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第六話 怪物との戦い

 翌日、ブラックの呼びかけで、スチュアート王国中に暮らす海賊たちが集まった。


 集まった大勢のスチュアート王国で暮らす海賊たちは、ブリテン王国の特使であり、ブラック以上の実力者であるあたしがクラーケン討伐に協力する代わりに、クラーケンを討伐したらあたしとブリテン王国に従ってくれることを約束してくれた。海賊としての誇りを持ち、ブリテン王国や、ただ力を持つだけのあたしに従いたくない者も中にはいただろうが、この条件を全員が飲んででもクラーケン討伐にあたしを協力させたいというのは、よほどクラーケンという存在のせいでこいつらの生活が切羽詰まっていると言うことを意味していた。ここであたしがこいつらをブリテンの仲間に引き入れるためにここに来なければ、困窮を極めたこいつらが徒党を組んでいつブリテン王国の港や船を狙って大規模な略奪を行ってもおかしくないといった状況であったため、ブリテン王国にとっては本当に間一髪といったところだ。そして同時にそれは海で暴れているというクラーケンという化け物がそれだけ強大な敵であると言うことも意味していた。


 とにかくこいつらと共にクラーケンを倒せば、無事この国の海賊たちは皆あたしに従ってくれる。つまりそれは、クラーケンを倒せばあたしの任務が完了することを意味していた。なんにせよ、スチュアート王国中の海賊たちを探し出して一人ずつ仲間にする手間が省けたのだ。


 我らが海賊たちの船団の構成は中型の漁船を戦闘用に改造したいわゆる海賊船3隻、人数は50人を優に超えているだろう。しかも構成員は皆、海賊業の経験がある、つまり戦闘経験のある人材でこれはなかなかの戦力だろう。


 ブラックの持つ最も大きな船に乗り、目的地へ向かう途中あたしはクラーケンが死角から現れて不意打ちをしてくるかもしれないと警戒していたが杞憂に終わった。ブラックの案内のもと目的の場所につくと、一目でクラーケンがそこにいることが分かった。あたしが乗っているブラックの船は、この船団の中でも最も大きい船なのだが、それをすっぽり食べてしまいそうな巨大な口、そしてその口を中心に生えている八本のタコの足が、もがくように暴れており、荒波を立てている。どうやらクラーケンは頭を下向きにしているらしく、船の上からではその目を拝むことはできない。ブラックの話によると、クラーケンがどこからここに来たのか、なぜ暴れているか見当はつかないが、ここを離れないらしい。


「なんかあいつ、苦しそうだな」


 とあたしの隣に立っているウィルが、暴れるクラーケンを見てそうつぶやいた。クラーケンは神話上の生き物だ。普段どこで暮らし、何を食べているかなんて恐らくこの世界の誰も知らないだろう。もしかしたらここ数百年の間でその姿を目撃したのはあたしたちだけかもしれない。だがとにかくここは《《潮目》》といういわゆる格好の漁業ポイント。こんなバカでかいのがどんな理由があれ、ここで暴れていては海賊たちは漁ができない。もちろん殺すことが出来ればそれでいいのだが、もし殺すことが出来なくとも、少し脅してこのバケモノ(クラーケン)をここから追い払えばそれで十分だ。手早く終わらせよう。


 あたしが手を上げて合図をすると、海賊の中で魔法の腕に長けたものが杖を片手に船の先頭に出て、魔法を放つ準備を始める。それを確認したあたしは攻撃開始の号令をかけた。

「攻撃開始!撃てーーーっ!」


 あたしの号令とともに海賊たちの放った魔法の弾がクラーケンめがけて放たれた。

 凄まじい爆発音とともに、弾丸がクラーケンに命中し、周りに大きな波が起きた。ダメージがあるかどうか目視で確認することはできなかった。しかし次の瞬間、クラーケンの巨大な足のうちの一つが、その数倍もの長さに伸びたかと思ったら、あたしの乗る船のすぐ近くに振り下ろされた。その巨大な足が水面にたたきつけられたことによって巻き起こる荒波に、木の葉のように制御を失って暴れる船から皆は振り落とされまいと必死に船にしがみつく。予想はしていたが、やはり一筋縄ではいかない相手のようだ。


「お前たち、その距離からの魔法攻撃は無意味だ!標的に接近しろ!邪魔な足はあたしが何とかする!」


 あたしは大きな声で後ろの海賊たちに指示を出すと、一人木の板に飛び乗り、水の支配者の力で加速して水面の上を矢のように滑りクラーケンの方へと高速で接近した。しかし高速で接近するあたしめがけてクラーケンの巨大な足が振り下ろされる。


水の支配者(アクア・マスター) 水の障壁(アクア・バリア)!」


 水の支配者で作り出された水の壁があたしに振り下ろされるクラーケンの巨大な足からバリアのようにあたしの身を守り、クラーケンの足を弾いた。


水の支配者(アクア・マスター) 水槍(アクア・ランス)!」


 すかさずあたしはクラーケンに向かって魔法を放つ。魔力で生み出された水が鋭い槍へと形を変え、まっすぐクラーケンの口へと放たれた。しかし手ごたえはほとんどない。これでもダメなのか。だとしたら最後の手段は近づいた海賊の奴らと協力した一斉攻撃、これに賭けるしかないだろう。しかしそのためには海賊の皆が船でクラーケンに近づいてこれるようにこいつの注意を引きつけなければならない。


水の支配者(アクア・マスター) 流水の刃(アクア・グラディウス)!」


 あたしは、あたしを狙うクラーケンの足に狙いを定め、手から巨大な蛇のように伸びた流水の刃をたくみに操り、それを斬りつける。クラーケンの足は伸びたり縮んだり狙いにくいが、流水の刃で足を傷つけられたクラーケンが足を縮ませていることから、確実に効果があることは間違いない。ひたすらに攻撃を加え、クラーケンの動きを封じる。逃げ回って注意を引きつけるよりはるかに効率のいい方法だ。これならいける、あたしはそう確信した。


 しかし攻撃に夢中になっているあたしは、自分が知らぬ間にクラーケンの足に包囲されていることに気づかなかった。そしてそれに気づいたときにはもうすでに手遅れだった。クラーケンの足があたしの体に巻き付き、あたしの動きを封じてしまったのだ。


「くそっ!まずっ…」


 抵抗する間もなく体を絡めとられたあたしは、そのまま海の中へと沈められてしまった。


「ゴボボボボッ…ガハッ…」


 顔が水中に浸かったことに気づき、そのことがあたしの脳裏に《《あの光景》》を思い出させ、そのトラウマがあたしを恐怖に陥れる。そしてその恐怖のあまり冷静な判断能力をあたしは完全に欠き、水の支配者(アクア・マスター)の力を行使することを完全に忘れており、必死に手足をばたつかせて無駄なあがきをしている。


「まずいっ…息が…」


 海底の奥底に何かがキラリと光るものが一瞬見えた気がしたが、意識がどんどん遠くなり、次第に視界が青白い光に包まれていく。息ができないことの苦しさはどんどん薄くなり、数多の感覚という感覚がすべて消えていった。


「フラン…君は…」


 意識が消えそうになる直前…あたしの脳内に誰かの声が聞こえた。男の子の声だ。そしてその声の主をあたしは知っていた。あたしの大切な…大切な人…。


「アル…君…」


 そう言ったのを最後にあたしの意識はそのまま闇の奥へと消えていった。

 

読んでくださり本当にありがとうございます!


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