EX stage 6 誓約(うけい)
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「さて、改めまして。ようこそお越しくださいました」
リズ様は3人に対し、丁寧に頭を下げる。
その所作は、まるで貴族のように気品があり美しいものだった。
…………とても先ほどまで焦げマシュマロを量産していた人物とは思えない。
「プロジェクト・ヴァベル……目的は歴史の保存と周知……」
「はい、現在多数の組織や企業から協力を得ております。ラピスラピアにとっても、その影響力をより強固にする良い機会になると我々は考えております」
ゴモンは神クラスの相手に対して、冷静に交渉を試みる。
「マオウさん、あれを」
「はい、こちらに」
リズ様は、それに対して言葉ではなくとある品物をゴモン達に返してきた。
「これは、ダンGのスタートデッキ!」
「あら、これをご存じで?」
「え、あ、はい。いろいろ調べさせてもらったので」
「まあ、だったら話が早いわね」
ダンジョンマスターG(通称ダンG)。
ラピスラピアで好評発売中のカードゲームだ。
プレイヤーは、ダンジョンマスターとして自身のダンジョンを構築。
フロアを設置しモンスターを育成し、戦闘やトラップを駆使して勝利を目指す。
ダンジョンコアから全てが生まれたラピスラピアにとって、ダンジョンコアの歴史は世界の歴史。遊びながら自分達のルーツを知る事が出来る歴史の教科書としての役割を持つ。
因みに、ダンGのGとはガチャの事。
どうやらダンジョンコアには、ランダムで魔物やトラップ等を生成するガチャ機能が付いているらしい(なんでだ?)。
「ガチャのランダム性を利用して運天賦を含めた腕比べを行い、古のラビリアの民は国を束ねる王を決めていました。それを再現したものが、これなのです」
「ラビリア、の民?」
「我々の故郷の名です。古いラビリアの民には、ダンジョンコアという呼び方に嫌悪感を抱く者もいます」
そう言って、笑みを浮かべたリズ様は握手を求めてゴモンに歩み寄る。
「開発担当者には、すでに話を付けてあります。ダンジョンマスターGの開発は引き続き我々が、あなた方には新天地での流通をお願いしますね」
交渉成立、そう判断しミナカは喜び勇んだ。
しかしゴモンは、その手を握り返さなかった。
「失礼ですが、少々情報に行き違いがあるようで。我々はこの度、リズ様をプロジェクトのイメージキャラクターにさせていただこうと思い参上いたしました」
「ええ間違えてはいないわ。人や組織を使う以上、スポンサーへの見返りは必要でしょう? 私達は、自国の製品の勢力拡大ができて、あなたたちは売り上げ実績のある商品を販売できる。世界の歴史がテーマである以上、企画の主題とも外れてはいないはずよ?」
ゴモンは、返答に悩んだ。
ダンジョンマスターG。歴史をテーマにしてはいるが、そこにはゲームやストーリーを盛り上げる為に大幅に脚色が加えられている。
あるがままの歴史の真実を伝える。
プロジェクト・ヴァベルのテーマから逸脱している、ダンジョンマスターGを企画の中に組み込んで良い物か? ゴモンは判断に困っていた。
「リズ様……もう少し、お時間よろしいですか?」
ゴモンは、疑問点を包み隠さず話す事にした。
しばらく、2人の問答は続いた。
「――――では、別企画として進めるというのはいかがでしょう? 予算と流通、そこはお互いにとって利のある部分、企業同士の共同開発として進めさせていただくというのはどうでしょう?」
そこまで話して、今度はリズ様が口をつぐむ。
少し考えた様子を見せた後、大きくため息をつき背もたれによりかかる。
「はぁぁ、うまく手綱を引きたかったんだけどなぁ」
リズ様は、ゆらりと手を前に掲げる。
まるで銃口に指をかけるように、殺気がにじんでいた。
「もう単刀直入に伝える、プロジェクト・ヴァベル今すぐ停止させなさい」
「はぁ! 急になんだ、何の権限があってそんな――」
そんな事、とゴモンが言い終えるより早く時空間に亀裂が走る。
まるで漫画のキャラをページごと破り捨てるように、ゴモンの体が引き裂かれる。
「痛ってえな、この」
「神器オオクニヌシ、ここまでやっても再生できるのね、驚いた」
「どういうつもりだ、俺じゃなきゃ死んでたぞ」
「危険だからよ、あなたたちのやろうとしてる事は。それは世界の秩序を脅かす行為よ」
説明しよう!
と、横からマオウが割って入る。
「君達の目的は歴史の修正。過去に忘れ去られ、時に踏みにじられてきた数々の歴史、それらを正して真実を白日の下にさらそうとしてる。……間違いはないね?」
「ああ、ぶっちゃけると歴史云々は結果的にそうなるって話で、兄貴のダチの汚名を晴らすってのがそもそもだけどな」
話をしよう!
と、マオウは流れをいきなりぶった切る。
「人は嘘をつき、それを信じる事が出来る生き物だ。人は病や災害に鬼や悪魔の姿と名前を与え、その危険を世に知らしめた。天使や妖精もそうだ。アニメや漫画、古の神々、紙幣なんかもそうだろう、同じフィクションの世界を信じる者同士で手を取り合い、自然界ではありえない巨大な群れ形成した」
「あんた、何が言いたい?」
「ようするに、君達のように世界の嘘を暴こうとすれば、人間社会の根幹が崩れてしまう。お友達を大事にするのは良いが、そこに巻き込まれる側としては君達をほおってはおけないのさ」
「ああ、そんな話しか……」
ゴモンは特に興味なさそうに、神器の力を解放する。
神器オオクニヌシ。スサノヲから授かったこの神器には、国を治めるために必要な様々な力が備わっている。
「リズ=ラビリア、ラピスラピアの王よ、あんたとの誓約を提案する」
「誓約?」
「日本古来の占いさ。コイントスで、表裏を決めるあれも誓約になるのかね。予めルールや条件を定めて、その結果で未来を占うのさ」
ゴモンは、テーブルに放置されていたダンGのスタートデッキを手に取る。
「せっかくだ、こいつで決めよう。俺達のしでかしで、あんたは世界が滅ぶ方、俺達は無事なほうに賭ける。あんたが勝てばプロジェクトはご破算、全面的にあんたに協力する。俺達が勝ったら、俺達のやり方を黙って見過ごす……どうだ」
「占いで世界の行く末を決めるなんて、正気とは思えないわ。第一、ゲームの結果と未来に何の因果関係もないじゃない」
「いんや、かわるねww」
ゴモンは、先程のマオウとのやり取りをそのまま返した。
「世界は嘘とそれを信じる事で動いてる、だったよな。だったらこれから始める大噓を、あんたらが信じて動けばいい。そんな大嘘を始める為に、先人達はたかがゲームに未来を託したんだろうぜ」
リズ様は、無言でデッキを手に取りケースから取り出す。
ゴモンも同じく、カードを並べてそれに答える。
「はい、ではスタートの合図で始めてください」
マオウが二人の間に立ち、進行役を買って出る。
「ダンジョンバトル。はーい、よーいスタート」
続く
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