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ヒトの歴史が終わるまで  作者: スモアmore
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友情?別離

 次の日から約三ヶ月間、私たちはこの町で過ごした。

 毎朝7時に起きて午前中は自動車学校で勉強し、午後は町を探索兼食料調達をした。夕方はホテルの厨房でご飯を二人で作って、テラス席で食べた。夜は一緒にお風呂に入って、一緒に本屋さんから取って来たマンガを読んで、夜10時にはお互いに抱き合って眠る・・・。

 ときどきあの『モンスター』が襲い掛かってきたけど、その都度一体ずつ拳銃で頭を抜いていった。

 そして今日、そんな日常が終わるときを迎えた。


「いや~未来みらいちゃん、まさかこんなに運転が上手いとは・・・新たな才能、花開いちゃったね!」


『運転は任せて』


 私は教習マニュアルに書いてある全過程を見事果たすことが出来た。美空みそらちゃんも達成しているが、二人で教習所のコースを使ってレースをしてみたら、私が勝ったので、主に運転は私が担当することになった。

 私は教習用の白色のフィットを一般道路に運ぶと、美空ちゃんを助手席に乗せて私はマニュアル通りにアクセルを踏み込んだ。


     □ □ □


 山道を通って市街地に出た私たちは、近くのコンビ二に車を止め昼食を食べた。メニューはおにぎり各種とインスタントのお味噌汁。


「このあとはここの道を左に曲がって高速道路に行こうか」


『そのまえにどこかでガソリン入れないと』


「あ、そっか。じゃあここに行こうか」


 車内でこのあとの行動について話し合う。会話がひと段落したとき、ふとよこしまなことを思いついた。

 今一口食べて具の鮭が見えているところを、美空ちゃんに差し出す。


「え~っと・・・未来ちゃん。これは・・・?」


 美空ちゃんは突然差し出された食べかけのおにぎりにどうしたらいいか分からないようだった。

 私があーんっと口を動かすと、理解したらしい。


「あ~んってこと?」


 私は大きく頷くと、おにぎりを口元に差し出す。


「~っ、パクッ」


 美空ちゃんは恥ずかしがりながら一口食べた。


『おいしい?』


「うん…おいしいよ・・・百合に目覚めちゃったか・・・」


 上機嫌な私の横で美空ちゃんは赤面しながら空を見ていた。


     □ □ □


「あ!見えてきたよ!レインボーブリッチ!」

 あれから約4時間ほど高速道路を走った。目の前には真ん中に球体をはめ込んだ様なテレビ局が見えていた。


「さて、もう夜だしどこかのホテルにでも行こうか」


 私は頷くとレインボーブリッチに向けて車を走らせる。

 瞬間、突然ボンネットに人型の『モンスター』が降ってきた。


「未来ちゃん頭伏せて!!」


 即座に美空ちゃんが拳銃を構え、引き金を引いた。

 パーンという乾いた音と共にフロントガラスが割れ、『モンスター』は頭を抜かれ声にならない雄たけびを上げ、タイヤの下敷きになった。

 しかし、これがいけなかった。気づいたときには遅かった。

 辺り一帯に『モンスター』が溢れかえった。銃声に町中から『モンスター』が集結した。

 人型、犬型、鳥型・・・視界の全てが埋め尽くされていく。


「っっ!!」


 私はハンドルを強く握り直すと、底に付くぐらいまでアクセルを思い切り踏んだ。


「おわぁぁ!!」


 美空ちゃんが急発進に驚いていたけど、無視。

 サイドミラーで後ろを見ると、ほとんどは遠く後ろに置いていかれていた。しかし、トラ柄の『モンスター』が余裕で追いついてきていた。


「未来ちゃん!安全運転よろしく!」


 そう呼ばれ助手席を見ると、美空ちゃんが助手席の窓から体を乗り出して後方に拳銃を向けていた。

 

「これでも、くらえ!」


 パンパン!っと銃声が鳴るが、その度にトラ柄の『モンスター』は横にステップして銃弾を避ける。

 美空ちゃんはさらに身を乗り出し、再度発砲する。

 私は右手だけでハンドルを切りながら、左手で美空ちゃんの足を落ちないように支えていた。

 前を向いた瞬間、視界の上の方、上空からカラスのような鳥型の『モンスター』がぼろぼろの車体を落としてきた。

 私は美空ちゃんから手を離して、精一杯にハンドルを切った。

 

「うわっ!」


 手を離したせいで支えを失った美空ちゃんは勢いに乗って車から放り出された。


―美空ちゃん!―


 出したかった声は出ず、差し伸ばした手は空を切り、美空ちゃんはお台場の東京湾に落ちていった。

 それをただ見つめながら、教習所の車は、押しつぶされ炎を上げた・・・


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