第21話 対戦動画を撮影しよう
「おっちゃああああああああん、
見て見てこれめっさ可愛くないこれ」
「へいへい、かわいいかわいい」
「やた!」
全身ピンク一色の衣装をまとった長井さんに、俺はお世辞を言う。
とある土曜の静かな昼下がり、俺はある事に気が付き準備を始めた。
エースオブワン、ヴァベルの試練、色々なゲームを考えては紹介記事をネットにあげてきたわけだが、今までただの一度も対戦動画を作ってこないままだった。
カードの紹介と言えば対戦動画。
俺はいつものメンバーに声をかけて撮影を開始した。
「似合わないですよ! 細井さんにはピンクよりこういう大人っぽい黒の衣装がとってもお似合いですよぉ」
「いやや! パパママと同じ事言うて。似合う似合わんやない! オレは今日1日ピンク一色のピンクピンク―として生活するんや!(血涙)」
……訂正、撮影を開始……しようと思ったところだ。
長細コンビに事情を話すと「なら、撮影用の衣装を用意しましょう」と言い出し、この貸衣装屋『ウエディングベル』へと一目散に走りだしたのだ。
おまけに、店員も一緒に盛り上がってしまい、今だ撮影できないでいる。
「はぁ、せっかくの休日が……」
と、俺が嘆いているとでっかいバイクのエンジン音が。
「ごめ~ん、もう撮影始まっちゃった?」
「え、いや、まだだけど」
自慢のバイクに跨り、ミカも俺達に合流してきた。
「よかったー、準備に時間かかっちゃって、これ」
「これ? どれ?」
「対戦動画には必要でしょバイク「使わねぇぇぇよ! いったいどこの世界にカードバトルにバイク持ち出す…………危ないから、今日は机でやろう、な」」
……流石に俺も疲れた。
じゃあ自転車にしよう、とか、こっちの衣装もええなぁ~、とか、横道にそれ続ける女子達に俺はずっと言わないで置いたことを口にする。
「おいお前ら、そもそも手しか映らないんだぞ、対戦動画は」
言った、せっかくの休日をこれ以上荒らされてたまるか。
「マジで! 合成映像とか使うて、ドラマの撮影みたくするんちゃうの?」
「何時間かかんだよそれ! 動画一本で人生終わっちまうわ!」
百聞は一見に如かず、という事で実際にやって見せる事にした。
用意するのは編集用のノートパソコン、のみ。
「じゃ、適当なイラストを……ありゃ、裏面がいるな、なら一旦3Dモードに設定して……」
「3Dモード!」
「この2枚を背中合わせで張り付けてグループ登録、回転軸と……X・Y・Zどれがどれだ? まあ順番にいじっていけば……お、これだこれだ」
「グループ登録!?」「回転軸!?」
「んでだ、おいピンクピンク―、カード構えてポーズを取れ」
「え? こ、こう?」 ――パシャリ
「この写真を今の奴と合成して……」「え!? オレの写真? 使われるんやったら、もっとキャワキャワな格好すればよかったぁぁぁあ!」
キャワキャワって……細井さん、ついに頭までピンクピンク―に……。
「んで、さっきのカードにアニメーションをつけて」
「アニメーション!」
「なんか寂しいな……お、エフェクトとかあんじゃん! ならこいつをカードが展開するタイミングに合わせて……ダメだ、合成がうまくいかねえ……あ、バッカでレイヤーの位置がずれてんじゃん」
「エフェクト?」
「レイヤー? なんだかすごいものが生まれそうな予感がしますねぇ」
というわけで、編集が完了した動画を再生する。
ポーズをとるピンクピンク―の前に裏向きでカードがセットされており、効果音と共にカードが光りながら表返る。カードアニメで良くある1シーンを再現して見せた。
「な分かっただろ、たった5秒のシーンを作るのに5分以上かかったんだ。仮に対戦動画を10分とすると、撮影時間はなんと――」
「すごい凄い、テレビアニメみたいですね!」
「テレビアニメみたいやな!」
「ちょ、おま……」
「よーし、おっちゃんが居れば100人力や! 世界初、史上初の特撮TCGドラマの爆誕や!」
「だからお前……」
「そうですよ、完成すれば再生数1億再生は固いですよ、これ」
「落ち着け、な、いったん落ち着こう、な」
「目指せ100億再生「おーー!!!」」
「……勘弁してくれよぉ」
俺が人知れずうなだれていると、ミカの手が肩に触れた。
「ね、持ってきて正解だったでしょ、バイク」
「はぁ~~~。ね、っじゃねえよ!」
続く
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