第23話 漫画家とネタ帳
ピコン♪
「お? もう動画完成したのか、どれどれ……」
撮影開始の宣言から数日。
俺は動画告知用のイラストをと、知り合いの漫画家に依頼の電話をしていた。
すると、対戦動画用に新設したチャンネルに通知が届いた。
「悪ぃ陽太先生、さっきの告知イラストの話、応援イラストに変更で」
「変更なら、高くつくぞぉ~」
受話器の向こうのぬぼっとした声に、俺は「いくらだ?」と返す。
「カップ焼きそば1週間分。夜食切らした」
「へいへい、今度持って行く」
「ん」
と愛想のないやり取りを交わす。
いつもの3倍盛りでいいか?
と聞こうとしたら、受話器の向こうから細井さんの声が聞こえてきた。
「なあ、今動画見てるか?」
「タコにも」
「なあ、どうせなら一緒に見ようぜ」
「ええ~~~メンド」
文句を言いながら、マイクを接続する音が聞こえてきたので、俺も準備をして一旦電話を切る。
「んじゃ、3・2・1・再生」
『や~、いっぱい買っちゃったね』
『せやな~、なあな、これめっちゃ可愛ゆない?』
『ですです』
動画を再生すると、細井さん達が買い物するシーンから始まった。
各々が服やアクセサリーなんかが詰め込まれた、紙袋を手にしている。
『あ、あそこにファミレスがあるよ、何か食べていこうよ』
コハクさんの提案で、店へ向かう一同。
――ドン!!
そして、始まるカードバトル。
テーブルにプレイマットを敷き、バトル開始に準備は万全。
「いや、待て待て待て待て! 唐突!!! 飯食うんじゃなかったのかよ!?」
「兄貴、うっさい!」
「すんません」
スタートの合図と同時に、パリンと背景が砕け散る。
真っ黒だった背景が色を取り戻すと、そこは遥か上空にある天空ステージ。
木製だったはずのテーブルも一転、半透明なプレイボードへと変化した。
カラカラカラ~
と、10面ダイスを2つロールする。
『オレのターン、ドロー』
ダイスの結果、先行を勝ち取った細井さんがゲームを進める。
『行け』
そう指示を飛ばすと、5つある場の1つからユニットが出現する。
略奪忍者 ステイル
キャパシティ:2
パワー:1
サポート:3
ダメージ:1
・このユニットが相手にダメージを与えた時、1ドロー。
~フレーバー~
冒険者ギルド管轄、初心者ダンジョンを徘徊するモンスター。ポーションや毒消し草をかすめとりる彼からは、アイテム管理の大切さを学ぶことができるのだ。
『さらにカードを2枚セット、これでバトル』
■□●□■
●にはステイルが、■にはセットカードが配置された。
□の空きスペースが2つあるが、このターンは使わないらしい。
『ステイルで攻撃! これが通れば1ドローや!』
『それはまずいね、リアクション! 回避!』
回避
リアクション(手札からいつでも使える)
・自分への戦闘ダメージを0にする。
ステイルが刀を握り、ミカに切りかかる。
しかしそれは残像であり、背後から銃口を突きつけられたステイルは自身の不利を悟ると、銃口から逃れるように身をひるがえし自軍へと帰還した。
これで、細井さんのターンは終了。
『ボクのターン』
ミカはルールに従い、カードを2枚ドローする。
『超合体魔人ガイザードをセンターに!』
超合体魔人ガイザード
キャパシティ:2
パワー:6
サポート:0
ダメージ:2
【発進4】(パワー4以上のユニットから支援を受けていなければ、このユニットのパワーは0として扱う)
・このユニットが場にある間、【操縦】を持つ後列のユニットは攻撃されない。
~フレーバー~
見習いヒーロー ケイトの相棒ロボ。あらゆるヒーローロボとの合体を可能にする、変形機構を持つ。しかし、実績のない彼らとの合体を承諾してくれるヒーローはまだいない。
『そしてその相棒、ケイトをレフトに!』
見習いヒーロー ケイト
キャパシティ:0
パワー:1
サポート:2
ダメージ:0
【操縦4】(このユニットが【発進】を持つユニットを支援するとき、このユニットのパワーを4として扱う)
・ターン終了時、このユニットはリブートする。
~フレーバー~
青の文化圏、ニューヒーローシティで暮らす女の子。普段はスクールに通いながら、相棒のガイザードと共にヒーローを目指して活動中。
『さらに、見習いリポーター サティをライトに』
見習いリポーター サティ
キャパシティ:1
パワー:2
サポート:3
ダメージ:1
【操縦4】(このユニットが【発進】を持つユニットを支援するとき、このユニットのパワーを4として扱う)
~フレーバー~
青の文化圏、ニューヒーローシティで暮らす女の子。とある事件をきっかけにケイトの追っかけを始めた彼女は、相棒のモッフンと共に今日も空を駆け回るのであった。
2人の少女達は、ガイザードの操縦席へと乗り込む。
これでガイザードが破壊されない限り、2人の安全は約束される。
『さて、これで準備完了。バトル!
ケイトの支援、ガイザードでステイルを攻撃!』
ガイザード:パワー6
+
ケイト:サポート3
=
ガイザード:パワー9
『ステイルのパワーはたったの1、この攻撃は防げない!』
『防げんのなら、かわせばええ! オープン!』
馬鹿め、そっちは本体だ!!
サプライズ(場に伏せて条件を満たした時使える)
・自分のユニットが攻撃されている時に使える。
・その攻撃を無効にする。
・ライフを2払う事でこのカードをセットし直してもよい。
ステイルは、変わり身の術で攻撃を回避。
回避した背後には細井さんが立っており、ガイザードのタックルが直撃する。
細井さん:ライフ10→8
『そのカードは厄介だね、破壊させてもらうよ』
今度は、サティで攻撃。
彼女の相棒、雨雲のもっふんと共に天高く飛びあがると、セットされたカードに向けてカミナリを落とし破壊する。
『ケイトはリブート、これでターンエンド』
「なるほどな、細井さんは魔王のダンジョンデッキ。ミカの方はロボヒーローデッキか……なあ、また音がずれてねえか陽太先生?」
「動画止めて、テキスト確認しとる」
「後にしろよ! 今は対戦に集中しろよ」
「え~~テキスト確認せんと今のまんじゃと
・ライフは10点
・ドローは2枚(先行は1枚)
・フィールドはユニット・サポートカード共有
・伏せカードはアタックで破壊可能
・バトル中は支援ユニットで支援が可能
……ぐらいしか分からんし」
「分かりすぎだろ! まだ2ターン目やぞ!」
モニターの向こうから、
「またわし何かやっちゃいました?」
みたいな顔が透けて見えるようだった。
こいつの超速理解、小学生の頃から変わってねえ。
「後、キャパシティってあるだろ?」
「あるな」
「それの合計が5を超えないように配置しないとダメなんだ」
「ふぅ~ん、コストみたいな」
質問に答えると、更に他の質問が飛んできた。
「なあなあ兄貴」
「なんだよ?」
「このニューヒーローシティってどんなとこ?」
「ん? 町全体が映画や特撮の撮影スタジオになってんだ。学校の窓の向こうで、怪獣が暴れてたりヒーローが空飛びまわってたりすんだよ」
「うっわ迷惑! 住人らの苦情すごそう」
「それ前提で暮らしてるしなw。それと映画とは別に、役者じゃない本物のヒーローが悪人退治したり救助活動する姿を報道ヘリが中継したりで、まあ騒がしい街だよ」
「このサティって子が目指してんのがそれか?」
「そうそう」
「へぇ~、あの忍者にもなんか設定が?「あるある、ありまくるよ」」
俺がそう答えると、先生からため息が。
「兄貴すごいなぁ、わしそんなに設定思いつかんよ」
「おい漫画家」
「わしの漫画パクリばっかやわ、漫画読み漁って、アニメと映画見て知り合いにネタがないか走り回って、それの継ぎはぎ」
「それパクリちゃう、ただのインプットや」
「ほんまに?」
「お前の胃袋は肉と野菜別の袋に入んのか? 違うだろ全部一緒こただろ、ネタも同じで見たもの聞いたものが頭の栄養になるんだよ」
俺がそういうと、モニターの向こうからカリカリと音が。
「何の音だ?」
「今のセリフメモしとる――お前の胃袋は……」
俺は思った、
こいつはなるべくして漫画家になったんだと。
続く
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