涙、出会い
未来は何も分からなかった。両親に無理やり自宅の物置に押し込まれ、気がつくと、私以外の誰も、何も生きていなかった。
私を物置に押し込んだ、両親も。
居間でゲームをしていた、弟も。
ペットの猫、クロも。
お隣りのおばさんも。
道路を歩いていた人も、近くの公園に咲いていた花も、木も何もかも、生きていなかった。
そこにあったのは誰かとも分からない骨と、グチャっとした何かだけ。
ただ分かることはひとつ、みんな死んでしまったということだけだった。
「うあああぁぁぁぁぁ!!」
泣きたかった。でも、なぜか涙はでなかった。
どんなに声を上げても、涙だけはでなかった。
私は声が枯れるまで泣こうとしたが、諦めて歩き出した。
町に出ても声をかけて来る人はいなかった。
私は住宅街に戻って来て、そのまま学校に向かった。のどはカラカラに枯れていたが、どうでも良かった。
学校について、職員室を覗いてみる。
昨日まで授業をしてくれた、理科の先生もやっぱり死んでいた。
校長先生は高級そうなイスに座って死んでいた。
私は自分の教室に入ると、カクンと足が崩れて倒れこんだ。
このまま私も死ぬの?皆みたいに骨になるの?
恐怖も悲しみもなく、私は目を閉じた。
その時だった。
「未来ちゃん?未来ちゃん!未来ちゃん死んじゃだめ!起きて!」
不意に声がした。名前を思い出す力はなかった。
「っっかッ!ハぁッ!」
「のど渇いてるんだね。えっと、これ飲んで!」
差し出されたペットボトルの水をゴキュゴキュ飲んだ。
「っぷはっ!はぁはぁ」
「良かった、未来ちゃんは生きてて。ホント、よかったっ!」
何もかも死んだ世界で、初めて生きたものに出会った。
クラスメイトである美空ちゃんは、私に涙を思い出させてくれた。
「うっ、うっ、うあぁぁぁん!」
西暦210*年8月*日、その日人類は滅亡した―2人の少女を遺して。