第25話 動画撮影大反省会・前編
「おっちゃああああああああん、ごべーーーーん!!! オレが悪かったァーーーー!!!!」
「おう……。ミカ達は買い物に出てる、まあ座れや」
とある静かな夕暮れ前、俺のアパートの玄関扉を蹴破るように、細井さんがローリング土下座を披露しながら現れた。
その背後からは、長井さんが息も絶え絶えにやって来た。
細井さんの手には、今回の反省をまとめたノートが握られていた。
ノートの内容を要約すると、報告・連絡・相談が足りていなかったということ。
また細井さんは、非公開状態動画投稿できる事や、メールで動画ファイルを送るやり方を知らなかったので、そこに関しても一言連絡を入れていればよかったと書かれていた。
「まぁそこに関しては、細井さんなら何かしら連絡してくるだろうと思ってほったらかしにしてたからな。俺もあんまし人の事言える立場じゃねえけどな」
「じゃ、じゃあ許してくれるん?」
「あ? 許す? 何のことだ?」
「だって、おっちゃんさっき」
――――
『……おっちゃん、怒っとるん? オレなんかしてもうた?』
「ああ、お前のピンクピンク―についてちょっとな」
――――
「って言うとったから、オレめちゃめちゃ怒られるもんやと」
「あ、ああ、悪い、ありゃ自分の監督不行届にキレてたんだよ。結局、細井さんが原因と対策をノートにまとめてきちまったから、俺のする事が無くなっちまったよ」
「えと、喜んでええのんオレ?」
「ああ、まったくよくできた奴だよ。次もその調子で頼むぜ」
さてと、
俺は足を組みなおす。
「動画については、報連相が足りなかったという事で。もう1つの方、ピンクピンク―の開発理由と今後の対応について。人を待たせてるからな、出来れば今日中に決めときたい」
「人? 誰を待たせてるん?」
「ほら、俺広報やるって言っておいたろ、だから知り合いの漫画家に応援イラストを……知ってるか? 島角陽太先生って「しーまーかーどー!!!!」お、おう」
「まじで、まじなん! 島角先生って言ったら、今度アニメや実写ドラマ化する漫画の作者やん! なんでそないな人がオレらの動画に応援イラストなんぞを!」
「……えっと、この前焼き肉おごってもらった礼だとか言ってたか?」
先生と焼き肉行ったんか、みたいな顔で硬直する細井さん。
やべ、話が脱線した。
「はいはい! 陽太先生に負担をかけないように、シャキッと行こうぜ」
「おおう!」
「んじゃあまずは――――」
と切り出したところで、ミカとコハクさんが買い物から戻ってきた。
まずは、ピンクピンク―の開発理由。
カードの新規実装はミカも一部担当しているので、理由を尋ねる。
「ほう、動画用の目玉カードね、そりゃぜひとも欲しいな」
「でしょ。で、細井さんからアイディアを貰って、ピンクピンク―を作ったんだ」
その後、聞き取りを続けたところ、ピンク衣装を着てみたい細井さんからの熱烈アピールがあったようだ。
ミカの方も、細井さんの好きは大事にしたいという事で最終的にはOKを出した。
「それでピンクピンク―を、なるほどねぇ。ようやく合点がいった、つまり細井さんのイメージカード、いわゆる相棒カードになるから特別強く作ったわけだな」
これは俺の価値観になるが、強すぎるカードってやつは絶対必要だ。
例えばストーリー上での主人公やライバル、ボスキャラの使うカードは強くなきゃだめだ。
主人公カードが弱いと、弱いカードで勝てる主人公への尊敬より、弱いカードを握らされたことへの怒りが勝り結果、主人公やゲームそのものに怒りの矛先が向く事になる。
強くしすぎるのも問題だが、今後動画投稿を続けていくなら演者1人1人に看板カードがあっても悪くはない。
そう俺が納得していたところ、
「えっと、そんなに強いのかなピンクピンク―?」
と、ミカがそんな事を言い出した。
「何度か使って試したけど大丈夫だったよ?」
と、コハクさんからも補足が入る。
「ありゃ、そうなのか?」
俺だって、ミカ達に任せきりにしてきたわけじゃあない。
ミカ達にカードリストを渡す前に自分で何度か回してみて、明らかにやばいカードは除外した上でリストを渡す事にしている。
ピンクピンク―は、その除外されたカード群の1枚と同じテキストだったから、さあどうしようかと話し合おうと思ったんだが……俺の早合点だったのか?
俺の早合点であれば、そのままピンクピンク―は実装、動画も非公開を解除し陽太先生にも普通に仕事してもらおう……そう思っていたのだが、どうやらテストプレイの環境に問題があった事が発覚した。
対戦するのは自分達だからとミカと細井さん2人だけでテストプレイを行い、長井さんやコハクさんはデータの記録に専念していたのだ。
俺はその時のデッキを、ミカ達の前で再構築する。
俺の考え違いでありますように、と願いながら。
「まずピンクピンク―は4枚フル投入。勇×合ギミックはいらん、空いたスペースにドローと防御カード、あとピン刺し札が多いから全とっかえ」
「ええ~、そこの対応力が強みなのに……」
「いんやピンクピンク―のカードパワーで、小細工は全部ひねりつぶす」
その後ミカと俺とで、先攻後攻を入れ替えながらデッキを何度も回す。
結果は、ピンクピンク―側の全勝。
「そ、そんな……それじゃあボク達のやってきたことは……」
「間違いだったって証明されちまったな、残念ながら……」
ミカと細井さん2人の高い実力が、今回は裏目に出た。
2人は今のカードプールの中から、確定サーチが可能な勇×合ギミックに目を付けた。ピンクピンク―を確実に出すためにだ。
そこまでは良かったのだが、対戦を繰り返していくうちにサーチ候補の択を増やし対応力を底上げする方向に舵を切ってしまった。
その結果、俺が組んだようなピンクピンク―特化構築を見逃してしまい、カード査定の間違いを正せないまま本番に臨んでしまったわけだ。
「このデッキを、例えば長井さんやコハクさんにも握らせてたら結果は違ったかもな」
「あ~、私達記録係に徹してましたね、確か」
「そうそう、戦うのは2人だから邪魔しちゃ悪いと思って」
ミカと細井さんから、返事は無かった。
2人とも、心ここにあらずと言った様子だった。
「だぁぁぁあ! プロのクリエイターだって禁止や制限カード出してんだ、なのにいっちょ前にショック受けてんじゃあねえ! はいはい次いくぞ、次、切り替え切り替え」
「「…………はい」」
後編へ続く
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