第32話 第6章エピローグ 突撃 お前の晩御飯!
「ああああ、負けた負けた! もう一回だ!」
おう! と俺は答えようと思った。
すると……
「ダメよ、シュウちゃん! そろそろ子供達も帰ってくるし、晩御飯の支度しないと」
「ならお前だけ先帰って「シュウちゃん」だってまだやり足りない「シュウちゃん!」じゃあテイオーうちまでこいよどうせ明日日曜だr「いい加減にしなさい、ほら帰り支度して!」」
シュンカの剣幕に押され、しぶしぶ帰り支度を始めるシュウト。
「明日も来いよ、テイオー」
「え? あ、まあ日曜だし」
「お前が店に来なくなって大方10年だ。お前のいない大会出ても張り合いないんだよ」
「そんなにかぁ、まあ分かった明日な」
「ああ、約束だぜ」
後ろ髪をひかれるように、シュウトは店を後にする。
俺達はしばらく店に残り、明日の大会に向けて調整をする事にした。
あ、そうそう
細井さんと長井さんは、今日は俺んちで泊まりだ。
親の仕事の都合って奴でな。
「聞いて驚けお前ら、今日はチーズinハンバーグカレーだ!」
「くっはぁ! いいですねぇカロリーマシマシな感じで、へへへ」
夕飯時が近づき、俺達3人は車に乗り込み帰路につく。
道中他愛もない会話を挟みながら、家まで短いドライブを楽しんだ。
「またや、おっちゃん救急車のサイレンや、消防車も。どっか火事みたいやな」
「おいおいサイレン結構近いぞ、まさか燃えてんの俺んちじゃねえだろうな」
結論を言えば、俺の家は無事だった。
燃えていたのは近所のマンションで、住人は無事脱出できたそうだ。
周辺家屋への被害もなく、燃えた家財に目をつむれば被害は0と思っていい。
……で、なんで俺がそんなに被害状況に詳しいのかと言うと――――
「サンキュー、テイオーこんな急なのに部屋貸してくれて」
「そうそう一時はどうなる事かと。でも安心して、お財布も通帳もバッグに入れて持ち出してたから、生活の方は大丈夫そう」
「それに料理も(ぱくぱく)最高なのです」
「やみつきです(もぐもぐ)」
――――被害にあったシュンカとシュウト、そしてその双子の娘ミミちゃんとナナちゃん(小学二年生)に話を聞いたからだ。
「「おかわりなのです」」
双子から、おかわりコールが入った。
「ダメだ、今日はおかわり禁止!」
「「えーーパパのけちんぼ!」」
「おじさん達の分がなくなるでしょうが! 悪いなテイオー、お前らの分減っちまって」
「あ~いや、別にまだまだあるし遠慮すんな」
そう言って俺は、冷蔵庫からカレーの作り置きを2鍋とりだす。
「なんで作り置きがあるんだ、それも2つ!!」
シュウトからの、激しいツッコミ。
「まあまあ、お前もまだ食うだろ。温め直すから、家の中案内しながら諸々話すぜ」
「それもそうだな、部屋案内してくれよ」
今か今かと鍋の様子をうかがう双子をシュンカの任せて、俺達は廊下に出た。
「ここは元々ある会社の社宅でさ、使わなくなったのを俺の爺様が買い取ったんだ」
「へ~、それでこんなに広いわけか」
「そそ、玄関入ってこっち側が元管理室、さっき俺達がいたところな。今は共有スペースとして、水回り以外は取り払ってフリースペースになってる」
「うおっ広、ゲーム部屋! 漫画とテレビも。お、これがお前らのカードゲームか!」
「おう、ここで作ってる。で、廊下挟んだこっち側が住居スペースだ」
俺は廊下を歩きながら、目についた適当な空き部屋の扉を開く。
中は風呂にトイレと台所、布団を敷く和室と押入れがある。
「おいおいおい、前のマンションより広いし豪華じゃねえか」
「家具がないだけさ、テレビとか置いたらすぐ埋まるぜ。で、ここがこの部屋の玄関、郵便受けはこっちな。中で全部屋繋がってんだから、内扉外扉それぞれの施錠を忘れるなよ」
「なんか個室の多いシェアハウスって感じだな、おもしれえ」
一通り紹介は終わった。
後は戻ってカレーを食おう、そう思っていた。
「なあテイオー、ここっていつも誰か泊りに来てんのか? さっきカレーの件も、人が大勢来る予定があるならつじつまが合うんだけど」
「いや別に、俺ら以外誰も来ねえよ。あのカレーは全部自分達用さ」
「んなわけあるか! オレだってあの量平らげるのに2日はかかんぜ。別にオレは、人様の物を無理に譲ってもらうほど食い意地は張ってねえぞ」
「なんなら今からコンビニで買ってきても」
とまで言い出すシュウトをいったん落ち着かせて、俺は話を続ける。
「今からするのは子供の前でする話じゃねえからな、シュウトには案内ついでに席を外してもらったんだ」
「なんだよ改まって」
「別にグロい話じゃねえさ。俺、高校時代……いや、中学終わりごろからか、飯がまともに食えない時期があってさ、憧れだったんだ冷蔵庫開けたら山盛りの飯が用意されてるっていうのにさ」
「おいおい、そんなの初耳じゃないか。何があったんだよ!?」
「なあに俺の親父が経営してた会社が倒産して借金の返済に追われてた、ただそんだけの話だ。おかげで俺は高校行くためだけに奨学金貰って、自分で働いて返す羽目になった。……こんな話、当時高校生だったお前にする話じゃねえだろ」
「…………」
シュウトは、高校当時を思い返していた。
テイオーは、プレイングがうまかった。人がレアカードを買い集め、ガチデッキを握り大会に出る中で、テイオーは独自構築とプレイングで常に勝利を収めていた。
店にあった体験版デッキを10円カード数枚で強化し、大会優勝するテイオーの姿にシュウトは尊敬を抱いていた。
……まさかテイオーが、そんな家庭内事情を抱えていたとは夢にも思っていなかった。
「辛かったんだな、あの頃のお前……「いんやぁ別にぃ~ww。腹は減ってたけどさ、ぶっ倒れる程じゃねえしさ。それにさ店に行けばお前らがいて、自転車こいで遠征したり武者修行に出たりで楽しかったよあの頃」」
辛かったのはその後さ、
とテイオーは話を切り出した。
「本当に辛かったのは、カードを止めちまった事さ……」
「そうだぜ、就活あるからってそれっきり姿見せなくなっちまって、なんでもっと早く戻ってこないんだよ。ショップの付き合いしかねえから連絡先分かんねえし、オレら結婚して引っ越す事になったし、就職先決まったんならさっさと戻って来いよ!」
「ああ、仕事が安定しだしたら戻ろうと思ってたんだ、けど……1年しないうちに仕事クビになっちまってさ」
「……嘘だろ……テイオーがクビ? お前みたいな優秀なやつがクビだって?」
シュウトは、心底信じがたいといった顔をしていた。
「ああそうだ、お前らにとっては無敵のテイオー様でも、世間にとってはそうじゃなかったらしい。まあもっとも、今はまともに働けてるわけだから前の会社がアレだった可能性もあるがな。ともかく俺は、次の仕事が決まるまでカードは封印しようと決めたんだ。www今の俺からいわせりゃ、どんな判断だよって腹抱えて笑っちまうぜ」
テイオーは、笑うのを止め話を進める。
「俺はカードを捨てて、一人前の大人にならなきゃって当時そう思ってた。俺がアニメや漫画の主人公なら挫折から後悔して、今までの自分から生まれ変わって……そんで最後には成功して、仲間と再会して大団円……なんだろうけどさ、どうやら俺は主人公にゃ向いてないらしい。結局俺は持ってたものをただ捨てただけ、覚醒も成長もありゃしない」
カードを捨てたあの数年間は、本当に人生の無駄だったとテイオーは語る。
俺はカードと一緒に外の世界に出ていく行動力と、そしてショップでつながった人とのつながりを捨てちまってたと彼は語った。
「風向きが変わったのは、やっぱカードだったな。村田、俺の部活の後輩が店を作ったてさ、誰もいないと入りずらいから店に来てほしいって」
「サクラかよ……」
「人聞きの悪い事言うなよ。でさ、近所の子供達が次第に遊びに来初めて、その子の母親とも世間話するようになって、俺がいるならって、この家が村田ショップの大会会場にもなってたんだぜ」
「ぷっ、迷惑ww」
「かもな、でもおかげで今の嫁さんにも出会えたし、孫の面倒を任されてた松平社長とも知り合えて仕事も貰えた。俺がカードにそっぽ向いたままだったら、俺は何もしないまま腐ってるだけだった」
そこまで言い終えたところで、シュウトの腹が鳴った。
「おっと、長話になっちまったな」
「別に、お前の本音が聞けて良かったよ」
「そっかそっか、ところでなんだけど見ての通り部屋余りまくってるからさ、一晩と言わずここに入居する気はないか?」
「え、いいのか? けどちび達もいるしな」
「なら2部屋持ってきな。家賃は合わせて~~万円、おまけにカレーが食い放題!」
「まじで、願ったりかなったりじゃねえか! 早速シュンカにも相談しよう」
シュウトは晩飯と、住居の相談のため台所に走った。
そしてこの晩、テイオー宅に新たな住人が増えた。
入居理由は、家賃、保証、そしてたらふくの飯。
続く
「なあ、これ食ったらお前らの新作ゲーム見せてくれよ」
「おう、いいぜ! ちょっと準備してくら!」
「もうシュウちゃんったら……私をのけ者にしないの!」
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