第4話 反省会とゲームタイトル発表
「うわぁぁぁん、ひっく、おっちゃああああああああん、おっちゃんおっちゃんおっちゃん、おっちゃ~ん(号泣)」
「おうおう、そんなに悔しかったのか? よしよし」
試合の決着がつき、号泣する細井さんを俺は慰めた。
「はあはあ、先生、そのままギュッと! ギュ~っと!!」
俺達2人のやり取りに、長井さんの視線が痛く突き刺さる。
まあ、いつものことだから無視を決め込む。
「まあまあ、勝負だからな、負ける事だってあるさ」
「……ちゃうねん……オレ、ゲームを楽しんでもうた。テストプレイやのに、おっちゃんの役に立とうと思っとったのに……仕事そっちのけで遊んでしもうた……
ごめん(涙)」
俺は細井さんの頭から手を離し、かわりにメモに手を伸ばした。
「聞かせてくれ、どこがどう面白かったのか……もっと詳しく」
「ふえっ?」
「これはゲームだからな、面白いかどうか夢中になれたかどうかが問題なんだ。ゲームバランスだとか、奥深さだとか、そんなもん俺はどうだっていい。どんなに御大層な理屈を並べ立てたって、実際にプレイした人間の『面白い!』の1言にかなう理屈なんてねえんだからな」
俺はテーブルを片付け、かわりに模造紙を配置した。真っ白な紙のど真ん中に『面白い!』とデカデカと書き込む。そして細井さん長井さんに、それぞれペンを握らせた。
「さ、今の気持ちを忘れないうちに」
「で、でわさっそく(カキカキ)」
先にペンを走らせたのは長井さん、彼女は『面白い!』から矢印を引き『エースデッキ』と書き加えた。
「あの、私ってよく変なコンボデッキとか使うじゃないですか」
「おお、そうだったな。手札とか墓地とかグルグルさせる奴な」
「ええ……まあ、全然使いこなせなくて良く事故ってますけど。でもでも先生のゲームをやってみて、ひきに頼らずモンスターが好きな時に出せるのなら私でもデッキを使いこなせるのでは?と」
「そうかそうか」
俺は長井さんの書き込みに『召喚タイミングの自由度』『いつでも好きなカードが使える』と追加した。
実はこの部分が、俺がこのゲームでやりたかった部分でもある。
俺がガキの頃、カードは高級品だった。パックを買ったら財布の中はからっけつ、シングル買いやボックス買いなんて夢のまた夢だった。そんな中でせっかく引き当てたレアカード達、そいつらがデッキに埋もれたまま試合が終わるのが悲しいやら悔しいやらでしょうがなかった。
「なあおっちゃん、これって好きなカードを書いてもええのん?」
「ああ、勿論だ」
「ほな、オレはこいつやな」
『筋肉は全てを解決するーー!』を紙からはみ出す勢いで書き込んだ。
筋肉は全てを解決するーー!
コスト1 魔法カード
このカードは時が停止していても使える。
自分の場のカード1枚をこのターン中、無敵にする。(無敵になったカードは決して場を離れない)
「これ名前がむっちゃ面白いw。効果も名前の通り、味方を無敵にするて、ほんまに全部を解決しよるしww」
「せっかく出したエースが、簡単にやられたらもったいないからな」
「そうそう、これ持ってる時の安心感が違うねん」
「けどさっきの試合はそれのせいで負けてましたよね?」
「「……」」
長井さんの1言で、その場の時間が停止した。これは筋肉でも解決できない。
「あ、あれはオレが迂闊やったんよ、あるの知ってて無警戒やったから。つ、次はちゃんとタイミング考えるし、コストにしてかわせるようにもう1枚用意しとくは、ははは」
せや、と細井さんが俺に向き直った。
「おっちゃん、これって初期手札かドロー枚数増やせへんの?」
「え!? いや、いいけど。なんか問題か?」
「オレもっと相手と対抗合戦したいねん。攻撃して除去が飛んできて、それに対応して、そんな戦いがしたいねん。けど今の手札やとエースを出すだけでいっぱいいっぱいで、対応札を出すコストが足らへんのよ」
俺は顎に手をつき「確かに」と返した。
毎ターン3枚も引けば、いろいろできるだろうと俺は考えていた。しかし、エースのコストは現在2や3が基本、これだと実質1枚しか引いてないのと同じだ。その状態で対応札を手札に構える行為は、ターンを捨てるに等しい。
「分かった、ちょっと考えてみる。手札の枚数か……もしくはコスト用のエースカードを用意する事になると思う」
「わお、コスト専用のエースか! その発想は無かったわ」
そこから、更に2人から聞き取りを進めていく。
テキストの読みやすさや、ライフやシールドの枚数について。気が付けば、真っ白だった模造紙は俺達3人のアイディアで埋め尽くされていた。
「う~ん」
「むむむむぅ」
「あ~まっ今日はこんな所か、サンキューなおかげでいいゲームになりそうだ」
そろそろ帰るように2人に促し、帰り支度をさせる。
「あ!」っと、何かを思い出したかのように叫ぶ細井さん。
「せやせやすっかり忘れとった、ずっと聞こう聞こう思っててん」
「なんだなんだ?」
「タイトル! このゲームのタイトル、なに!?」
「ああそんなことか、ルールブックにちゃんと……ないな」
本日1番の痛恨のミス!
ゲームのタイトル書き忘れるとかマジありえねえだろ!
「そうそう私も気になってました、先生教えてください」
「せやせや、何て名前なん?」
俺は「こほん」と咳払いをする。
改めて口にするのは、なんかこっぱずかしさがあるな。
「……エースオブワン」
「「??」」
「このゲーものタイトルは……エースオブワン!!!
最強のエースモンスターを決めるカードバトルだ!」
――第1章 完――




