第9話 感想戦と夢の始まり
――ストンっと、ミカはカバンを下ろし大きく息を吐く。
俺は作り置きしていた麦茶を、冷蔵庫から取り出しミカに差し出す。ボトルに直接口をつけ、満タンのボトルを一気に飲み干した。
「うう、寒っ」
「着替えて来いよ、汗で冷えちまうぞ」
「う、うん」
ミカは千鳥足になりながら、着替えを取りに部屋に戻った。
残されたのは俺と、俺の帽子を抱きしめてうなだれる細井さん。
「ごめん……おっちゃん……」
「ああ」
そうたった一言。俺は隣の席に座った。
「オレ、負けてもうた……おっちゃんと一緒やったのに、2人で戦っとったのに!」
「ああ」
コマンダーVSは、ドローの数も提示される公開情報も多い。
いわゆるガチゲーってやつは、負けに言い訳が出来ない。負けたらゲームそのものから「お前は弱い」と突きつけられる。まあ半端な奴は心が折れるわな。
「ホントごめん……オレおっちゃんの顔に泥塗るようなことしてしもうて」
「……逆だ、俺のせいで負けた、俺がこのゲームを理解しきれてなかったから」
「ななな、なに言うとるん! おっちゃんが作ったゲームやのにそないな!」
細井さんの暴発気味の攻め、あれはどう見ても俺の影響が大きい。
俺は雑頭だから、手札を覚えたりドロー運を計算したりに手を抜くことがよくある。それをごまかすために、ユニット主体のビート戦術を採用する事が多い。
「1ターン目に、キビツヒコを捨てたでしょ。あれ悪手だよ」
「ミカ」「Kちゃん」
俺が少し考えこんでいると、ミカが服を着替えて戻ってきた。
「え、そうなん? 効果にコストがかかるのに!?」
「お、おう、俺も手札にきたら絶対捨ててたのに」
「あのときキビツヒコを出していれば除去札を1枚温存できてた。それがあればボクの最後のライフを奪えてた。違う?」
俺達は脳内で盤面を再構築し、「あ!」っと同時に叫んだ。
「いきなりアイン・ソフ・アウルを捨てたのも良くないね。除去を攻撃札と考えれば、あれはライフ5点以上の価値があるんだからね」
俺達は脳内で盤面を再構築し、「あ!」っと同時に再び叫んだ。
俺は自分のゲームでありながら、まったくそのゲーム性を理解していなかったのだと痛感した。こんな頭脳を参考にしたら、細井さんが負けるのも無理はない。
「悪い、俺が雑頭なせいで……」
「いやいやオレのせいやで、プレイしとったんはオレやし!」
俺は申し訳なさと情けなさで、それ以上何も言えなかった。
そして俺は白紙の紙をチョキチョキ、手頃なサイズに刻んでいく。
「何しとるん?」
「次だ次! 下手の考え休むに似たり、コマンダーVSは俺と相性が悪い!」
「けど、エースオブワンもまだ途中辞めやし、これ以上増やすん!?」
「ん! むむむぅぅ」
俺には目標にしてる事があった。ゲームを1つは完成させて、それを知り合いの店で対戦会を開こうという目標が。そのためにはカードの種類はもっと欲しいし、遊びやすいように環境の整備もしないといけない。
けどゲームをもっと作って、一番面白い物を遊んでほしい気持ちもある。
「むむむむぅぅぅ、く!」
「じゃあさじゃあさ、このゲームの続きはボクに任せてもらえないかな?」
「コマンダーVSを? ミカが? ……よっし、任せた!」
「やったー!」
俺は一瞬考えて、ミカに全てを託すことにした。
俺よりゲーム理解度の高いミカに任せたほうが、いいゲームができると思った。
「せやせや、だったらオレとおっちゃんは新しいゲームどんどん作っていくいうんはどうやろ?」
「おいおい、さっきエースオブワンの心配してたやつのセリフかよ」
「それなんやけど、さっきのキビツヒコみたいに違うゲームから引っ張てくるのはどうや? 10個ぐらいゲーム作れば、使えそうなカードをかき集めて1個のおもろいゲームになるんちゃう? どない?」
…………え、ありなのか、それ?
確かに金のないガキの頃は、いろんなカードを1つにまとめて遊んだこともあった。最近じゃメーカー同士がコラボカードとして、人気カードをお互いのゲームに登場させてたりする、その辺を参考にすればあるいは……。
「よし、やるか!」
「おう、やったろうやないか!」
「え、本当にそこまでやるの?」
「目指せ対戦会だ。俺達のゲームで会場を大盛り上がりにさせてやろうぜ!」
「え、本当の本当にそこまでやるの!!?」
明日が休日な事も相まって、俺達3人は夢中でゲームを作り続けた。3人でアイディアを出し、紙にテキストを書き込み、対戦を何度も繰り返す。
時間は飛ぶように過ぎ、気が付けば日曜の朝を迎えていた。
―
―――
―――――
「ふふふふふ、はははは……ハハハハハハハハハハ!
ヤバい、やっぱ俺、天才だったわww」
「おっちゃん流石やわ、マジ神っとる!」
「うんうん、これなら絶対成功間違いなしだよ、結婚して!(してる)」
俺は、完成したデッキを手に高笑いを続けた。
―――――
―――
―
「zzzzzzz」
「おーい、おっちゃん、朝ごはん出来とるで」
「細井さん、もうちょっと寝かせてあげようか、遅くまで頑張ってたみたいだし」
「せやな」
俺は、随分と幸せな夢を見ながら朝を迎えていた。
「ととと、その前にテーブル片づけんとって、あれ?」
「どうしての?」
「kちゃん、これ」
これが、後に日の目を浴びる事になるカードゲーム。
・Xーユナイト
・ダンジョンマスターG
・トレード・トレーナー
誕生の瞬間だった。
――第2章 完――
少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。




