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第38話 大河村のこれまでとこれから

新キャラ2人の名前を変更しました。

狩場リョウ→雛鶴ユイ

田畑スイ→豺原マホ

「おーい、なんでオレ達でテイオーの手伝いするんだよぉ」

「だって、準備を手伝ったら、ごはんタダで食べさせてくれるって」

「飯なら買えばいいじゃんかよ、なんでわざわざ」

「ダメよ! いつまでもテイオー君のお世話になっていられないでしょう。新居のためにも、節約できるところは節約しないと!」

「ははは、まあ俺は一生いてくれても構わないけどな」


 前回の米騒動から一週間。大河村の収穫祭を明日に控えた今日。

 テイオーとシュウト一家は、収穫祭の準備のため村へとやってきた。

 正確に言えばシュウト一家の目的は、準備中にふるまわれる食事をゲットすることだ。


 会場に着くと、余った予算をつぎ込んだバーベキューが始まっていた。

 シュウト達はさっそく席に混ざり、肉とおむすびに嚙り付く。


「あいつらは俺の高校時代の友達でさ、家をこの前焼かれちまったんだと。適当に働かせて、盛大にもてなしてやってくれ」

「かしこまりましたカナメ様。……しかし、準備はほとんど終わっておりますじゃ」

「なんかあるだろ? えっと、プログラムの紙っと…………お、これとかどうだ?」


 働かざるもの食うべからず。

 テイオーは、食事を終えたシュウト達に指示を出した。


「んじゃあ、ミミちゃんナナちゃんはここ。ここでほかの子たちと一緒にお面作りだ」

「「「こんにちわー」」」

「どうも……なのです」「今日はお日柄もよく……のです」

「ん? どうした、元気がないぞ?」

「服が汚れるのです」「紙に色を塗るだけなど、我々にふさわしくないのですよ」

「そっか、じゃあこっちでやぐらを組む力仕事を「「ぜひやらせていただきます!」」」


 双子達はクレヨンを握りしめ、せっせと色を塗り始めた。


「なんだこれ、お面屋でも開くのか? こんなにたくさん」

「来場者に配るのさ。祭りの日には山の神様が遊びに降りてくるんで、面をつけて正体がばれないようにしてやんのさ」

「へー、しきたりって感じだな」

「まあぶっちゃけ、客とバイトの見分けが人混みでつくように目印だな」

「建前!」


 双子にお面作りを任せ、続いてシュウト達にも準備を手伝わせる。


「なあ、明日も運営手伝うってんなら飯用意するけど、どうする?」

「いやー別に、明日は屋台とか出る「助かる―、ぜひお願いするわ!」」

「んじゃ、明日のメインイベント、山狩りを手伝ってもらおうか」


 そう言いながら案内を始めようとするテイオーのもとに、「カナメ様カナメ様」と息を切らしながら村の若者達がやってきた。


「大変です、テントを固定する金具の数が足りません」

「屋台の旗に裂け目が」

「料理用のボンベが届いていないようで」

「……OK、確認ご苦労様。ちょっとしたらすぐ行くから、ここ、紙とペンあるから問題個所をまとめといてくれ」


 テイオーは紙とペンを預けると、シュウト達を連れて走り去る。


「カズマ!」

「おう……急ぎ?」

「この2人高校時代の友達シュンカとシュウト、明日の山狩りのサポートをしてもらうからルートを教えてやってくれ」

「分かった。けどちょっと待てる? テント破けたらしくて、この修理道具届けてくるから」「そっちの件は俺が預かる、何かあればまた連絡する」

「ラッキー、じゃ任された」


 テイオーはカズマからいろいろ入った段ボールを預かると、元居た場所へと戻っていった。


「えーっと、シュンカさんとシュウトさんね。歩きながら話すからオレについてきて」

「ど、どうも」

「よろしくおねがいします」


 カズマは歩きながら、山狩りとは何かの説明から始める。


「簡単に言えば鬼ごっこかな? ヤマツミ……山の精霊ね、その役の子たちが村中を走り回りながら、お菓子とか商店街で使える商品券とかを落っことしていくんだ」

「村中を! うへぇ~」

「大丈夫、みんな鍛えてるから。それでルート上に待機しておいて追加のお菓子とか渡したり、休憩時間に飲み物を出したり、あとイベント中に事件が起こらないよう見はったりだね」

「事件?」

「追っかけるのに夢中で崖から落ちたり、畑のものを盗んだり、そういう人が出ないようにパトロールするんだ。どっちかというとヤマツミのサポートより、監視役として人員が欲しい感じだね」


 大まかな説明を終えたところで、第1チェックポイントが見えてきた。

 道路から少し奥まった場所に、小さな空き地と苔むした石碑があった。

 石碑にはテイオーの曽祖父の名前と、彼を称える唄が彫られていた。


「これカナメのひいおじいさんの」

「げげ! あいつのひいじいちゃん何しでかしたんだ!」

「そのころって戦争あったじゃん。親兄弟をなくした子供達を養うために、当時活発だった鉄工所に出稼ぎに行ってたんだ」

「すごい! それじゃあこの人は、この村のヒーローね」

「そうだね。けどいいことばかりでもなかったみたい……」


 第2チェックポイントは、テイオーの実家。

 そこに向かう道中、カズマはカナメ役が不在となった村のその後について話し始めた。


「今でこそ道路と車がしっかりして、行き来が楽になった。けど昔はそうじゃない、出稼ぎに出てから村に顔を出す数は年々減っていった。子供達が大きくなるころには、都の方に家族ができて子供が生まれて、最終的にはひいおじいさんが死んで、カナメ役が取りまとめてた行事とか仕事とかが回らなくなって、地域同士のつながりが消えてみんなバラバラになっていったんだ」

「引継ぎとかはしてなかったのか?」

「してたみたいだけど、覇気……血筋? 自分がこの場所の主なんだって気概を持って事に当たるのと、仕事を預かっただけの人だと取り組み方に違いがあったみたいで、ちょっとずつさぼり続けて100年ぐらいかけて寂れて言った感じかな」


 テイオーの家に着くと、そこでお茶を用意され一息つく3人。


「この家ってさ、カナメがくじ引きで当てたんだって。なんか保育園のころの話、全部タダで建ててくれたらしいよ」

「「全部タダ!」」


 「運ゲー野郎め」と2人はテイオーを羨むと同時に妬んだ。


 お茶を飲み終わると、ごちそうさまと一言添えてから家を後にする。


「お、奇麗な花だな。ナナ達に摘んで帰っていいか?」


 シュウトは土手沿いに咲き誇る、花を1本摘んで帰ろうとした。 


「それ獣除けの毒花、食べるとおなか壊すよ」

「食べないよ!」

「あっちにお土産屋さんあるから、そこで買いなよ」


 案内された土産物屋。

 厳密には小さな雑貨屋。近年、大河村周辺で祭りやイベントが増えてきたため、観光客用の商品も取りそろえ始めた。

 ちなみに、今回の収穫祭にも出店予定となっている。


「で、これがさっき植えてあった水仙の球根と種。こっちの鉢植えで咲いてるのは菖蒲水仙、似てるけど食べても死なないやつ、おすすめだよ」

「だから食わねえよ。えーとじゃあ、この押し花でも貰おうか」


 シュウトは手に取った2枚の押し花を購入、一方シュンカは値段の安さとお手軽なサイズ感につられて大量に購入しようとしていたところをシュウトに取り押さえられえんぴつ2本を購入。

 そして、次のチェックポイントを目指す。


「ところでカズマ君、あなたってどこの学校? 何年生?」

「学校は行ってないよ。オレ高校出てからここに来るまで、バイトしながらアパートでずっとゲームして暮らしてたから」

「え? 高校? 中学生とかじゃ……」

「ああそういう……オレ成人済み、今年で25。背が低いからね、慣れてるよ」

「ごごご、ごめんなさい。てっきり家の手伝いなのかと」


 「次のポイントまで少しあるから」と、

 カズマは自分がここに来るまでを話し始めた。


「オレ育成ゲームとか好きでさ、ゲームの中で昔から牛とか野菜とか育ててたんだ。大学行くとお金も時間もかかるから、バイトかゲームか寝るかの毎日だったね」

「……体に悪そうね」

「だろうと思って、ちゃんと筋トレゲームもやってたよ。で、新しく始めたゲームで、村のみんなと晩御飯を食べるシーンがあって、それがむっっっっっちゃくちゃうまそうでさ。けどゲームの向こうだから、どれも食べられないんだよね」

「いいなそれ、そのゲームオレにもやらせてくれよ」

「パソコンあるなら、DL版でやってみるといいよ。…………えっと、それで、めちゃくちゃうまそうで、ゲーム代わりにその時間で田植えしたら実際に食べられるじゃんと思って、田植えするためにここまで来たんだよオレ」


 その道中にもいろいろあったようで、行った先が補助金目当ての名ばかりの事業所だったり、詐欺にあって土地を買わされそうになったり、経営難で人がいなくなっていたりがあったようだ。


「それでもいくつかはまともなところはあったよ、けど機械の故障や台風とかの災害、取引先でのトラブルとかでリストラが必要になったりとかで、長続きさせてもらえなかった」

「大変なんだな、農業って」

「ああ、カナメはすごいよ」


 頭に疑問符を浮かべるシュンカとシュウト。


「この村の田んぼ、全部カナメが耕したんだよ」

「テイオーが!?」

「クワ1本で」

「1本で!? さすがに嘘だろ、機械なしで田植えなんて」

「さすがに田植えはね、無理だよ。土地ってさ、ほっとくと腐るんだよ、栄養が抜けて土が固まって実を育てる微生物が死んで、そうやって死んだ土地はまた0から育てなおさないといけなくなる」

「え!? 自然になってんだから、草抜いて肥料やったら多少は」

「田んぼや畑は自然じゃないよ。コンクリートやアスファルトと同じ、砂と泥を材料にしてる人工物だよ。だから、道路工事みたいに毎年補修作業しないと朽ちていく。田んぼや畑みたいなのが、自然ににょきにょき生えてくるわけないじゃん」


 カズマの言葉には、怒りが込められていた。

 大声を張り上げるタイプではないので静かに淡々とだが、言葉の節々に自然に対する無理解への怒りが込められていた。


「でまあ、カナメはそんな死にかけの土地に、クワを入れて栄養になる花とかを植えて、土地の状態を守ってくれてたんだ」


 カズマは田んぼのほとりに植えられた、水仙の花を指さす。


「水仙の花言葉は再生と復活、こいつは害獣駆除の毒草であると同時に100年かけて衰退していったこの村の復興への願掛けでもあるんだ」

「こ、これも全部テイオーが!?」

「こいつ数年ほっといても平気だからって、カナメは笑って話してたよ」


 覇気と血筋、土地に対する責任感。

 道案内の最初に言われた言葉が、ここにきてよみがえる。


 2人は頭ではなく心で理解した、この村の主が誰であるのかを。


「まあそんなわけで、あいつはこの村の文字通り要だから、まあそれとなく持ち上げ気味でいてくれると助かるかな。田舎って面倒くさいところあるから」

「お、おう」

「分かったわ。けどちょっと納得だわ、テイオー君の事」

「だな、ショップ仲間の間でも、自然と頼りにされてたし」

「そうそう、今だって文句の1つもなく部屋を貸してもらってるし、きっと人間としての格が違うのよ」


 テイオーの話題で盛り上がっていると、木々の間を飛び回りながら何者かが近づいてきた。


「へ何々! 山猿!?」

「分かんねえけどやべえぞ、逃げよう!」

「大丈夫、ちょうど挨拶に行こうと思ってたんだ」


 スタッと、着地するなぞの存在。

 それは神御衣を身にまとった、2人組の女性であった。


「人間?」

「女の子?」

「紹介するよ。山狩りの主役、ヤマツミ役の雛鶴(ひなつる)ユイさんと豺原(さいはら)マホさんと……あれ、ヒイちゃんは?」

「はい、ただいまアルバイト中であります」


 元気に答える、豺原マホさん。


「夕方にはぁ、戻るってさぁ」


 気だるげに答える、雛鶴ユイさん。


「この2人と後1人、水城ヒイラギさんの3人と鬼ごっこをしながら賞金を集めるんだ」

「はい、全力で挑ませていただくであります」

「全部集めるとぉ、30万ぐらい稼げるとかどうとか、頑張って追いかけてね」


 紹介と宣伝を終えた2人は再び近くの木の上へ駆け上り、飛ぶように木々を伝って走り抜け見えなくなった。


「シュウちゃん」

「ああ分かってる、せーのっ!」

「「絶対無理!!」」


 2人はヤマツミ達の身体能力を前に、開始前から敗北宣言を行った。



続く

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