恋の終わり
「で…?」
ホットココアの甘さが身体に染みる。朝のニュースで今季一の寒さだと言っていた。
冬は始まったばかりで、そんな悲しいことを後何回聞くことになるんだろう。
目の前に座る美玖は、もこもこのパーカーを着ていてとても暖かそうである。
うらやましい。
「で、どうしたの?」
美玖の再度の問いかけに、里美はココアから視線を上げる。
「別れた」
声は震えていないはずだ。
目元が熱くなる。
ごまかすように、口元に笑みを作った。
「啓太、忙しいんだって…」
啓太は最後まで優しかった。
大学を先に卒業して忙しくなっても、週に1回は会っていた。
後輩が入ってきたと聞いてから暫くして、会う頻度が週に1回に減り、気が付けば月1回に減っていた。
来年卒業を迎え、論文に追われていたのが悪かったのだろうか。
「里美、気にすんな。男なんて他にもいるって。」
明るい美玖の声に、言葉は返せなかった。
世の中に男はいっぱいいる。
でも、私は啓太と一緒に居たかった。
たわいのない会話も、つなぐ大きな手も、くしゃっと笑う顔も好きだ。
未練がましいとわかっているけれど。
ココアに口をつける。
それは、さっきより冷たくなっていた。
お読みいただきありがとうございます。
恋はいつか終わるもの。
里美は啓太に未練たらたらです。
最後まで優しいとか、優柔不断なだけだと思います。