恐怖、決起
「未来ちゃんっ!避けてぇ!!」
私は何も考えずに頭を下げた。すると、パーンッ!っと乾いた銃声がした。
おそるおそる目を開ける。すると、
「…ひィっっ!」
『それ』は頭から青色の液をドバドバ垂らし、私の目の前にドシャァッと倒れた。
「未来ちゃん!」
美空ちゃんは手に持っていた拳銃を落とすと、泣きながら抱きついてきた。
「良かったぁ・・・ホントにに良かったよぉ・・・ひぐっ、ひぐっ」
それにつられて、私も泣いた。声は出ないのに泣き声はでてることになんて気付かずに泣き続けた。
□ □ □
泣き止んだあと、私たちは別のスーパーで缶詰や総菜パンを手に入れて、学校の教室に帰ってきた。
教室に入ると、二人で寄り添いながらメロンパンを食べた。
「ねえ、これからさ」
突然、美空ちゃんが話しかけてきた。
「私ね、考えたんだけど。皆死んじゃって、生き残ってるのはたぶん私たちだけ。だから、ふたりで死ぬまで楽しんで過ごしたらどうかなって思ってた」
確かに、もうどうやったって皆は戻ってこなくて、私たちも死ぬまでただ待つだけ。だから、死ぬまで遊び続けて、幸せに人生の幕を下ろす。
しかし、美空ちゃんは「でも」と続けた。
「でも、町にでたらさ。あの変な悪魔みたいなやつがいた。私、あんなモンスターみたいなやつを知らない。でさ、私思ったんだけど、あの変なやつが皆を殺したんじゃないのか、って」
―私は、震えた。あの、唾液にまみれた、鋭い牙に肌を貫かれる、その光景があったことに。そしたら、あの誰とも判別のつかない肉塊になっていたのだろうか。
「ねえ、未来ちゃん。私、皆が死んじゃって、でも、何故か涙が出なかったの。でも、なんでなのかを知りたい。なんで今日皆死んでしまったのか。なんで私たちは生き残ったのか―」
私も、知りたい。皆が死んじゃった、その理由を知りたい。
「だからさ、未来ちゃん。ふたりで・・・旅に出よう。どこまで行けるかわからないけど、ふたりで旅をしよう」
美空ちゃんはそう言うと、こちらを振り向いて、微笑んできた。
私はそれに、手を握って答えた。
これから怖いことが待ってるかもしれない。危険なことが待ち受けてるかもしれない。
それでも、私は、私たちは、旅をする。自らが望む答えを探しに。
『私も一緒に行く!一緒に、旅に行く!!』
ノートにそう書いた私の言葉を見た美空ちゃんは、その瞳を潤ませて、うなずいた。
「うん…!一緒に生きよう…!生きて、旅をしよう!」
美空ちゃんと同じ、優しい涙を流して私たちは抱き合って眠った。
こうして、私たちは生きる『理由』を見つけ、この『屍の世界』を生きる覚悟を誓い合った―