第24話 監督のあとしまつ
細井:ライフ3
小鳩:ライフ6
ターンが経過し、中盤から終盤へ。
ライフも手札も尽きかけの細井さんに対して、ミカはライフを温存しながら戦っている。
超合体魔人ガイザード
キャパシティ:2
パワー:6
サポート:0
ダメージ:2
【発進4】(パワー4以上のユニットから支援を受けていなければ、このユニットのパワーは0として扱う)
・このユニットが場にある間、【操縦】を持つ後列のユニットは攻撃されない。
それもそのはず、
Xユナイトは敵ユニットを全滅させて、直接攻撃を与える事で初めてダメージが通る。
パワー6のガイザードは、強力な矛であり頑強な盾。
細井さんは、これの突破に手数を割かざるおえないのだ。
「強すぎじゃね? このロボット」
「まあ支援なしじゃパワー0のポンコツだからな、支援ユニットを除去していけばもっと捌きやすいんだけどな……」
「あっ攻撃は無理でも、除去魔法ならいけるんか」
陽太先生の言う通り。
ガイザードが封じるのは攻撃のみ、破壊やバウンス1枚でもあれば戦線は崩壊する。いかにしてロボット達の大パワーを相手に押し付けるか、その駆け引きがミカのデッキの醍醐味だ。
しかし、細井さんのデッキには戦闘補助のカードばかりが優先的に採用されており、パワーアドバンテージをもろに喰らう形となっている。
強化カードを重ね掛けして無理やり壁を突破しているせいで、手札枚数に差が生まれ、そこで生まれた戦力差が終盤戦までのライフ差として現れているのだ。
ドローカードを多数搭載し手札不足を解消しようとしている様子だが、そのドローカードにテンポを奪われて盤面有利を取られているようにも見える。
細井さんのビルディングの拙さか、あるいは……。
「逆転の為の演出か? それとも打ち合わせもなく普段使いのデッキで対戦してんのか?」
「流石に演出じゃろ、動画とっとんやし」
「いや~こっから逆転って、流石に運ゲー感が……」
そう思った矢先、細井さんは一発逆転の一手を放った。
制作者の俺でさえも、思いつかなかった驚愕の方法を。
『オレのターン、ドロー!』
ドロー、そしてセットフェイズへ。
『オレは天才の魔女ウララを召喚。そしてアクション、増援をセット』
セットフェイズでは手札から
・ユニット
・サプライズ
そしてアクションカード(自分のメインフェイズに使えるカード)を場に配置する事が出来る。
裏向きで置くサプライズとは違い、アクションは表向きで場に出しユニットのようにキャパシティが存在する。
メインにどれだけドローできても、使えるのは次のセットフェイズから。
フィールドを仮の手札のように使う事で、いわゆるソリティアを防止しようと考えたシステムだ。
『アクション増援を使用、効果で2ドロー……キタ!』
ただし何事にも例外はある。
『今引いた剣の魔女ラジェシカの暴走発動、そのままフィールドへ!』
剣の魔女ラジェシカ
キャパシティ:2
パワー:5
サポート:0
ダメージ:3
【暴走】(このカードが手札に加わった時、直ちに使用しなけらばならない)
~フレーバー~
ラジェシカ「やあやあ私は王国第7騎士団団長の娘ラジェシカ、いざ尋常に勝負!」
ウララ「ちょ! 奇襲作戦だって説明したじゃん!!」
この暴走能力のように、セットフェイズを無視するカードなんかもある。
基本的には手札に温存できないデメリットだが……
略奪忍者 ステイル
キャパシティ:2
パワー:1
サポート:3
ダメージ:1
・このユニットが相手にダメージを与えた時、1ドロー。
こういったバトル中にドローできるカードと組み合わせると、盤面を書き換えて追加攻撃を可能にするメリットにもなる。
そしてこのラジェシカの召喚が、新たな効果を連鎖する。
細井さんは、最初に場に出したウララの上へとラジェシカを重ねる。
同じエリアにユニットが重なった場合、古い方が押し出され墓地に行く。ただしこれも先程と同じく例外が存在する。
天才の魔女ウララ
キャパシティ:1
パワー:1
サポート:1
ダメージ:0
【勇×合】
~フレーバー~
ココ「どうしても、そこを通す気はないのね……」
ウララ「はい、全力で止めますよココ先輩。 やるよリタ!」
リタ「ほ~い」
勇×合
このスキルを持つユニットと、それとは別のユニットが同じエリアに存在するとき、ルールによる押し出しが処理されるより先に発動する能力。
『ウララとラジェシカを素材に勇×合! CP1のウララとCP2のラジェシカ、2体の合計CPつまりCP3以下のユニットを素材となった2枚の上に重ねて場に出す!』
『ぐっ! 対抗札が……』
カード2枚をコストに……いや、ユニットを合体させデッキから指定したユニットを登場させる必殺スキル、それが勇×合。
勇×合先に選ばれるカードの多くは、自身に重なっているカードをコストに力を発揮するようデザインしていて、切り札の調達と必殺スキルの弾薬の補充両方をこなせる。
ちなみに、合体中に素材を破壊されると合体は中断される。ウララがそうであるように、パワーの低い素材ユニットは軽量除去の的にされるので注意が必要だ。
……さてと、どんなユニットが飛び出して来るやら。
細井さんはデッキをパラパラとめくり、目当てのカードを探す。
『ウララとラジェシカで 勇×合! そしてユナイト!』
宣言と同時に細井さんの体が、宙に舞い上がる。
ユナイト、意味は結束や一体化。
プレイヤーとユニットが、1つになり戦う事が出来る能力だ。
自分自身がユニットとして戦場へ出るため、それ相応のリスクは発生するが、それを差し引いても余りある効果を持っている。
魔王 オールナイトⅢ世
キャパシティ:4
パワー:3
サポート:0
ダメージ:1
【ユナイト】
・相手のターン終了時に、サプライズカードを1枚サーチしてセットしてもよい。
~フレーバー~
オールナイトⅢ世「未来の勇者諸君、ようこそ我がダンジョンへ。歓迎しよう、我が贄として遥々――」
リタ「受付あっちだってさ」
ラジェシカ「腕が鳴るな、一体どんな強敵が」
ウララ「いや聞こう! 魔王さんの演説、最後まで」
例えばこのカード、
毎ターン、カードをサーチできる強力な効果を持っている。
そのかわりCPを圧迫し、パワーもそれほど高くない。
だがユナイト中は場を離れる事もなく、CPも0として扱われるため、サーチ効果を使い放題って訳だ。
さてさて、細井さんはどんなユニットとユナイトするのか。
宙に舞い上がった細井さんが、まばゆい光に包まれる。
『ユナイト! 桃色の魔女 ピンクピンク―』
――――は? …………は?
光の中から現れたのは、上から下までピンク一色のフリフリ衣装。
まぎれもなく、ピンクピンクーそのものだった。
桃色の魔女 ピンクピンク―
キャパシティ:3
パワー:7
サポート:0
ダメージ:2
【ユナイト】
「おうおうおう、はでじゃなー」
「そだねー」
ピンクピンク―の登場から、戦局は一転。
ガイザードらロボ軍団のパワーの前に攻め手を欠いていた細井さんが、今度は逆にパワー勝負を押し付ける形となった。
ユナイトユニットは、場を離れない。
そのかわり相手とのパワー勝負に負けると、直接攻撃されたのと同じようにダメージを受ける。つまりピンクピンク―のパワー7を突破できればミカの勝利だ。
だがここで生きてくるのが、細井さんのデッキ構築。
ふんだんに詰め込まれた戦闘補助を受けて、ピンクピンク―は無敵の要塞と化していた。敵の攻撃を受け止め躱し、気が付けばミカの最後のライフをピンクピンク―が奪っていた。
『チーズインハンバーグのお客様』
『はいはい、私私ィ』
バトルが終了し、あたりの風景が元のファミレスへと戻った。
全員が笑顔で食卓を囲み、料理を一口頬張ったところで動画は終了した。
「で、わしはどんな絵を描きゃいいんじゃ?」
「あ~~、一旦保留で。細井さん達と動画の反省会してからな」
「そか、んなら適当にこっちで始めとくから」
俺は先生との通話を切り、細井さんに連絡をした。
「よお、見たぜ動画」
『どやどや、めっちゃすごかったやろ! ああ、何万再生ぐらいいくやろなぁ』
「その事で今から話がある、長井さんも一緒にな」
『……おっちゃん、怒っとるん? オレなんかしてもうた?』
「ああ、お前のピンクピンク―についてちょっとな」
先ほど活躍したピンクピンク―、あれは細井さんが勝手に作ったものだ。
ただのオリカならまだよかったが、あれはゲームバランスを崩壊させる壊れカードに間違いなく、それが動画として世に出ちまった。
「とにかく、一旦この動画は非公開だ」
『どどど、どないしよ、おっちゃん……』
「それを今から考えるんだよ……」
続く
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