EX stage 3 プロジェクト・ヴァベル 始動
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ゴモンとミナカが、ヴァベルの書庫を発見してから1か月が経過した。
ヴァベルの書庫。
そこは、表面上は荒野に沈む古代遺跡。
しかし遺跡はタダの入り口にすぎず、そこからさらに異空間を経由して宇宙へ、惑星1つを丸々くりぬいて形成される巨大施設であった。
天之御中主神こと、ミナカ。
彼(彼女?)は、いわば宇宙の土木建設業者の現場監督である。
古の時代、日本に飛来したミナカとその仲間達は、当時の帝の一族との間に契りを交わし、日本書紀に記される神々の名を授かる事で日本人の仲間入りを果たした。
前後の詳細は省くが、彼ら彼女らは今も帝のお膝元で務めを果たしている。
今回、ヴァベルの書庫の移設作業が計画された。
星を丸ごと本土近くへ引きよせ、調査を円滑に進めるためだ。
「あ~、終わった終わった~」
「お疲れさん、ミナカ」
そして、その移設作業がたった今完了した。
正確には、移設ではなく転写。
ミナカが星の移動を面倒くさがった為、帝から提出されたプランは全ボツ。
惑星データを取得して、宇宙3Ⅾプリンターで移設予定地にコピーしたのだ。
『貴重な遺跡やで、動かしとる間にどっか壊れたら大問題やろ』
と、ミナカは予定変更に対して弁明したそうだ。
何はともあれ、書庫内の調査は滞りなく開始された。
そこからさらに、1週間が経過した。
ゴモンとミナカとエクス・マキナの2人と1体は、ゴモンの別荘でまったり過ごしていた。
ミナカは現在休暇中、
エクス・マキナはドラゴンのため基本自由行動、
そしてゴモンは、立ち上げた会社が大成功し自分の子分達に経営を任せている、少しばかり早すぎる隠居中の身。
三者三様に事情は違えど、自由を謳歌できる立場にあった。
「ちょちょ、マグマ来てる、マグマ来てるから! 落とさんといて!」
「しょうがねえなぁ、ほらよ」「ありがと『ファァァコォォォン!』な! お前騙しおったな!」
ゴモンとミナカは、書庫の奥に眠っていた古代のテレビゲームで対戦していた。
「すっげーなおい! これ今売り出しても絶対売れるぜ!」
「うんうん、他のもやってみよ、もっとおもろいんがあるはずやで!」
「いやいや、こいつがきっと当時の最高傑作だろ」
「――因みにそっちの紫の四角い奴、3mの高さから落として平気らしいぞ」
2人がゲームの話題で盛り上がっている所へ、エクス・マキナが現れた。
ゲーム機に関する、雑学を披露しながら。
「よっす兄貴、ってなんつう格好してんすかww」
エクス・マキナの巨体は人間生活に不向きな為、彼は人間の姿に化け蒔苗シオンと言う名前で人間界では生活をしている。
その蒔苗さんが柄にもなく、ビシッ! とスーツを着込みネクタイを締めた姿で現れたので、ゴモンは思わず吹き出してしまった。
「あ? 何って、お前が言ったんだろ、今日お偉いさんが来るって」
「……(チラ)」
「……(チラ)」
「「やばい!!!」」
青い顔をして時計を見る、ゴモンとミナカ。
約束の時間まで、残り30秒まで迫っていた。
「おいおいおい、えっと着替え、それに部屋の片づけ、茶菓子の用意ってあったけか!!?」
「そんな今更間に合わへんって……せや、と、時よ止まれぇぇ!!!」
――キン、と音を立てて時計の針が動きを止める。
否、時間の流れが停止したのだ。
「ふぅ、これでゆっくり準備できるわぁ~」
「んじゃ、俺は着替えの用意と部屋の片づけやっとくから、ミナカはお茶請けの買い出しとクリーニング行ってきてくれ」
「ほぉ~い」
「お気遣いなく。ワープゲートの順番が予定より早く回ってきてしまったものでね、勝手にお邪魔させてもらったよ」
「「な!!」」
振り向くとそこには、いかにも仕事が出来そうな金髪の好青年が座っていた。
停止された時間のことなどまるで無視して。
「これはこれは惑星間調停局の局長殿、ご足労いただき誠に感謝いたします」
「あ、あかん、もう来とった……」
「君に直接こうして会うのは、1年ぶりになるのかな。ところで六花、以前にも話したと思うが私への敬語は不要だ。「あ、いえしかし」君の家族は継承権は無いとはいえ、7代遡れば我々と同じ帝の民だ。そのうえ君には実績がある、局長などと名乗ってはいるがその実、使い走りの私と違って君にはね」
つってもな~、と困った様子のゴモン。
「しかし、世間体と言うものがありますゆえ……」
「いいんじゃあねえか、兄弟」
「……兄貴」
「なあ六花、相手が下手に出るって自分から言ってんだ、乗っとけ乗っとけ」
2人の会話に、エクス・マキナが割って入る。
「そちらの方は……例の新しい君のお兄さんかな?」
「ええ、書庫の管理をしてしておりました神竜エクス・マキナ、人間界では蒔苗シオンと名乗り生活をしております」
「これはどうも。私は惑星間調停局、局長並びに帝一門・第四家当主、師子角 総一 と申します。以後お見知りおきを」
「……ああ」
総一はエクス・マキナに握手を求める。
が、エクス・マキナはそれを拒否。
「失礼、私は君にまで不敬を許したつもりはないのだがね」
「オレはこいつの兄貴だぜ、杯を交わす意味を知らねえとは言わせねえぞ」
売り言葉に買い言葉。
総一とエクス・マキナは火花を散らしあう。
「ああもうじれったい! 早く商談を始めましょうよ!!」
「……今の誰の声だ?」
エクス・マキナが声の主を探していると、総一の陰からひょっこり白いワンピース姿の女の子が現れた。
「うわ美人さんやな……」
ミナカは、思わずそんなセリフを口にした。
「紹介が遅れて申し訳ない、彼女は薫子。今日は彼女の話を聞いてもらおうと足を運ん「あなた方が見つけたヴァベルの書物を題材にゲームの開発をさせて頂戴!」薫子、そんな不躾に、まずは段階を踏んでか「坊やは黙ってなさい!」アッハイ」
「ほう……」
薫子より渡された名刺を一瞥し、ゴモンは彼女の向かいに座る。
「ようは、俺達が受け取る政府の金が目的なわけだな」
そして、自分の名刺を返しながらゴモンは薫子にそう告げる。
「ええ、互いに利があるはずよ」
ゴモンはもう一度、彼女の名刺に目を通す。
そこには彼女と大手ホビーメーカーの名前、薫子という名前の横には代表取締役の文字があった。
「俺達は帝の指令で動いてる」
ゴモンが淡々と告げる。
「知ってる、マキナの事も」
「兄貴のダチの話しか?」
「ええ、予算と知名度よ」
「……それ、俺じゃダメか? 金はある」
「ええ次善策なら、帝の許可が下りない可能性を考慮して」
「OKひとまず商談成立だ、持ち帰って資料をまとめさせてもらう」
「そうね、では日を改めて」
そう告げると薫子は、一礼して席を立った。
「ちょちょちょ待ちいな! 何の話、今の一瞬で何が起こったん」
そんな中ミナカは、状況が呑み込めず右往左往していた。
「用事は済んだわ、帰るわよ」
そうして、総一の袖をつかんで玄関へと向かう薫子。
その2人を通すまいと、エクス・マキナが立ちふさがる。
「失礼、道を開けてくれないか?」
「……乗りな、ターミナルで待たされるよりずっと早いぜ、オレは」
「ほう」
「ワープ歴1000億年、無事故無違反のゴールド免許だ」
「それはそれは、では、お言葉に甘えようかな」
エクス・マキナは、総一達とついでにミナカも外に連れ出す。
「ちっこいの、お前も一緒に来い」
「オレも? なんで?」
「帝に報告が必要だろ、一緒に乗っけ」
「お、おう、せやな……」
「六花、お前は舎弟どもに資料作成を手伝わせろ」
「うっす」
それぞれに指示を出すと、エクス・マキナは出発の準備を始める。
人化を解き本来の竜の姿を露にすると、そこにアーマーを身に纏う。
アーマー内部にはメンテナンス用の部屋と通路が配置されており、その中の一室に3人を放り込む。
「まあ」
「ほう」
「うわ、広っろ」
メンテナンスルームは意外に広く、生活用品も充実していた。
今はいないが、整備班が寝泊まりできるよう配慮がなされているのだ。
部屋の奥には鉄の扉があり、そこからアーマーの深部へ進んでいけるようになっている。
「え、もう出発しとったん?!」
ふと、窓の外に目をやると既にワープゲートの中を進んでいた。
「まあ、あんまりにも静かで気が付かなかったわ」
「これはこれは、転送酔いの心配がなくて助かる」
『で、目的地はどちらへ、お客さん』
感心する3人の前に、モニター越しのエクスマキナが現れた。
薫子の指示に従い、目的地へと舵を切る。
『そんじゃ、到着予定は10分ってとこかな?』
「まあ、随分と掛かるね」
『昔はワープなんて出来るのは少数だったからな、人が増えると混雑するのは道路もワープゲートも同じって訳だな』
「なるほど、我々は常に優先席を利用しているからね。偶にはこうして庶民の苦労を知るのも悪くない」
『ほほう、んじゃ苦労ついでにもう1つ苦労してもらおうか』
エクス・マキナがそう告げると、会議用のデスクが新たに出現する。
『そこのちっこいのに、現状説明をしてくれや。今から帝に報告しようってのに、1ミリも理解してねえから』
「え!? 皆さっきのやり取りで全部理解しおおてるん!?」
「前提知識と、周辺状況の理解があれば当然」
「ええ、時は金なりだもの、1を聞いて10返せないとビジネスにならないわ」
『そういう事。オレのダチの名誉がかかった話だ、へまは許さねえぞ……』
プツン、と音を立ててエクス・マキナはモニターから姿を消す。
「ふぅ~、さて、どこから話そうか?」
「じゃじゃあ最初からでお願いします」
「よし、分かった」
――
――
――
――
昔々、西暦2XXX年、人類は魔法、そして異世界文明と出会う。
科学技術の発達と、宇宙の力場の関係と、異世界文明からのコンタクト、様々な要因が重なり合い幸か不幸かそれは起こった。
そこから地球文明は、目まぐるしく変化を始める。
物理法則に乱れが生じ、神や悪魔、天使に精霊、妖怪や魔物が器を得て具現化し人類の前へと姿を現したのだ。
しかし、それさえも変化の序章に過ぎなかった……。
そこから、数百億年の時が経過した。
人類は新たな時代に適応し、自らの意思で宇宙の創造をも可能にする神にも匹敵する能力を得るに至った。
やがて人々は、自身とその周りを取り巻く友人らとで、自分達にとって最もふさわしい世界を創造し宇宙の外側、外宇宙へと散り散りに旅立っていったのだった。
赤の大地 ラクエン
惑星そのものが、かつての日本の姿を再現する事を目的に作られた住んで暮らせるアミューズメントパーク。
青の大地 ニュー・ヒーローシティー
住める特撮スタジオ。シティ各所では日々、プロアマ問わずスーパースターを目指す者達がカメラを担いで駆け回り、時には通りすがりの通行人を巻き込んでのパフォーマンスが行われている。
黄色の大地 ラピスラピア
惑星サイズに成長した超巨大なダンジョン。
ダンジョンを統括するダンジョンマスターが神として君臨し、生物の生き死に、気温や湿度、日の出や日没に至るまでマスターの手で管理された世界。
白の大地 無限宇宙・無限荒野
文字通り無限に広がる世界。取りつくせないほどの地下資源宇宙資源、そしてレアな古代兵器が獲得できるため、冒険者や開拓者達が夢と希望を胸に抱き無限の世界に挑戦する。
――
――
――
――
「とまあ、これが我々の世界の始まりなわけだが……」
「こいつ……まじで最初から始めおった」
「帝は、これらバラバラになった世界を再び1つにまとめようとしておられる。その為の足掛かりとして、君達のようなエージェントに世界各地の神話や民話を集めさせているわけだ」
「そそそ。……けど、どないしてお話集めたら世界が1つになるんやろ?」
「それを理解するために、我々のルーツ、日本について知らねばなるまい」
総一はそこから、古事記そして日本書紀について語り始めた。
しかし、いくら国の成り立ちや神話を記す事の大事さを説いたところで、ミナカにはなぜそれが国をまとめる事に繋がるのか理解が出来なかった。
そこで総一は、やり口を変える事にした。
「つまりだね、古事記と言うのはソシャゲのコラボイベントだ」
「コラボ?」
「そう、今まで目もくれていなかったキャラクター達が、コラボを通じてその魅力に気が付く。場合によってはコラボ先のアプリにまで手を伸ばす事もあるだろう」
「ほぇ~、解釈違い起こしたら戦争やろうに、うまくまとめたんやな」
「そう、だからこそ現在の我々にまで語り継がれているんだ」
帝の目的を達する資料として、ヴァベルの書庫は非常に有用なものだった。
なにせ宇宙の歴史を見届け続けてきた、生き証人によって作られているのだから。
だからこそゴモン達はヴァベルの書庫を欲し、エクス・マキナはその見返りとして冤罪の末、命を落とした旧友の汚名返上・名誉挽回を求めた。
「帝とエクス・マキナ……この両者は利害関係の一致により手を組んだ」
「それは知っとる。で、君らの目的は?」
「単純な話よ、会社の利益の為それだけ。さっきソシャゲの話題があったけど、各地の英雄達が一同に会するゲームなんて話題になりそうじゃない。しかも帝の後ろ盾付きなら成功間違いなしじゃない」
薫子は、上機嫌な様子だ。
「もちろん、うちの商品が話題になれば君達のドラゴン君にだって帝にだってプラスになるはずよ。ね、私達と組んだ方がメリットが多いと思わない?」
「なるほどなるほど……で、どないゲームを想定されてますん?」
ミナカは、メモを片手に質問を返す。
「実際に見てもらった方が早いわね、はいこれ」
「これは……本?」
ミナカが手にしたのは、手帳サイズの本。
ミナカは、疑問に思いながら中を確認する。
「な!?」
ミナカは、意外なその中身に驚く。
その本の中は、ページのかわりに豪華な加工がされたカードで構成された所謂カードバインダーだったのだ。
「TCG、世界で最初のカードゲームを御存じ?」
「……トランプ?」
「はぁ……ご存じないようね、まあいいわ」
カードゲームと言えば、デッキからカードをドローして魔法やモンスターで相手プレイヤーのライフを0にするゲーム。
そんなイメージで概ね間違いないだろう。
では、そもそもデッキとはどういった存在なのだろうか?
「原初のカードゲームにおいてプレイヤーは魔法使い、そしてデッキは魔法が記された魔導書として扱われているの」
「へ~、そないな設定があったんか」
「ねえヴァベルの書庫を題材にしてるんですもの、デッキを取り扱う設定のカードゲームとは相性がいいと思わない?」
「ええやん! おもしろいおもしろい……あ、でもやっぱり、魔導書と本棚は別もんやから、ただの本からモンスター出てくるんはやっぱちゃうなぁ……」
その返事に、薫子はくすくすと笑う。
「何言ってるの、いつも仕事でやってる事じゃない、ね八百万の最高神さん」
「え? なんて?」
「君が宇宙を創造するとき、設計図を用意するでしょう? それと同じ。プレイヤーは万物を生み出せる創造主、ヴァベルの書を設計図代わりに英雄や神や悪魔を実体化させ優劣を競い合うの。ね、これなら無理なく歴史をゲームに落とし込めるし、世界中の英雄達を同じ舞台で戦わせられる……そうでしょう?」
そこまで聞くとミナカは、見た目通り子供のようにはしゃぎまわる。
「なんやそれなんなんそれ! めっっっっちゃおもろいやん! いつなん、発売はいつ? 値段は? 予約受付はどこのお店で取り扱います?」
「焦らない焦らない、今から開発を始めるのよ」
「焦るななんて無理やしそんなの! 絶対面白い! だってカードの事、神さまの事、ドラゴンのおっちゃんや帝の都合まで全部ひっくるめて、リスペクトして開発してんねやろ! そない奴が作るゲームがおもろないはずないやんこんなの!!」
「ふふふ、そう言ってもらえると私も鼻が高いわね」
よっしゃあ! と、気合十分のミナカ。
絶対に企画を通して見せると意気込んでいる。
『なあバベルの塔って知ってるか?』
急にエクス・マキナが、話に割り込んできた。
「バベル……いや知らないが。ところで到着はまだかな?」
『もうじきだ。だから今のうちに話しておきたくてな。古い神話の話だ。昔、人類がサルだったころの話、天国に届くようなデッケエ塔を作ろうとして神の怒りを買い、人類はバラバラの世界で暮らすようになったっていう話だ』
「へえ、世界がバラバラ……まるで今の我々のようだね」
エクス・マキナの表情が険しくなる。
『ああ、これはオレからの警告だ。これからプロジェクトに関わるやつ全員に伝えておけ。オレが見てるぞ! ってな。オレの機嫌を損なうような事があれば、神竜エクス・マキナの名において世界をもう一度崩壊させるから肝に銘じておけ!』
「……なにを……!」
『お前らが浮足立ってたから釘を刺してんだ。腹くくれよお前ら、こっちはお前ら人間に所業に切れかかってんのを忘れるな』
では、と薫子が前に出る。
「では本企画の名前を、プロジェクト・ヴァベルと名付けましょう。バベルの名を常に視認させることでメンバーの意識向上を図ります」
薫子の返事を受け取り、エクス・マキナは殺気をひっこめる。
『気に入ったぞ、それ。世界をまとめようって計画で逆に世界崩壊の名前を付けるってのは、シャレがききすぎだろwww』
――プロジェクト・ヴァベルーー
世界と神と竜と人と、それぞれの思惑が交錯するプロジェクトが動き出す。
stage 4へ続く
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