第7話 ルーティーンと番外戦術
「対戦前にデッキの中、確認させてもらうで」
「いいよ」
「おおきに。おっちゃん、デッキは両方同じ?」
「あ、ああ」
細井さんは、デッキを机に並べて内容を確認する。
これは彼女の癖なんだが、長考中や集中力を高めるときには必ず右の人差し指でテーブルの端に繰り返し十文字を描く。今それをやるって事は、ガチでミカに勝とうとしてるってことだな。
「ん? あれ? おっちゃん、なあこれ」
「ん、なんか問題か?」
「あかんやんこれ、違うゲームのカードまざっとるやん」
長考を一旦切り上げた彼女は、カードを数枚俺に見せる。
そこにあったのは、前回のエースオブワンで使用されたカード達だった。
俺は床に膝をつき――――――――そして深々と頭を下げた!
「すまーーーん!! ネタ切れなんだァァァ!!! 2作目にしていきなりカード使いまわして本当にすまーーーん!!」
「さよか、ミスやないんやな」
俺の渾身の謝罪を短く切って捨てた細井さんは、再び長考に入った。
てっきり手抜きしたことを怒ったんだと思ったが、どうやら違ったらしい。
「ふぅ~~~……」
「終わった?」
「まだや。おっちゃん、借りんで」
「あ、俺の帽子……」
今度は壁に掛けてあった、俺の帽子を手に取った。細井さんには少々ぶかぶかなそれを頭にかぶると、再び長考に入る。十字を描くスピードがより忙しなくなる。
「ねえ、部屋からボクのカバンとってきて良い?」
「え!? あ、おう……好きにしな」
ミカは俺達の部屋にいったん戻ると、妙に馬鹿デカいカバンを背負って戻ってきた。中には各種カードにスリーブにプレイマット、サイコロやおはじきに至るまで対戦に必要なありとあらゆるアイテムがそろったミカの大事な相棒だ。
そして、大会同様の緊張感と集中力を引き出すためのバフアイテムでもある。
「本気……なんだな……」
「勝ちたいからね」
両者、対戦前の準備が整ったところでスタートの合図を切る。
熾烈なジャンケン対決を制した、細井さんが先行でスタートした。
「オレのターン、ドロー! 2枚引いて、手札からこいつを墓地へ」
手札をドローし、不必要なカードを一枚捨てる。
捨てられたのは『海軍総司令キビツヒコ』のカード。エースオブワンから俺が使いまわした1枚が、さっそく登場した。こいつは破壊効果を自在に操る攻防一体のカードで、以前は4枚使い切るほどのカードだった。
しかしユニットの起動効果発動がアクションを消費するコマンダーVSの世界では、コストがかかる割に戦力にならない無用の反物と化していた。
(すまんキビツヒコ)
「オレは『筋肉竜 サニー・サンシャイン』を召喚。先行の攻撃は1回だけ、そのまま攻撃!」
「1体でいいの? 攻撃は出来ないけど盾にはなるよ?」
「迂闊にはいかんよ、あれがあるからな……」
「だよね、あれがあるもんね」
アイン・ソフ・アウル
魔法カード
追加コスト:手札を1枚捨てる。
時間を停止したうえで、場のユニット全てに5の確定ダメージ。
2人が口にする、あれである。
絶対防御不可能の全体火力、現カードプールに置いてこれを耐えられるユニットはいない。そのためいかにこれを効率よく打たせるか、打たせないかが勝負のカギを握る(ゲーム性になっててほしいと俺は願ってる)。
「ボクのターン、ドロー」
サニーの攻撃を受け、ミカのライフは10→7へ。
特に気にする様子もなく、ドローからメインフェイズ。
帝王 ディアーク=ゾ・バルディッシモ
種族:ゴブリン、王
戦闘力:5
打点 :0
[和平交渉]
敵ユニットが攻撃した時、それを無効にし相手はカードを1枚引くをターンに1度だけ行ってもよい。
ミカは容赦なく、ディアークを含め全力の3面展開。
攻撃と防御バランスの取れた盤面を作り出す。
「さて、サニーは復活能力があるからね、ここはあえて倒さないでおくよ」
「しまった! これでアウル打ったら、サニーが巻き込まれてまう!」
ミカはディアークをサニーの正面に配置、サニーのマーカーを外しにかかる。
ディアークは打点0で詰めに使えないのが難点だが、そこを除けば強力なカードだ。スキルである和平交渉も誘発能力のため、アクションを消費しないのも心強い。
「まずはディアークで攻撃」
「……くく、かかったな! 『塩漬け ハードディスクキャノン!』」
細井さんはここでアクションを使用、敵ユニット1体に5ダメージを飛ばすカードを使ってディアークを迎撃! サニーへの攻撃を防いだ。
「ふふぅん、大技ばっかし警戒しとると足元救われんで」
「そうだね」
ガチモードのミカは、あまりにもそっけない。
目の前の盤面はすでに過去の話、ミカは次の手をすでに考え始めているからだ。
「攻撃」
「2点、もらうで」
細井さんライフ10→8
打点の低い2体の攻撃をスルーして、再び細井さんのターン。
――シャッシャ! とリズムよく細井さんの指先が躍る。
細井さんはカードを引き、手札から1枚を墓地へ送る。
ここで墓地に送るのは、今後不要と判断されたカード達だ。しかし、それらは立派な公開情報、下手なカードを捨てれば相手に手の内がばれてしまう(みたいな読み合いが発生してほしいと俺は思っている)。
「な!?」
その捨てられたカードを見て、ポーカーフェイスを決め込んでいたミカの鉄の仮面が崩れる。
捨てられたのは、なんと切り札の『アイン・ソフ・アウル』!。
俺は思わず、手札をのぞき込みそうになり顔をそむけた。
視線の先には、不敵に笑う細井さんの瞳があった。
「Kちゃん、悪いけどあんたの旦那さん借りるで」
「それを待ってたよ――――こい!」
「え、俺!? 何かやんなきゃダメなん?」
続く
今回登場したユニット、帝王 ディアーク=ゾ・バルディッシモは過去作
『暴力系ヒロインが、俺のチートの源です』からのゲスト出演になります。
こちらもお楽しみいただければ幸いです。
https://ncode.syosetu.com/n0142ef/14/




