はボウリング玉ほどの熱塊へと完成していた。
もう、悲鳴は聞こえない。
頭部も溶け、もはや本来の形を成していない。
苦味のある刺激臭と、脂が焦げたような嫌な臭いが、鼻腔を焼く。
「焼夷灼質魔焔珠!」
だめ押しで、灼熱の火球が焼け落ちた口腔の奥から、体内へ突き進む。
途中、岩石の巨槍に阻まれ、その場で燃え続けた。
傷口から黒煙が立ち上り、内部から爆ぜるように燃焼が走った。
そして、上半身が一気に燃え始めた。
下半身は、遅れて内側から焼け落ちていく。
「終わっ、たあああ」
安堵とともに、力が抜けた。
巨槍の先端から足を滑らせ、地面に身体を打ちつける。
ゼロ距離で放った反動だ。
顔と両腕は炭化し、皮膚の感覚が曖昧になっている。
また、あの再生痛がくるのか……コタに握り潰されたときに比べれば、まだマシか。
仰向けに倒れ、四肢を投げ出し天を仰ぐ。
「もう、無理だ。魔力が残ってない」
青空を見上げ、独り言をこぼした。
強烈な虚脱感が押し寄せ、身体は鉛のように重く、指一本すら動かせない。
魔力が尽きたせいだろう。
蝙蝠鼠の体内に放った火球の魔法は、自然と解除されていた。
これが、魔力切れの弊害か。
それにしても、焼けた鼠の臭いがひどい。どうにかならないのか。
「余の相棒を屠ったのは、貴様か?」
低く、威厳に満ちた声が場を支配した。
……嘘だろ。もう、いい加減にしてくれ。
軋む身体を無理やり起こし、視線を向ける。
そこに立っていたのは、青緑の鱗に覆われた強靭な肢体。
赤褐色の顔、その瞳の奥に底知れぬ理性を湛えた人型のドラゴンだった。
「余が質問をしている。答えぬとは不敬な奴よ」
なんの前触れもなく、濃紺色の悪魔のいた場所へ、雷が落ちた。
石畳が弾け、破片が宙を舞い、濃い砂煙が一気に噴き上がる。
視界が塞がれる中、人型のドラゴンは魔力感知を行った。
「……いない。吹き飛んだか」
そこには、濃紺色の悪魔の気配はなかった。
だが、その奥の数メートル先に、小さな生体反応と、わずかな魔力の揺らぎがあった——濃紺色の悪魔のものだ。
「で、貴様は、誰だ?」
砂煙がいまだ滞留している。
「煙が晴れてから名乗るよ。顔が見えないままの挨拶は、礼儀に欠けるだろ」
「うむ、貴様の言う通りだな。だが、残念ながら余には名前がない」
「それじゃ、僕だけが名乗るよ。それでいいだろ?」
「そうやって時間を稼ぎ、その間に下等な者を逃すつもりか」
やがて砂煙が引いた。
現れたのは、黒髪に鎧を纏った男だった。
濃紺色の悪魔より、頭ひとつ分ほど背が高い。
「……貴様、人間か?」
「そうだよ、僕は人間さ」
男性の目尻に皺がより、瞳が柔らかな三日月を描く。
春の陽だまりのような柔和な笑みだった。
声の旋律にも角はない。
人間の背丈は、人型ドラゴンの膝上に黒髪の頭部が届くほどしかない。
その圧倒的な体躯差を前にしても臆することなく、気心の知れた幼なじみと相対するような雰囲気を纏っていた。
「ふむ、スキル体ではなさそうだな」
人型のドラゴンは、以前見た記憶をたぐり寄せる。
ギネマタの遺体を運んでいた、ペンタードのスキル体かと思ったが、違うようだ。
余の知識では、野生の人間など存在しないはずなんだが。
「人間はキャラメル王国を貶める邪悪な存在。故に、余がじきじきに貴様を屠ってやろう」
目の前の害虫を駆除する前に、その生態を観察するかのような、残酷な視線が人間を射抜く。
人型ドラゴンの周囲で、大気が歪み、揺らめいた。
高密度の魔力の奔流が迸り、遺跡の石畳に無数の亀裂を走らせ、容赦なく砕いていく。
「その後に、あの下等な者を屠る」
人間の男性は、背後へ視線を走らせる。確認は一瞬で十分だった。
よろめきながらも、たどたどしい足どりでその場から逃げる濃紺色の悪魔を見る目には、案じる色が浮かんでいた。
「悪いけど、彼は殺させないよ」
「そうか。魂喰い」
……。
「なぜ、魂が奪えぬ!? ありえぬ。もしや、貴様アンデッドか?」
「失敬な。僕はれっきとした人間だよ」
「ならば——」
「遅いよ。君、もう僕に斬られてるよ」
気づけば、人型のドラゴンの目前に、剣を携えた人間が立っていた。
剣先は、すでに振り下ろされた後のように、静かに地面を向いている。
次の瞬間。
人型ドラゴンの胴体の中心に、一本の切れ目が走った。
遅れて、その巨体は左右に分かれ、鈍い音を立てて地面へと崩れ落ちる。
「冷や汗をかいたよ。なんて恐ろしそうなスキル名なんだい」
額の汗を拭う仕草を見せ、男は剣を静かに鞘へと収めた。
「あっ、そう言えば名乗り遅れたね。僕の名前はオルフェル。しがない勇者さ」
返事もない亡骸に向かって、そう語りかける。
濃紺色の悪魔は、壁に手をつきながら、足を引きずるように逃げていた。
あの人間が囮になっている間に、少しでも遠くへ。
とにかく、今は……。
曲がり角だ。あの先を曲がって……。
魔力切れの影響だろう、虚脱感が思ったよりもひどい。まともに歩くことすらできない。
視界の端に、何かが映った。
遺構の居住施設らしき出入り口。
その奥の闇から、口を大きく開けた巨大な金魚が、ぬうっと姿を現す。
——魔物!?
次の瞬間、視界が暗闇に塗り潰された。
そして、オレは魔物に喰われた。
本来本日の朝06時に投稿するはずが、執筆に時間がかかり、ようやく書き終わったのでこの時間帯に投稿。
音の魔法に時間がすごいかかってしまった。
OpenAI o3 、OpenAI o4 mini、ChatGPT5.2、音の魔法に関する周波数やパルス幅などを調べてたら、時間がどんどん過ぎていってしまった。途中で諦めて妥協。魔力が関わってるからその数値で、その威力におさまった。
バイノーラルビートを使った音魔法も考えたけど、調べ理解するのに時間がかかり過ぎて、没。
もっとこだわりたかった……。考えてたら楽しくなり過ぎて。
今回も後半の描写が雑になってしまった。
今日の夜か明日以降に、文章を整えたら修正しようと思います。
ちなみに、前回第6話に登場したキャラのイメージ画像をBLOGにUPしました。
ご興味あれば、覗いていただければ嬉しいです。
https://gjuonji0221.blog.fc2.com/blog-entry-30.html




