第43話 ヤマツミの試練②
大河村名物、山狩り。
とどのつまり、鬼ごっこである。
『おおっと! 今度は学校のグラウンドに出現だー、みんな急げー!』
「げげ、中身はポテチかや~」
「こっちには饅頭3個」
ヤマツミ役の後を追いかけて、行く先々に放り捨てられるプレゼントを拾い集めるイベントだ。
大当たりはヤマツミの札。
街で商品券として使える代物だ。
「札よこせ札ー!」
「こっち逃げたぞ、追え追えー!」
『はいはい、そこストーーーップ!! 立ち入り禁止です下がって下がって!』
ヤマツミ役達は交代を挟みながら、街の隅々まで回っていく。
「まいど、これお茶とおむすびや」
「タオルもどうぞ」
「あ~~~しんどぉ~~~」
「では次、行ってまいります」
パフォーマンスを交えながらの全力疾走、訓練の積んでいなければやり通すことは不可能。
……なのだが。
『おおっと! 柊選手、ここでペースアップだーー!!』
「なんでお前はついてこれるんじゃぁぁーーボケーーー!!!」
マイク片手に柊を追い回す、猫耳メイドのコハクさん。
面白そうだからと、実況役を買って出ていた。
『何を隠そう我々は、学生時代はチアリーディング部所属!』
「関っ! 係っ! あるかぁぁ!」
『ええーだってだって、飛んだり跳ねたり大変なんだよチアって』
足の指で木の枝につかまり、逆さになりながら答えるコハクさん。
「あのー、もう休憩ですか? 誰も周りにいませんけど」
そんなコハクさんのさらに頭上から、飛び降りた小鳩。
背中にはプレゼントとは別に、巨大なリュックをしょっていた。
「おう急ぎすぎてな、追手が追いつくまで待機じゃ」
「そうなんですね」
「……ところでそのかばん、何が入っとるんじゃ? 弁当か?」
「これはですね」
と言って取り出されたのは、カードの山。
タイトルごとに、Tier上位から下位までのデッキ、トレード用保存用のバインダー、スリーブとオバースリーブ、破損したとき用の予備のスリーブ、プレイマット、コイン、サイコロ、ポイントマーカ、ライフカウンター。
「あと握力計と鉄アレイ2つです」
「なんでじゃ!」
「使うんですよ対戦で。筋トレビートダウンってデッキがあるんですけど、鍛えた筋力に応じてユニットにバフがのるんですけど、そのデッキが窃盗コントロールのメタになってまして、窃盗コンは相手のカードを奪うデッキなんですけど、奪われた筋肉ユニットの効果を強制発動させて相手を筋肉痛にして棄権させるデッキなんです」
「…………お、おお。いやいやいや、部屋において来ればよかろう」
「えー、だって誰かに取られるかもしれないし」
「おーーーい!!」
少しすると、走り迫ってくるカナメの姿が見えた。
「たくっ、客を置いてけぼりにしてどうすんだ。予定変更、次のポイントに移動してくれ」
「そんな! ごめんなさい、走るのに夢中で」
「いいんだ。それよりヒイ子、もう十分だろ。もうミカの実力は分かっただろ」
「むう。いんやまだじゃ! 次は持久力を試させてもらう、小鳩よ次のポイントまでついてまいれ」
「えーまだやんのかよ。無理すんなよミカ、途中で降りても『大丈夫大丈夫、チア部だから。ご来場の皆様方、次は! えーっと?』ここ『そうです、こっちのお店の前に集合なのです!』」
実況マイクを支持棒代わりに、次のポイントへと先導していくコハクさん。
やってきたのは、とある喫茶店。
「ようようこれはこれは、要役の奥様ではございませんか」
そこは事の発端となった瘦せ型の老人、土盛が営む店だった。
土盛は店のエプロン姿で、にやにやと笑みを浮かべながら近寄ってきた。
「やるじゃねえか嬢ちゃん! 見てたぜ全部、あんたぁ最高だぜがはは!」
ぐわっと小鳩の肩を組み、上機嫌に小躍りする土盛。
「おおっと」っと手にしたコーヒーを危うくこぼしそうになっていた。
「お、おじゃまします」
「おうよ、じゃましてけじゃましてけ。まだまだあんた走るんだろ、ほれ」
土盛が差し出すコーヒーを受け取る小鳩。
それは砂糖とミルクたっぷりなうえにバニラアイスが添えられた、疲れも火照りもぶっとばすような代物だった。
「……さっきはすまなんだ、嬢ちゃん」
「さっき……ですか?」
「最近の若いのは根性がない。そもそも仕事をこなせる体力がねえ。田畑を任せてもすーぐ音を上げて帰っちまう。あんたもそのたぐいだと思ってたんだけどさ、どうやら違った見てえでよかったよ」
「いえいえボク……私もまだここにきたばかりで、この先どうなる事か」
「それを見極めるための試練さ。大丈夫、知識や技術は後からいくらでも教えられるさね、一番大事なのは」
そういって土盛は、自身の胸をドン! っと叩いた。
「一番大事なのは心さね」
土盛特製激アマコーヒーを、おかわりして3人は店を後にする。
「あともうひとっ走り、頑張んな」
「はい!」
「そうだ、俺野の小僧はあんたの友達かへ?」
「俺野君? はい、そうですけど」
「そうかそうかなら奴に礼を言っときな、次の待機場所は奴が管理してる田んぼの見張り小屋だ。目印があるから行けばすぐわかる」
行けばすぐわかる、と。
最後の走りを終えてミカを待っていたのは、巨大ロボット……型の案山子。
俺野バン作のオリジナルキャラクター、正義超人オレノバーン人形があった。
小鳩はそれを軽くスルーした。
ミカが試練を受けるさなか、カナメも試練を受けていた。
三蛇の頭落とし。
祭りの火を人々がぐるりと囲み、試練の舞台が整った。
「「いちぃぃの首ぃぃ! やああああ!!!」」
村の血気盛んな男達が、蛇を模した長縄を引きずり現れた。
「「にぃぃぃの首ぃぃぃ! やああああ!!!」」
一の首とよく似た長縄が、新たに引きずられて現れた。
「三の首! やぁぁあ!!」
最後の三の首を、カナメが手にして現れた。
最後の首は、他の首と比べて細く短い。
「「「「始めぃ!!!」」」」
男達が、一と二の首の頭と尻尾をそれぞれ握りしめ、ぐるんぐるんと振り回し地面へと勢いよくたたきつけ始めた。
カナメもそれに合わせ、自身が持つ三の首の頭を右に尻尾を左手に握り勢いよくまわし始めた。そして勢いよく回る一の首二の首へと駆け込んでいった。
三蛇の頭落とし。
すなわち大縄跳びである。
長縄は村民達の手で綯われたもの。その長縄が地面に打たれほどけるまで飛び続けなければならない。昔の人々はこの縄の出来栄えで、一年の運勢を占ったのだとされている。
「ふぅ、今回のは随分脆かったな」
『ふっはっはっはっは! 盛り上がっておるようじゃのう下民どもよ』
「おっヒイ子達の方も、終わったのか」
『名残惜しいが祭りもこれで最後の演目、今日はスペシャルゲストの登場じゃあ!』
「ゲスト? 聞いてねえぞそんなもん」
舞台裏で、一息入れていたカナメ。
ひょいと顔をのぞかせると、舞台上にはヒイラギとそして小鳩の姿があった。
『瞬発力、持久力、そして最後、記憶力。この最後の演目『トンボ合わせ』でわしと勝負じゃあ!』
続く
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