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第41話 ヤマツミの神業

 収穫祭開始からしばらく、祭りの場にミカが姿を現した。

 太陽は沈みかけ、肌寒さを感じ始めるたところだった。

 俺は、ヒイ子達ヤマツミが舞う舞台の袖を離れミカを迎えた。


「えええっと、どもども初めまして」

「あなたがキングKの言ってたテイオーさんですね」

「すごい強いって聞きました。ぜひともお手合わせを」


 俺は顔を出すや否や、ミカのショップ仲間達に取り囲まれた。


「総員、解散!!」

「なんだよ俺野、せっかくのチャンスを」

「先生はまだ仕事があるんすよ、いったん解散」

「えーいいじゃんいいじゃん、ね、一回一回だけ」


 俺野がショップ仲間を必死に押しとどめようとしてくれているが、多勢に無勢で手に負えない様子だった。


「分かった、バトルの相手になってやる」

「マジっすか!?」

「よっしゃあ!」

「ただし、俺の弟子達に勝てたらな」


 そう言いながら俺は、細井さん長井さんに連絡を取る。

 参加証のうちわとお面を配っていた2人は、持ち場をカズマに任せてやってきた。そしてなぜか、バトルの気配をかぎつけてきたシュンカとシュウト達もやってきた。


「こいつら2人に勝った奴から俺んところにこい。相手になってやる」

「テイオーさんのお弟子さんか、ワクワクしてくるな。よろしくお願いします」

「いや、そいつらはなんかついてきた奴ら。お前らの相手はそっちの2人」


 シュンカとシュウトを対戦相手と誤解していたようなので、きちんと修正し細井さん長井さんと向い合せる。


「えー女の子じゃないっすか。オレオレ、時間稼ぎならオレが引き受けるっす」

「下がってなバン、2人の実力はお前以上だ横で腕を見せてもらえ。あとシュンカとシュウト、事情は察してくれたな、こいつら全員のデッキとプレイング見てやってくれ」

「おう、お前への時間稼ぎすりゃいいんだな」

「ああ、実りある時間にしてやってくれ」 


 この場を、シュウト達に任せて持ち場に戻ろうとすると……。


「ヒッタクリよヒッタクリ、誰かそいつ捕まえて!」


 どうやら事件のようだ。

 人混みの多い祭りの場では、とりわけ珍しくもない。


「おいおいヒッタクリだとよ、このままじゃ逃げられちまうぜ」


 俺野の友達の1人が、心配そうにヒッタクリ犯を目で追いかけていた。 

 犯人は自転車にまたがり、逃走を図る。


「なんじゃぁボケェ! 神の御前で悪事を働く不届き者めぇ!」


 そんな犯人の自転車を、ステージ途中のヒイ子が飛び出し追いかける。

 俺はパニックにならぬよう放送席からアナウンスを流し、警察に通報を入れる。


「おいおいヒッタクリだとよ、このままじゃ逃げられちまうぜ」

「安心しなシュウト、毎年やってるショーの一環だ。まあ今回はガチのヒッタクリだけどな」

「おいおい大丈夫なのかよ、あの子1人に追わせても」

「なあシュウト、()()()()って何だと思う?」

「なんだよ急に、グループ名かなんかだろ?」


 俺達が話す間に、ヒイ子と犯人の距離が縮まっていく。

 もう追っ手を巻いただろうと、後ろを振り返り青ざめる犯人。

 ヒイ子は近くの壁を蹴り犯人の前方に回り込むと、自転車のタイヤを蹴り飛ばし横転させる。


「すっげえ……。あの巫女さんすっげえな!」

「巫女ではないよ。あれは山の神、大河村の要役自らが育て上げたこの村の守り神さ」

「おお委員長、騒がせちまったな」


 騒ぎを聞きつけ放送席にやってきた、村興し委員会の委員長。


「神? 作った? ははは、なにを馬鹿なことを……」

「君もその目で見たばかりじゃないか、まぎれもない事実だよ」


 委員長は、大河村のヤマツミとは何かを語り始めた。


「ヤマツミとは、山の神。山は山、ツは○○の、ミは神を現す。10年ほど前、廃村寸前だったこの村の復興を考えた要役は、大いなる力が必要だと考えた」

「それがあのヒイラギって子か」


 委員長の説明に、俺は補足を入れた。


「まあ、そういう設定のショーなんだけどな。山育ちの身体能力を生かした出し物を考えたり、野良仕事の作業着をステージ衣装に仕立て直したりして、客寄せにしてんだよ」

「え? じゃあさっき自転車に追いついたのはなんかのトリック?」

「いんや、鍛えてるからな。それにあの衣装は作業着だってさっきいったろ、丈夫で動きやすくておまけに頑丈、そして山中を飛んだり駆けたりするサポートギミックがいくつも仕込んである。プロの選手ならともかく、素人の、ましてや地の利があるこの場所でヤマツミが負ける理由がねえよ」


 数分後警察が到着し、犯人の引き渡しが完了した。

 少々ごたつきはしたが、事前のアナウンスのおかげでパニックにすんでよかった。


「なんなら着てみるか神御衣、この後体験会あるし」

「体験会! おいおい手品のネタ晴らししていいのかよ」

「いいんだよ、ネタバレ含めての手品なんだからよ」


 ステージ周辺には、人だかりができていた。

 神業のネタ晴らしをくらい、一度は冷めたであろう観客達に熱気が再び蘇る。


「よっ、ほっ秘儀壁歩きぃぃ」

「すげぇぇぇ!」

「よーし、次は空中三回転!」

「おぉぉ!」

「どうです体験されます? 1日体験プランありますよ」

「いや今日は遠慮しとこうかな……」

「そうですか? ではいつでもおいでください」


 委員長はそう言うと、観客達にチラシを渡して回った。


 神業の数々はすべてヤマツミのトレーニングで学べるもの。

 そう銘打って村興し委員会が行う体験会には、多くの体験希望者が現れた。


「こうやって村に人を呼んでんだよ、だから委員会も協力する」

「商売上手だなぁ、まったく」

「村の存続かかってるかんなこっちは。ふぅ、さてと」

「どっかいくのか?」

「だいぶ落ち着いてくる頃合いだ、ミカの顔合わせに行ってくらぁ」


続く

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