第17話 神 vs 神 前編
「やぁぁぁぁぁああああ! お願いします! お願いします! ぼくここのカツ丼大好きなんです、だからもう作らないなんて言わないで、ね、ね、ね!」
「大事だと思ってるならもう来ないでおくれ、店がつぶれっちまうよ」
「おい、ころも。早くオーダー決めちまえよ、昼休憩終わっちまうぞ」
俺は今、後輩と一緒に昼飯を食おうとしていた。
俺は適当な日替わりランチを、ころもはいつものように
『時間内に食べきれば無料! DXマシマシ丼』を注文しようとして今に至る。
ころもは見た目とは裏腹に大食いで、いつもいつもここでタダ飯を喰らっていた。そして今日、ついに店側の限界が来たようだ。
「お願いします! お願いします! お願いします!」
「だから無理だって」
「おい、昼飯……」
「お願いします! お願いします!」
「だぁー! もううっせえ! だったら普通に金払って食えよ!」
「「え!?」」
え!? じゃねえよ。
「タダ飯は出さねえってだけで、料理を出さねえとは言ってないだろ。というか店長も一緒に驚いてんじゃねえよ」
こうして、ころもはDXマシマシ丼にありつく事が出来た。
スマホをいじる俺の横で、カツ丼が真夏の氷のように消えていく。
ふと、ころもは食事の手を止め、俺の方をのぞき込んできた。
「熱心ですね、お昼休憩にも仕事だなんて(パクパク)」
「違げぇよ、遊びだよ遊び。ゲームのバグ修正をな」
昨日晩、村田が発見した壊れカード。
そいつを禁止カード送りにするため、専用ページを作成している。
「禁止……もったいないですよ、せっかく考えたのに(モグモグ)」
「つぅぅぅ~~、だよなぁぁ~~」
時空跳躍 ディメンジョン・リープ
コスト0 アクションカード
『リミット:100』
①か②どちらかの効果を選び使う。
①カードを2枚引く。
②山札を12枚破棄する。破棄したカードが全て違う名前のカードであれば追加ターンを得る。
(チャンス!)デッキの一番上のカードをシールドにする。
「だったらエラッタかけて、ナーフしちゃいましょうか?」
「え!? お前カードのこと分かんのか」
「ふっふ~ん、何をおっしゃいますか。姉さんにカードを最初に教えたのはぼくなんですよ(パクパク)」
おお、忘れてた。
ガキの頃からころもの奴はやんちゃで、よく男子とつるんでたんだった。
姉妹なのににてない事を気にして、ミカがころもに合わせようと頑張ったんだっけか。
俺ところもは飯を平らげると、午後の現場に向かうため車に乗り込んだ。
道中、ころもからいくつもアイディアが飛んでくる。
「うーん。サンキュ、参考になったよ……」
「ダメですか……やっぱり」
「あ、いや、アイディア自体は参考になったんだけどさ……」
何かが引っかかる……。
前からおかしいおかしいと、どっか思ってたはず……。
「…………そもそも、ルールが悪いんじゃねえか?」
「そもそも!!」
「いや、だってよ――――」
時空跳躍の何が悪いかと言うと、
・専用構築にすれば簡単に打てる
・専用構築にしても十分に戦える
・発動すればそのまま勝てる
この3点にある。
「ぶっちゃけ、初手に引いてりゃ1ターンキルもできる」
「なんでそんなの実装しちゃったんですか!?」
「専用構築にすると、低コストのカードしか使えなくなるんだ。
だから、カードパワーの差で通常構築のデッキとトントンになる……つもりだったんだが、低コストカードを強くしすぎた……」
八百万シリーズNo00001 ミナカ
コスト0 エースカード
攻撃:6
防御:3
(能力なし)
~フレーバー~
今は無き、科学異世界より太古の地球へと飛来したアンドロイド。
その初号機である彼(彼女?)は星間戦争から炊事洗濯までなんでもこなせる万能個体である。
「ぶっちゃけ、構築ルール無視できるならミナカを12枚集めたエースデッキがほぼ最強」
「うわぁ~、万能通り越して全能になっちゃったんですね」
「まあな。おまけにエースカードはそのままコストにもできるから、12コスト分タダで使えちまうってわけだ」
「……あの、追加ターンより、このミナカちゃんの方がヤバいんじゃ……」
「そっ。だからルールサイドにメスを入れようかと思う」
現状、ライフダメージはどのエースも一律2点。
その部分をレベル依存に変更したらどうだろう?
そう、ころもに尋ねた。
「それだと今度は、シールドを突破できないんじゃ……」
「だから、シールドの回復は無くす。そのかわりライフの量を増やす。エクス・マキナ以外、大型エースが不採用気味だったから、丁度いい」
「そんなに変えちゃって大丈夫なんですか?」
「……あ~、帰ってから試してみるさ。ダメなら別の方法を考えりゃあいい」
さてと、どうやって調整しようか。
俺が頭の中でデッキを回していると、ころもが声をかけてきた。
「どうしたんだ?」
「いえ、1枚のカードの為にそこまでするなんてなんでかなぁ~って」
「そりぁー……、なんでだっけか? ……そうだ!」
俺はちょっと前に出会った、雷刃少年の事を思い出した。
「細井さんから、すげえ戦いだたって何度も聞かされてさ。
時空跳躍が決め手になったって、これが無かったら負けてたって。
だからさ、なるべくならその棋譜を崩したくねえんだ」
俺は細井さんから聞いた内容と、実際に目にした邪神デッキを思い返した。
聞けば邪神デッキ相手は、邪神の討伐対決。
それならライフや打点をいじっても、結果は変わらないはずだ。
「そういやあのデッキ、今どうなってんのかな?」
「流石にもう返したんじゃないですか?」
「だといいんだが……流石にずっと預けとくのも悪いしな……」
――――
――――
――――
かつてエクス・マキナらと激闘を繰り広げた、邪神プロカゲラス。
奴は今も虎視眈々と、復活の機会をうかがっていた。
――――駄菓子屋さんの戸棚の中で…………
…………
…………。
ウィーン(自動ドアが開く音)
「じっちゃん! デッキ出してデッキ、前預けたやつ!!」
「早く早く、もうそのデッキでしか勝ち目がないんだよぉ!!」
「おじいちゃん、お願いします! もうちょっとでレベル10クリアなんです」
「あははは……こんにちわ~、お世話になりまーす(ぺこり)」
そして今、邪神復活の時は来た……。
神 vs 神 中編へ続く
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