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幕間 おっちゃんの踊る浮気大捜査線

「おっちゃぁぁぁぁん(ゲラゲラ) おっちゃんがぁ(ゲラゲラ)」

「もう、笑わないでよ!」


 土曜の静かな昼下がり、

 小鳩は大事な話があると細井さん・長井さんの2人を部屋に招いていた。


「ひぃひぃwwだって、おっちゃんがておっちゃんwww」

「そうですよ、先生が浮気なんてするはずないですよ」

「だよね……ボクもそう思いたいけど……」


 小鳩曰く、旦那の浮気現場らしきものを目撃したという。

 本人に直接聞くわけにもいかず、友人である2人に相談しようと考えた。


「この前ね、陽太先生と打ち合わせがあるって出ていって」

「ふぇ! 陽太先生、この辺におるん!?」

「みたい……でね、その日ボクも晩御飯の買い出しに出かけて……」


 小鳩は一瞬頭を抱えてから、続ける。


「買い出しの途中で見ちゃったんだ、先生が女の人と食事してるのを!!」

「な、なんやってーーー!!!」「なんですとーーー!!!」

 小鳩の言葉に、驚愕を隠せない長井さんと細井さん。


「な、なんと……」

「まさか……まさか……陽太先生、女の人やったんや、知らんかったわぁ」

「「ズコーーー!」」

「え? なになに? どないしたん??」

「あ、あのですねえ、私達の先生が陽太先生と打ち合わせがあると嘘をついて、女の人と食事してたんですよ。話の流れ的に」


 細井さんはキョトンとした顔で、

「なんでそないなるん? おっちゃんと陽太先生が、打ち合わせついでにご飯食べとっただけやろ?」

「でもでも、お互い料理をあ~んって、してたよ」

「なんと! それはそれは、動かぬ証拠!」

「そんだけ仲がええんちゃうの?」

「仲がいい! つまりそれは浮気という事ですね!?」


 やけにグイグイ来る長井さんから、距離を置く細井さん。


「そない気になるんなら、確かめてみたらええやん」

「「確かめる?」」

「そ、次の打ち合わせのスケジュールおっちゃんから聞き出して、その女とあってる現場を抑えたらええやん」

「なるほどう、動かぬ証拠をつかむわけですね」

「でも、予定を聞いたら怪しまれるんじゃ……」

「買い出しの都合があるからとか、理由はなんぼでも出せるやんか。いざとなったら、オレらが会いたがってるとでも言えばええ」

「……確かに……それなら。ありがとう、ボクやってみるよ」


 後日、小鳩は作戦通り打ち合わせの日程をつかむことに成功した。

 次の土曜日、小鳩達は打ち合わせ場所へと向かう。


「ファミレスで待ち合わせ……ホンマにデートっぽく思えてきたわ?」

「ふふふふ、何だか刑事ドラマみたいでドキドキしますねぇへへ」

 作戦成功の知らせを耳にした長井さんは、ひどくご満悦の様子だった。

(あ、こいつ探偵ごっこを楽しんどるだけやな)

 と、細井さんは気が付き、それ以上深くは追及しなかった。


「あ、来ましたよ、先生の席に向かってます」

「ビンゴやな、席の位置もええ感じや良う見えるで」


 しばらくすると、小鳩の言うような女性が姿を現した。

 カバンから何やら取り出そうとしたが、それをおっちゃんが遮り、

「先に飯食おうぜ」とでもいうように、メニューを目の前に広げる。


「細井さん、どう見ます?」

「どうって、普通に打ち合わせやろ、さっき資料ちらっとみえたし」

「でもでも、あの人オーダーを決めるのに手間取ってますよ、いくらなんでも時間のかけすぎです。ああやって可愛さアピールしてるんですよ憎たらしい」

「可愛い……長考って相手に失礼なんじゃ?」

「時と場合です! ああやってわざと焦らして、ペースを自分の物にするんです」

「……番外戦術だね。確かに、タイミング次第ではブラフになるのかも」


 細井さんは、2人の悲しい行き違いをしり目に現場に視線を戻す。

 結局、そこからさらに5分以上経ってもオーダーは決まらない。

 そんな中、おっちゃんは何かを思いついたように席を立ち歩き始めた。


「よう、お前ら何喰うかもう決めたか?」


 まっすぐに、小鳩達がいる席に向かって。


「い、いつから気が付いてたん?」

「店員さんが、何名様ですか? って聞いた辺りから「最初からやん!」え? 誰かとかくれんぼでもしてたのか、俺はてっきり陽太先生にこっそり会いに来たとばかり」

「そそそ、そうなんですよ。私達、その陽太先生にお会いしたくて。でも変ですねぇ~、見知らぬ女の人しか見当たりませんよ?」

「見知らぬって……あった事あるだろ、俺とミカの結婚式で」

「「「結婚式?」」」


 小鳩、細井さん、長井さんは、

「記憶にございませんが」といった様子でキョトンとしていた。


「お久し振りですね皆さん、兄がいつもお世話になってます」

 呆然と佇む3人の元に、先生は駆け寄り丁寧な様子であいさつをする。


「兄?」「妹さん?」

「そうだぜ、こいつは俺の妹で漫画家をやってる……って紹介しなかったか?」

「人が大勢いいたもので誰が誰やら……」

「ボク、緊張していっぱいいっぱいで……」

「ほら、やっぱ浮気とちゃうやん、妹さんにご飯おごってただけやん」

「浮気ぃぃ、なんだそりゃ?」


 細井さんは、ここまでの経緯をおっちゃん達2人に説明した。


「というわけで、オレら浮気調査する事になってん」

「へぇ~、あんときのを」

「まさか見られてたなんて……」

「そそ、そうですよ! いくら兄妹だからって、公衆の面前であ~んは無いでしょあ~んは、まだ何かお2人には隠された事情があるのでは!」


 探偵ごっこを続けたい長井さんは、なおも必死に食い下がる。


「あれか? あれはな、こいつ優柔不断でメニューが決められねえから、俺と2人で半分こしてたんだよ。今だってそうだろ?」

「すみません皆さん、こちらの都合で……」


 陽太先生は、料理の山を目の前に頭を下げる。

 今回も何を食べるか決められず、全員別々の料理を注文し分け合う展開になっていた。


「なあミカ、これで分かっただろ。俺と先生は兄妹で、断じて浮気相手なんかじゃねえってさ」

「……本当に……いいのかな」

「なに?」


 自信満々に断じるおっちゃんと比べて、小鳩はうつむきながら答える。


「だって、妹さん……すごく綺麗で「まあ、お上手」今回は早とちりだったけど、ボクなんかよりもっと魅力的な人が他にいるなら……ボクは先生の為にも身を引いた方がいいんじゃないかっ「何言ってんだよ」きゃっ!」

 おっちゃんは、小鳩の肩を抱いた。


「なんかってなんだよ、なんかって? 俺にとっちゃ、お前はオリンピックの金メダルで、アカデミー賞でノーベル賞なんだぜ、勝手にどっか行こうとすんじゃねえよw」

「うっわ、おっちゃんひど! Kちゃん、物扱いやん」

「いやいやいや、それだけ大事って例えですよ、例え!」


 おっちゃんのプロポーズに、細井さんがツッコミを入れ、そこにさらに長井さんがツッコミを重ねる。ボケの存在しない、ツッコミ漫才が成立した瞬間であった。


「んじゃ、腹も膨れたし誤解も解けたみてえだしお前らは帰んな」

「いえいえ、打ち合せならテスターである我々もご一緒に」

「? ん、ああ、今日はカードの話は無しで、漫画の今後の展開についての話し合いなんだよ」


 陽太は持ち込んだ資料を、カバンから取り出す。


「さっきも言ったけど、こいつ優柔不断でさ漫画の今後の展開をどうするのかも決められないんだよ」

「そうなんですよぉぉ、アイディアはあるんですけど後2話ぐらいで練習試合が終わって、それから次の試合か学園パートか、それとも帰りの駅で新たなライバルキャラの出会いかあぁぁぁ!!!」

「よっしゃ、全員引き上げるで!」

「え? せっかくですしもっと聞きたいです妹さんの話」

「あかんて、ここにいたらネタバレくろうてしまう! 今の一瞬で試合の終了時間聞いてもうた、このままおったらこの先、数週間の楽しみがなくなってまう!」


 細井さんは、小鳩達の手を引きそそくさと店を後にした。


「……全員行った?」

「ああ」

「…………ああァァびくったぁぁあ! 兄貴、なんで皆おるんよ、わし人と会うの苦手なんじゃけど!」


 知り合いの姿が消えたのを確認し、陽太は敬語を外し素の状態で話し始めた。


「いやはや俺も最初は驚いたよ、でもまさか俺の浮気w調査とかww」

「笑うな! ……まあええわ、けど席呼ぶんならちゃんと一旦声かけて、いきなり人呼ばれたらわしの心臓もたんから」

「え? 店にいたの気づいてなかったのか「目の前に来るまでな」てっきり気づいてて、あえて無視してるもんかと……悪かった」

「まあええよ、おかげで食べたかったもん全部食べれたし」



 その後の話し合いだが、おっちゃんからの

「そういや後2話で試合終了じゃ単行本で余るだろ、次巻への引きはどうなる?」

 の一言で、インパクト優先でライバルキャラルートが選ばれた。


 時間にして、約30秒。

 電話で事足りる内容であった……。


 続く

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