第18話 神 vs 神 中編
長くなったので3部構成になりました。
コハクの開発した新作ゲーム、ヴァベルの試練。
エースオブワンのカードとルールを使用して、徐々にレベルアップしていく神竜エクス・マキナを討伐していく事がこのゲームの目的だ。
その最高難易度までたどり着いた、
・コハク
・小鳩
・細井さん
・長井さん
の4名。
彼女達は、強化され続けて手が付けられなくなったエクス・マキナに対して|既存のカードによる攻略を断念。
以前の対戦で苦戦を強いられた、邪神プロカゲラスに望みを託す事にした。
「プロプロプロォ~、世界を闇の葬ってやるゲラァ」
「え、そんな話し方なの?」
「ううん、分かんない。でも多分こんな感じじゃないかな?」
「そこは作った本人に聞いてみんとなんとも……そもそも言葉話すんかな?」
未知のカードへの好奇心ゆえか、皆テンションが上がっている様子だった。
しかし、その笑顔はものの数分で消え去る事となる。
((((??? テキストの意味が分からん ???))))
デッキを開いてしばらく、彼女達は一様に小首をかしげた。
ミラー・フィールド
モンスターカード
(テキスト)
相手の効果を2倍にして跳ね返す
これが、そのカード(のうちの1枚)である。
「つまり……除去効果を自分の物として使えるって事?」
「めっちゃ強いやん! ……ドロー効果とかどうなるんやろ?」
「跳ね返すだから、自分が対象にならないとダメなんじゃないかな?」
「そうなん? 相手のってあるし、ドローも自分に跳ね返せそうやけどな」
するとまた、別のカードが目に留まった。
邪神の剣
攻撃:0
耐久:10
(テキスト)
邪神の剣が攻撃した時、墓地を1枚増やす。
「あれ? この効果どうやって発動するん?」
「どうって……攻撃すればいいんじゃない?」
「それが出来ひんのよ、だって……」
――――
「ところで狂信者は攻撃はせえへんの、オレ今無防備やで」
「こいつは攻撃できねえんだよ」
「うん? ……どこにも書いてへんけど」
「攻撃力0になってんだろ!」
「ふぅ~ん(そないなルールないんやけど、まあええか)」
――――
『第11話の会話』
「作った本人が、攻撃は無理って……」
「はいはいはーい! きっと強化魔法があるんだよ」
「そっか、そっか、ほな探してみよ」
・
・
・
結局、邪神の剣を攻撃可能にするカードはなかった。
しかし、そんな事は些細な問題でしかなかった。
((((??? テキストの意味が分からん ???))))
デッキの全容を確認したところで、彼女達は改めてそう思った。
ぱっと見ただけでも
・レベルという存在しない値(コストの値は存在する)
・モンスターなのに攻撃や防御の数値がない物がある
・逆に魔法カードに攻撃や防御の数値がある
・その表記もHP、耐久力、ディフェンスとブレがある
・起動、誘発といった発動条件が不明瞭
・効果の持続時間が分からない(ターン中? ゲーム中?)
・存在しないカードを参照している(誤植?)
と、見れば見る程、理解が遠のいていく代物だった。
彼女達は、テキストの意味が分からないのは別々の人間が作っているからで、テキストの書き方が違うからだと考えていた。なので、全てのカードを見比べれば、テキストの意味が理解できると思っていた。
もしかすると、作った本人は自身の考えたルールに則ったうえでテキストを書いたのかもしれないが、第三者視点でそれを理解する事は出来なかった。
「多分だけど、最初にプレカゲラスの召喚ギミックだけ考えて、カードの枚数が足りないから後から種類を増やしたんだと思う」
「あ~何か分かるな、それ。名前が適当な奴や、効果がイマイチやったりするんは後からかさまししたせいやろな」
「そうそう。それで、作っていくうちに最初に作ったルールやカードを忘れちゃって、こんな事に……」
細井さん達は知らないが、雷刃少年は邪神デッキを1日でもっと言えば学校帰りの数時間で作っていた。その為、テキストの整合性やカードバランスがおざなりになり、その狂ったバランスをプロカゲラスを強化する事で保とうとしていたのだ。
結果として、邪神デッキを使用して勝利する事は出来た。
最速召喚されたプロカゲラスの力はエクス・マキナのそれを上回っていたのだ。
目的を果たしてめでたしめでたし…………
……とはならなかった。
もう帰ろうか、とコハクは皆に提案した。
「う~ん……なんか楽しくなくなっちゃった、なんでだろ?」
「これ、おっちゃんからの受け売りやけど」
コハクの問いに、細井さんが答える。
「ゲームっちゅうもんは何をするかより何をさせないかが重要なんやって」
「そうなの!? いろいろできたほうが楽しくない?」
「オレもそう思っとった、おっちゃんに話聞くまでは」
細井さんは、話を続ける。
「例えばやけど、自転車って乗るだけで楽しいやろ」
「え……乗った事ないから分かんない……」
まじで! と驚いた細井さんは、別のたとえ話を始めた。
彼女が言いたかったのは、出来ない事が出来るようになるのは楽しいという事。
・自転車に乗ると普段より早く移動できる
・飛行機に乗ると空を飛べる
・お小遣いが増えればいろいろな物が買える
だから楽しい!
「けどゲームの中では、数字さえいじればやりたい放題やん」
「今のヴァベルの試練みたいにね」
小鳩から合いの手が入る。
「そうそう、そんな自由な世界やから、あえて! 出来ない事を増やす、その上で不自由を取っ払う何かを用意する。その自由と不自由のバランスをいい塩梅に整えるのがゲーム作りの肝なんやって」
カードの世界1つとってもそうだ。
新しいカードが欲しいのも、デッキを新たに組み直すのも、出来ない事が出来るようになることが楽しいから。
そして、壊れカードや禁止カードが嫌われるのは、せっかく手にした自由な世界が失われてしまうから。
細井さん、の言葉に納得する一同。
「んで、最初の話に戻るけど、ヴァベルの試練の面白さってエクス・マキナと一緒にやってるプレイヤーもレベルアップしてるとこやと思うんよ」
「え!? 何にも変わってないと思うけど?」
「ほんまにホンマか? ステージが上がるたんびに、デッキを組み替えたり作戦を立て直したりしてオレら最初よりずっとずっと成長してるはずや」
「ええ、意外なコンボとか見つけましたしね」
今度は、長井さんから合いの手が入る。
「で、今つまらんくなったんは、せっかく成長してたところに邪神デッキつうある意味バグカード改造カードを持ち込んだせいやと思う」
「そっか自由と不自由のバランスが崩れちゃったのか!」
「私達……勝ちたいあまり、大事な事を落っことしてたんですね」
「そもそも、勝つだけなら新しいカード作っちゃえばいい話だしね」
妙なモヤモヤした感覚に納得ができ、皆つきものが落ちた表情になる。
必見落着したし、家に帰ろうと細井さんは立ち上がろうと――――
「なるほどう! そっかそっか……じゃ、新しいのを作ろう!」
「「「今から!!」」」
細井さんが立ち上がろうとした矢先、
先ほどまで帰ろうと催促していたコハクが急にそんな事を言い出した。
「そ、こっちのはもう強くできないから、新しい奴。ほら、ちょうどここに材料もあるし!」
コハクは、目の前の邪神デッキを指さす。
「さっき対戦してみて、なんかこれ似てるなって!」
「確かに……強い相手と戦うところは似てるね」
「でしょでしょ!」
「面白そうやな、それ」
「いいですねぇ、やりましょう!」
こうしてヴェベルの試練、改め暗黒神の再来(仮)の開発が始まった。
「こんにちわ~~。あれ、皆何やってるの?」
「あ、コハルちゃん。新しいゲーム作ってるの!」
「エースオブワンのデッキで戦う新ルールなんやで」
「どうです、コハル君自慢のデッキで戦ってみませんか?」
「うん、やるやる! 僕ねえ、すっごいデッキが出来たんだ、絶対驚くよ!」
偶然店に現れたのは、小鳩の弟のコハル。
コハル少年の前に邪神と神竜、2体の神が立ちふさがる!
プロカゲラス
「プロプロプロwww今度の勇者は誰かと思えば、ただの人間のガキでゲラスwww。こんな子供を差し向けてくるとは、人間共も落ちたものだゲラゲラゲラゲラwwwwww」
コハル
「ねえコハ姉、このシーン必要なの?」
コハク
「しっ! 没入感は大事にしなきゃダメなの!」
コハル
「ふ~ん」
プロカゲラス
「…………」
暗黒神の再来(仮)ルール
・プロカゲラスは無敵、
核となる邪神デッキに攻撃を加え全て破壊すれば勝利。
・プロカゲラスは毎ターン全体攻撃を仕掛けてくる、
破壊耐性がない限り毎ターンエースを出し直すはめになる。
・邪神デッキはターン開始時に眷属を召喚してくる、
眷属達はこちらを不利にする能力を持っている。
……健闘を祈る
――GAME START――
「私のターン3枚ドロー」
ドローされたカードは、無条件で場に出る。
邪神の剣
攻撃:0
防御:4
相手ターン終了時、相手に確定1ダメージ。
(シールドを無視して1ダメージ)
サタン・シールド
攻撃:0
防御:6
このカードが場にある間、相手エースは邪神デッキを攻撃できない。
破滅の波動
コマンド(使い捨て)
このターン中、プロカゲラスに3連撃を与える。
(3連撃:1ターンに3回攻撃できる)
「そして邪神の攻撃!」
ヴァベルの試練同様、邪神のステータスはレベルに比例して上昇していく。
現在の邪神は、
・攻撃力100億
・確定1ダメージ(シールドを無視する)
を持つため何もしなければ7ターンで敗北が決定する。
現在は破滅の波動の効力により、3回連続攻撃を受けた事で残りライフは4。さらに次のターン邪神の剣を処理しなければ確定1ダメージによりライフは3になる。
敵眷属を必要に応じて処理しながら、本体へのダメージを重ねていく。
攻めと守りのタイミングが、勝敗のカギを握る。
「あ……僕の勝ちみたい」「ふぇ?」
ターンを受け取ったコハルは、なんといきなり勝利宣言!?
その言葉は、ハッタリでは断じてなかった。
ギャーー!! シルバー選手のファンサービスだーー!!
コスト0 アクションカード
属性 ・スポーツ ・ファンサービス
(チャンス!)[トラブルメーカー]ライフを1失う。
自分のエースデッキから伝説のウマモーフ シルバーレクイエムを1枚タダで場に出す。(タダで場に出す場合、コストは支払わなくてよい。ただし召喚条件は守る)
~フレーバー~
シルバーレクイエム、彼はサービス精神旺盛な選手だ。ファンに求められればいついかなる場合でもサインやパフォーマンスを忘れない…………たとえ試合中であっても。
「な!?」「そのカードは!?」「え、だって、でも!?」
「さあ出ておいで、伝説のヒーロー」
伝説のウマモーフ シルバーレクイエム
コスト120億 エースカード
属性 ・キルモーフ ・スポーツ
攻撃:5
防御:6
打点:4(このカードのアタックは、ライフを2ではなく4削る)
このカードのアタック終了時またはこのカードが場を離れるとき、カードの種類(素材またはアクション)を宣言し山札の上を破棄する。破棄したカードの種類が宣言した種類と同じであればこのカードは場に残りアップ状態になる。
~フレーバー~
勝負の行方は神のみぞ知る。その言葉が誠であるなら、彼こそがコートに君臨する神なのだ。
「出たー! シルバーレクイエム、生きた伝説シルバーレクイエムの登場だー! ……ちょっと反応薄いよ、臨場感は?」
「え、あ、うう、そうだね……すっごーい! シルバーレクイエムだって!」
場に現れたのは、真っ白な毛並みのフサフサした生き物。
頭には、馬の耳のような触覚が生えている。
彼はイラストの中でユニフォームを纏い、サッカーボールを相手のゴールにシュートしていた。
~~キルモーフ~~
古の時代、生誕の魔女ハルパースによって魂を与えられ、生物として歩むことを許されたヌイグルミの魔物。
その魂の性質は虫と同質のものであり、彼らは自身に与えられた繁殖力と適応能力そして世界の覇者である人類と共生関係を築く事で、海を越え、山を越え、宇宙を越え、次元の壁さえ飛び越えて、第二の世界の覇者へと上り詰めた!
(モチーフは青虫、遊園地の着ぐるみみたいなやつら、胸にファスナーが付いている)
以上、おっちゃんの設定資料設定資料より。
コハクは、若干テンションが下がっていた。
今まではドラゴンや兵士、偉大な魔術師達が徒党を組みエクス・マキナ達超獣へと挑んでいた。
『コハルはどんなカードを使うのだろう』と期待していたら、出て来たのが白いぬいぐるみのモンスターだったのだから無理もない。
こんなモフモフではボスキャラに挑むに相応しくないと思いつつも、こんなモフモフに負けるのは流石にカッコ悪すぎると、コハクは気合を入れ直した。
※ゲームの仕様上、コハク側にプレイング等の選択権はない
「残りのカードは全部セット、これでバトル!」
「いいよ、妨害はないから好きに攻撃して」
「あ、やっぱり待って、コスト0のエースをまだ出せるから」
八百万シリーズNo00001 ミナカ
コスト0 エースカード
攻撃:6
防御:3
(能力なし)
~フレーバー~
八百万シリーズ
古の日本へと、今は無き超科学の星より逃げ延びた人工生物。
その初号機である彼(彼女?)は星間戦争から朝食の支度まで何でもこなす汎用機体である。
「ミナカさんをシルバー選手の横へ2体!」
「いつもの展開だね」「せやな」「やっぱり便利ですねミナカちゃん」
「これでバトル!」
ミナカAの攻撃がヒット。
サタン・シールドを破壊、守りを切り崩す。
ミナカBの攻撃がヒット。
邪神デッキを2枚切り崩す。(邪神デッキ、残り26枚)
シルバー選手の攻撃がヒット。
打点:4の為、邪神デッキを4枚切り崩す。(邪神デッキ、残り22枚)
「ふぅ、攻撃終了だね。じゃあ私の――」
「さらにシルバー選手のスキル発動!」
しかし、攻撃はまだまだ終わらない!
「山札の上を予言して、成功すれば再攻撃できる!」
「え~っと、じゃあどっちにする? 素材、それとも」
「当然、アクション!」
――ヒット!
シルバー選手の再攻撃!(邪神デッキ、残り18枚)
さらに、シルバー選手の攻撃は続く。
――ヒット!
シルバー選手の再攻撃!(邪神デッキ、残り14枚)
――ヒット!
シルバー選手の再攻撃!(邪神デッキ、残り10枚)
「え? ちょっと!?」
――ヒット!
シルバー選手の再攻撃!(邪神デッキ、残り6枚)
「ちょっと待って! ストップ、ストッーープ!」
――ヒット!
シルバー選手の再攻撃!(邪神デッキ、残り2枚)
――ヒット!
シルバー選手の再攻撃!(邪神デッキ、残り0枚)
――GAME SET――
「やったー、僕の勝ちーー!」
神 vs 神 後編へ続く
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