第26話 動画撮影大反省会・後編
――カキカキカキ
「先生? 何をされているのですか?」
「今回みたいなミスが起こんないよう、開発日誌をまとめてる」
「おつかれさまです。ところで先生は、何故1人回しの時点であれが危険だと判断されたのですか?」
「そりゃ長井さん、あれだよあれ。まあその辺も今資料にまとめてるから読んどいてくれ」
Xユナイトで、最も時間をかけたのがユナイトユニットの性能について。
むしろユナイトユニットの性能から逆算して、ルールを固めていったといっても過言ではない。
魔王 オールナイトⅢ世
キャパシティ:4
パワー:3
サポート:0
ダメージ:1
【ユナイト】
・相手のターン終了時に、サプライズカードを1枚サーチしてセットしてもよい。
例えばこのカード、毎ターン1枚サーチできる強力な効果を持っている。
だがそれは、戦闘面で有利を取れないようパワーを抑える為にあえて効果を強くするための措置だ。ただ単純にパワーを落とす事も検討したが、それだと切り札としての爽快感に欠ける。
なので戦況を左右する強力なシステムユニットとして、ユナイトカードはデザインしていこうと方向性を決めた。
「ユナイトユニットは場を離れないだろ。壁として優秀すぎると、ゲームが進まなすぎてつまんないなと思ったんだよ」
「なるほど、そのようなお考えが」
「他にもガイドさんなんかも、最初と結構変えてんだ」
「どんなふうにですか?」
「最初はさ、支援がないと攻撃できない効果だったんだ。それだと、攻撃しないで壁として待機される危険があった。だから防御に回すにも、デメリットがあるように変えたんだ」
「あっ、たしかに!」
「ん? はいはい、おじさま!」
俺と長井さんが話していると、コハクさんが挙手をした。
「どした、コハクさん?」
「えっとほら、伏せたカードって攻撃しても壊せるでしょ?」
「おう、そうだぜ」
「それって、ユナイトやガイドさんと同じで、守ってばかりにならないようにだよね?」
「大正解! …………まあ偶然だけど、昔読んだ漫画のワンシーンを再現したら偶然いい塩梅になった」
長井さんやコハクさんの発想や好奇心、本当に頭が下がる。
意見や感想はやっぱ、いろんな奴から貰わねえとな。
カキカキ……
「なあ、ところで話し戻すけどピンクピンク―は禁止でいいか?」
「いいんじゃないでしょうか? 再編集も撮り直しも大変ですし、動画用の特別なカードという事で」
長井さんは、そう答える。
ミカとコハクさんも同意した。
「え~、オレ、ピンクピンク―普段使いしたい」
ただ1人、細井さんだけが反対意見を出した。
「なんとかならへんの?」
「けどそれだと、他のユナイトが産廃扱いだしな」
壊れカードが1枚あると「もうこれでいいじゃん」っつって、他のカードが使われなくなっちまう。作る側になってみてわかったが、ゲームバランス云々より他のカードに割いた開発コストを無駄にされるのがマジムカつく。
使われねえカード作るぐらいなら、昼寝してたほうがマシってもんだ。
「どうしてもだめなん?」
更に食い下がってくる細井さん。
細井さんが、こういうわがままを言うのは珍しい。
「どうした? なんか事情があるのか?」
「あ……いや……ピンクピンク―の衣装な、メチャ高いねん」
「だろうな」
「せやから、せめてフィールドの中だけでも、ピンクピンク―でおりたいんよ」
……衣装が高ぇから、カードで補いたい……か。
俺は酸素を肺に取り込み、はっきりと細井さんにこう伝えた。
「よっし、それ採用! ピンクピンク―の禁止は無しだ!」
「やったーー」
「「「えええぇぇぇぇぇええええええ!!!!」」」
両手を振り上げ、喜ぶ細井さん。
俺の返答に驚きを隠せない、ミカ、長井さん、コハクさん。
「まあ落ち着けって、ちゃんと説明すっから」
俺は3人をなだめてから、説明を始める。
「そもそもXユナイトのテーマは、変身なんだよ。勇者・魔王・巨大ロボや犬や猫まで、自分が普段できない事やなれない物にユナイトする擬似体験を味わってもらおうとしたのがそもそもの始まりなんだよ」
「へ~」
「それも日誌に書いておいてね」
「あっはい。……でだ、せっかく細井さんがそのテーマ通り、ピンクピンク―を気に入ってくれたわけだ。そこを尊重しねえなら、ゲーム作った意味が無え」
不満顔の3人へ、俺はもう一言付け足す。
「対戦ゲームにおいて、勝率7割を超えない場合プレイヤーはゲームに不満を覚える、ってデータがある。五分五分が限界な以上、ゲーム外の魅力が無きゃ対戦ゲームは成り立たねえんだ。分かってくれ」
「けどカードパワーは?」
「どっかの数値をいじくって、弱体化させよう。なあに、動画の方もうまい事再編集すりゃあいいさ。もちろん俺も手伝う」
そこまで言って、やっとこさ理解を得られた事で編集作業に取り掛かる。
ところが……。
「おいどうなってやがる、どこの数値いじってもゲームが成立しねえ!」
「どうもなにも、デッキはカードの力を引き出すように組むでしょ?」
「だからってコストからパワーまで、余すとこなく引き出すなよ!」
あちらを立てれば、こちらが立たず。
ピンクピンク―のCPとパワー、ダメージに及ぶまで、どの数値を変化させても対戦結果に支障が出てしまう。
「じゃあシーンごと切り取って別展開を」
「衣装が全部違うから無理」
「ならもう一回、撮り直しは?」
「お店とか、いろいろ許可とらなきゃだから無理」
「ギャァァァ! だから手の込んだことするの嫌だったんだよ!!」
手の込んだことをすると、後からごまかしがきかなくなる。
だから俺は、最初の撮影は声と盤面だけの簡素なものにしようと思っていた。
何せ俺達は素人だ。絶対にミスや間違いが起こり、撮り直しやり直しは頻発するはず。だから撮影に慣れるためにも、簡単なとこから始めようと思ったんだ。
「なあ……おっちゃん、もうええよ禁止にしよ」
しばらく黙っていた細井さんが、口を開いた。
「もとわといえば、オレのワガママが始まりやんか。ピンクピンク―も、そもそも撮影の仕方変えたんも全部オレが言い出した事やろ。せやから、ワガママの報いは受けるし。な、おっちゃんw」
「やだ、何か負けた気がする」
俺は、即答した。
「こっから先もトラブルは絶対あるんだ、こんぐらい対処できなくてどうする」
「せやけど……」
とは言っても、今の俺に画期的なアイディアは無い。
でもこんな場合の、対処法は知ってる。
「なあ、そこの棚にある漫画とDVD全部出してくれ」
「「全部!?」」
「ああ、下手な考え休むに似たり、困ったときは先人の知恵を借りるんだ」
用意したのは、歴代のカード作品達。
きっとこの中に問題解決のヒントが――――!?
「悪い、やっぱ戻してくれ。いいアイディアを思いついちまった」
「「ええ~~~!」」
「悪かったって。でだ、なんで思いつかなかったんだ今まで、ピンクピンク―が問題なのは環境を荒らすからだろ、だったら荒らせねえようにすれば良かったんだ!」
「つまり、禁止でしょ? それ」
「いやその逆、使えなくするんじゃあねえ、
細井さんだけが使える専用カードにしちまえばいいんだ!!!」
カードアニメあるある、主人公だけが使える特別なカード。
そこに、ピンクピンク―を当てはめればいい。
「それってずるじゃん! 細井さんしか勝てなくなっちゃうよ」
「フリプの時は本人の意思に任せる、まあ友達無くすような真似はしねえさ」
うんうん、と細井さんがうなずく。
様々な意見や質問が飛び交う中、俺は順番に返答していく。
その後、俺の指示に従い動画の非公開設定は解除。
陽太先生のイラストも出来上がり、動画は初投稿ながら結構伸びた。
そして、イラストの仕上がりと同時に俺は自分のブログを更新する。
『カードプロフェッサー出陣! 強力なプレイヤーが君を待つ』
そうタイトルをつけて、新企画を発表する。
告知内容は、リモート大会の開催について。
そして、その参加者の中に未知のカードを手にした、開発関係者が紛れ込んでいるといった内容だ。
未知のカードについては伏せてあるが、ミカ達が新たに撮影した対戦動画の中でカードリストに存在しないカードを何枚か見せているので、それがヒントになっている(あと再生数稼ぎ)。
さてと、動画に大会とだんだん盛り上がってきたし、忙しくなるぞ~。
――第6章 完――
少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。




