第28話 時代に愛されなかった神ゲ―
「ふんふんふふ~♪ おっちゃん、オレ優勝したで~」
「おめでとうございます。私は初戦敗退です……毎度のことながら」
細井さんと長井さんは、大会の結果報告をしようと対戦席から俺の姿を探し回っていた。当然そこに俺の姿は無い、シュウトとのフリー対戦中なのだから。
「シュウちゃんとテイオー君はあっちよ、ほらそこ」
「な! 大会ほっぽってあんなとこに。せっかくすごいデッキ出来た言うて、大会参加するって話やったのに……」
シュンカの奴が俺達の所へ、細井さん長井さんを案内してきた。
細井さんは俺が大会すっぽかした事に拗ねているようだった。
「あの、すみません、そのテイオウって何なんですか? 先生の事ですか?」
カードをしばく俺のかわりに、シュンカが長井さんの質問に答える。
「無敗のテイオー、大会じゃ負けなしだから皆そう呼んでるの」
「うわ~おっちゃん、昔からメチャ強かったんやな」
「まあな」
なんて返事を返したが実は違う。
俺は対戦環境や練習期間、それらがかみ合って確実に勝てるタイミングでのみ大会に参加する。それが無敗のカラクリだ。
その証拠に、大会に出まくってるミカの方が優勝回数は多い。
「んじゃバルバロッサでとどめな」
「ノーガード……、くっそーまた負けたー。もっかい!」
「いや一旦休憩にしよう、頭回ってねえだろう。糖分でも補給したほうが良「それもそうだな! じゃあオレ、チョコとアイスとソーセージパン買ってくる!」」
言うが早いか、シュウトは商品をすでに握りしめてレジへと向かう。
「なあシュン姐さん、これなに?」
「これはジェムストーン、通称ジェムスト。私達が高校生の頃流行ってた……やってたゲームよ」
「流行っては無かったんやな……」
「そう、流行っては無かったのよ……」
「へー。けど、おっちゃんがはまるならちゃんとおもろいんやろ」
「ああ、めちゃめちゃ面白い」
俺はスマホを操作して、ジェムストの公式ページを検索する。
ジェムストーンは200X年、携帯ゲームソフトとして発売された。
ジャンルはカードバトルRPG。
ジェムストのキラカードを偶然拾い高値で売りさばこうとする、ヒロインに巻き込まれる形で主人公の少年はカードの世界に足を踏み入れる。
そんなストーリーだ。
ゲームとしての完成度も非常に高く、対戦ゲームのチュートリアルとしても1本のRPGとしても満足度の高い作品となっている。
……だが時代とタイミングが悪かった。
ジェムストの発売当時、世間はポシェモンの新シリーズや劇場版の話題で持ち切り。各種情報媒体でもジェムストは紙面の端に追いやられ、ろくに宣伝も打てないまま生産終了となった。
さらにジェムストの不運は続く。
月日は流れて2年後………………。
「紙版発売! って時期に、後にTCG界の柱となる商品が爆誕しちまった」
「あちゃー、そりゃ勝負にならんて」
「結局、紙版もそれっきりサービス終了。一部のファンが細々と続けるに留まっちまった」
なんてな。
よそ様とタイミングが被らなかったとしても、ジェムスト側にだって欠点や問題点はあった。どっちみち運命は大きく変わんなかっただろうさ。
「つかシュウトの奴遅ぇな。アイス1本食うのに何時間かかってんだ」
「えっと……シュウちゃんは……」
シュンカの奴が目を背けながら、レジ方面から距離を取る。
「うおぉぉぉ、足りねぇぇ! 爺さん、こっからここまで全部くれ!」
「全部ぅ! 相変わらずよく食う奴だよ。ほら、もってきな」
レジ前に目をやると、店ごと食いつくす勢いで食料を手にするシュウトの姿があった。
ここ一応駄菓子屋やぞ、飯を食うなら飲食店行けよ。
まったく……。
続く
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