EX stage 2 創世神竜 と 大国主命 (オオクニヌシノミコト)
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「…………」
ミナカは、自身の身に起きた出来事を信じられずにいた。
確かに、ドラゴンの攻撃が直撃したはずだった。
しかしどうした事か、痛みも苦しみも一切ない。
ミナカは、重力にひかれて本棚の上に着地した。
「よおミナカ、貸し1って事でいいか?」
「ゴモン……お前がやったんか、これ?」
ミナカが振り返るとそこには、神々しい光に包まれたゴモンの姿が。
ゴモンは、ツカツカとドラゴンに歩み寄る。
「あ、あ~、うん……。
我が真名は五門 六花、スサノオノミコトよりオオクニヌシノ名を襲名している。貴殿は原初の神々よりこの書庫の守護を任された、守護竜エクス・マキナとお見受けする。今の我々は、ただの迷い人。武器を収めるのであれば、このまま出ていく所存」
ゴモンは自身の立場を明かし、敵意がない事を示す。
そしてそのまま、相手からの返答を待った。
「ふぇ~エクス・マキナ、こいつが……」
「おいミナカ、口を慎めまた襲ってきたらどうするんだ」
「かまへんやろ別に、もうオレら結界の中やし」
オオクニヌシの力は、和平と再生。
因幡の白兎の話が有名である。
その力を受け継いでいるゴモンは、周囲に結界を張りいかなる暴力行為をも無力化する事が出来た。
――ただしそれは、相手が格下の場合に限る。
「ミナカ! 下がれ!」「ほへ?」
ゴモンがミナカを突き飛ばす。
次の瞬間、ゴモンは赤黒い染みとして周囲に飛び散った。
「ゴモン……嘘やろ…………」
「3つ……間違いを正そう……」
感傷に浸らせる間もなく、エクス・マキナは次の行動に移る。
エクス・マキナが両手を大きく広げると、彼の背後の空間がゆがみ数々の武装が姿を現した。エクス・マキナはそれらの武装を全て身に着けていく。
「1つめ。いかに神々の張った結界と言えども限界はある。オレは結界なんぞ意に介さないだけの力を有している事」
「マジか……今までのは本気や無かったんか」
「2つめ。オレはここを守る事を任されたわけじゃあない」
「じゃあ自分の意思で? なんでこないな場所を?」
ミナカの問いにエクス・マキナは答える。
「ここはオレが作った場所だからだ、全て!」
「な!?」
ミナカは、エクス・マキナとそこにまつわる伝説を知っていた。
かつて世界を収めていた神々が、世界の成り立ちを後世に残すため巨大な書庫を作った。その歴史書が失われてしまわないよう、守護竜エクス・マキナ生み出し番をさせていると。
その伝説が間違いだと、当の本人は主張している。
「番人じゃない……なら、あんたさんが原初の神??」
「……はぁ~~~。3つめ。お前達を生かして返すつもりは毛頭ない」
エクス・マキナが手をかざすと、ミナカの頭に過去の記録が流れ込んできた。
そこには若かりし頃のエクス・マキナの姿があった。
彼は身の回りの出来事を樹の幹や岩に刻むと、それらを巣に持ち帰り保管する事を日課にしていた。
「うわ~~。ほな、ここの本は全部あんたさんの日記帳か」
「そうだ、書庫をさかのぼれば当時の石板も残っている」
そんな日課を続ける事、数十億年……。
ある日、とある男がこの書庫を訪れた。
男は、自国の歴史を知るためにやってきたと言う。
エクス・マキナは、男に快く本を貸し与えた。
その後、男と本が書庫に戻ってくることはなかった。
「オレが滅ぼしたからだ、奴の国諸共……」
「なんやて!」
「奴らはオレの本を利用して、自国で引き起こされた悪行を隠蔽した」
「酷い……やりすぎやで……。そもそも関係ないやん、あんたさんとその国「あいつらは、オレの記録を自分達の都合のいいように書き換え公表した! おまけにその罪を、オレのダチに全てなすりつけやがったんだ、許せるわけがない!!」」
エクス・マキナの怒りは頂点に達し、周囲の温度がみるみる上がっていく。
「お前さ、オレが守護竜だと誰から聞いた?」
重く静かな言葉が、ミナカに向けて突き刺さる。
「そ、それは……前に読んだ本で……」
「はぁ~~、そうだよな、お前達はいつだってそうだ」
ミナカは、殺気を感じて身震いする。
周囲の熱気を忘れる程に、それは激しく冷たいものだった。
「誰かから聞いたこと読んだことを、さも自身の体験談かのように言いふらす。いい加減オレは、お前らの悪癖にはうんざりしてんだよ。ここを見られた以上、生きて返すわけにはいかないんだよ」
「……っ」
ミナカは、ゴモンの死体を見て悟った。
自分の結末を。
ミナカは、目を閉じてその時を待つ。
しかし一向に死が訪れる気配はない。
「あんたの言い分は分かった。この一件、俺達五門グループが引き受けた」
「え?」
ミナカが目を開くと、目の前にはゴモンが立っていた。
「え? なんでゴモン!? 死んだんじゃ??」
「バァ~カ、俺大国主よ、死ぬのは慣れてんだよ」
「いや~、回復が早いだけかと……まさかあっこから復活するとは……」
ゴモンはミナカから視線を外す。
そして酒の注がれた杯を、エクス・マキナに向けて差し出す。
「うっし! 今から俺達は兄弟だ、よろしく頼むぜマキナの兄貴」
――プチッ(ゴモンが潰される音)
が、すぐさま再生する。
「まあ、要するにさ」
「うわ~、おもろい体やなぁ」
「いま帝の一族が、新たに歴史書をまとめようって動き始めてる。俺達はその調査でこんなところまで着ちまったわけだが、ここの書庫を解放してもらえたら俺達の仕事が大幅に減るのさ」
だからさ、とゴモンは続ける。
「あんたが俺らの兄貴になってくれたなら、愛する家族のため俺らがここを守る大義名分が出来る。過去にどんな奴が来たのか、全部は知らねえけど厄介者からここを守ってやれる……どうだ?」
エクス・マキナは、首を横に振る。
下らんなと。
「オレにメリットがなさすぎる。ここを守るだけならオレ1人で十分だ、今の今までそうやって生きてきた。お前らと組んでも、余計な厄介ごとが増えるだけだ」
ここまでは想定内、
ここでゴモンは会心の一言を放つ。
「あんたのダチを世間に自慢したくはないか?」
「……なに?」
「まぁ難しい話っぽく言ってるけど、ようはあんたよく分かんねえ連中に知り合いを侮辱されたことを怒ってるんだろう、違うか?」
そうだ、とぽつりとつぶやく。
「こんだけ長い間生きてるなら、知り合いに英雄の10や20いるはずだろう。そいつらの活躍を知らしめるため、そしてその活躍が貶められないようにするためには、歴史を正しく管理できる組織が必要だと俺は思う」
エクス・マキナが息を飲む。
「それこそが、あんたにとって最大のメリットになるはずだ」
「…………」
エクス・マキナが腕を組み、考える。
やがて結論が出たようで、彼は一口に杯を空にした。
「よし、乗った!」
ミナカとゴモン、そしてエクス・マキナ。
この出会いが、後に世界に大きなうねりを生み出す事を彼らはまだ知らない。
stage 3へ続く
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