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テラ生まれのターさん異世界に行く  作者: うゐのおくやま
第一章 異世界転移
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第一章 6.嫌だ嫌だで仕事がない

 結局あの後、俺とソルさんは二階の応接室みたいなところに招かれて、ギルド長だと名乗る恰幅の良いおっさんと面談した。


 ギルド長は最初は規則があーだこーだと言っていたけれど、帝国臣民様の威光には勝てず、キャンセル料と俺の冒険者登録料は、次回以降の報酬から分割で払うことになった。


 それで、二人で出来る割の良い仕事を紹介して貰うことになったのだが……。


「それでですね、レディ……」


 場所は応接室のままだが、相手は猫耳受付嬢のマルシアさんだ。ギルド長は分割払いの話を済ませると、とっとと逃げて行ってしまった。


「採集以外で報酬の良いお仕事となりますと、こちらの三件になります」


 手渡された三枚の藁半紙を眺めてみる。あー、やっぱり読めないや。ガラポン会場で天人が頭の中をイジっといてくれると言ってたが、言葉が解るようになってるけど、読み書きは別だったみたいね。


「ふむ、スライム退治と古屋敷の調査と草原狼狩りか」


 おお、流石は歴女。辺境の文字も読めるのね。


「なに、スメールの文字は古帝国語だからな。これは首都星の市民にとっては一般教養のうちだ」


 どーせ俺は田舎モンの無教養モンですよー、だ。


「しかし、ちょっとな。スライム退治は下水道に潜るのであろ? 汚いし臭そうだ。古屋敷調査も埃塗れになりそうだし、草原狼を狩れと言われても装備が小さなナイフくらいしか無いのでな。他にもっと良いものは無いのか?」


「い、いえ、レディもターサン様もまだ登録したての銅級冒険者ですので、あまり難易度の高いものはお勧め出来かねますし、あとは多少、報酬が少なくなりますが、薬草などの採集の依頼しか御座いません」


 なんだよ、ターさん様って! おかしいだろ、笑うぞ。


「あー、マルシアさん。俺のことはターさんで良いですよ。様はいらないです」


「はい、ですが、あの……」


 マルシアさんは逡巡したように横目でソルさんを見ながら言い淀んでいたが、最後には頷いた。


「はい、ターサンさん、ありがとうございます」


 ……いや、もっと変になったし。


「まあいいや。それで、マルシアさん、各内容の説明を詳しくお願い出来ないかな?」


「はい、この一枚目のスライム退治はですね、最近の経済発展に伴って下水の富栄養化が進み、下水道内のスライムも過増殖してしまったんです。下水の浄化に無くてはならないスライムですが、増えすぎてしまうと逆に下水道詰まりの原因にもなってしまうため、定期的に駆除を行っています。朝の〈水の二刻鐘〉から夕刻の〈風の一刻鐘〉まで街の下水道に入って頂き、持ち帰ったスライムの核の数によって、基本報酬以外に報酬金が加算されます」


 下水道に入って最低一匹はスライムを倒せば、基本報酬の小銀貨一枚は貰えるらしい。あとは一匹追加毎に大銅貨五枚ずつ報酬が増える。スライムは弱々なモンスターだし、数も捕れるからそこそこ美味しい仕事だが、スライムを倒すのも、核を取るのも下水に浸からなければならないだろう。綺麗好きな都会人には辛い仕事かもね。


 ちなみに宿代が、一泊で朝晩の食事が付いて一部屋につき大銅貨六枚だ。ベッドは縫い合わせた二枚のシーツに刻んだ藁を詰め込んだだけの硬いマットに毛布が一枚。でも食事はまあまあ美味いし、昼飯の分まで食い溜めしても怒られない。しかもスライムのおかげで、中世ヨーロッパ風の街なのに水洗トイレだ。入る前に桶を借りて水を用意しなければならないが、部屋でオマルを使って窓から投げ捨てたりしなくて済む。


 だからどこぞのパリみたいに、マントとハイヒールが無ければ危なくて街が歩けないなんてこともない。各階にトイレが付いててなかなか良い宿だと思う。


 もちろんソルさんとは別部屋なので、二人だと宿代は大銅貨で十二枚。支払いに銀貨を交ぜるなら小銀貨一枚に大銅貨二枚だ。


 十進法で安心したって? ところがそんなに簡単じゃない。大銅貨から小銀貨へ、大銀貨から小金貨へとクラスチェンジする時は十枚単位で繰り上がるけど、小銅貨から大銅貨へ、小銀貨から大銀貨へ、小金貨から大金貨に交換する時は四枚毎なんだ。

 今の宿に十日間泊まったら、支払いは大銅貨で百二十枚、小銀貨なら十二枚、大銀貨なら三枚になる。


 まあ、小さくても大きくても貨幣の材質はほぼ一緒だろうに、大銀貨や大銅貨が小銀貨や小銅貨の十倍の価値だったら、大きさだって十倍になっちゃうもんな。紙幣なんて無いんだから、街で日常的に使うコインがそんなに大きかったら財布が重くて大変だ。


 ちなみに帝国の1クレジットがこちらの現地通貨で小金貨一枚になるそうだ。街で帝国クレジットは使えないから、入国時に宇宙港で両替するんだと。


「二枚目の依頼は武家街にある古い御屋敷なんですが、ここが三代続いて当主や家人が変死して、今は誰も住んでません。現在の持ち主は相続でこの御屋敷を手に入れましたが、縁起が悪いので売り払いたいのに買い手がつかなくて困ってます。一週間ここに仮住まいしてもらい、異常がないか調べて欲しいとのことです。報酬は後払いで小銀貨六枚です」


 へー、廃墟探検みたいなものか? 報酬は多くないけど、一週間分の宿代が浮くかな。


「三枚目は街の外の農村で家畜に被害が出てるので、草原狼を駆除して欲しいとのことです。草原狼一頭につき小銀貨一枚、肉や皮などの素材も別に買い取りますから、なかなか良い収入になると思います。ただ、狩りに慣れたチームでないと危険もあります」


「先程も言ったが、下水道に入るのは汚いから嫌だ。古屋敷の調査も報酬が少なすぎる上に、変死者が出てる屋敷の調査など不気味ではないか。狼狩りはなかなかの稼ぎになりそうだが、装備がないし未経験者が二人では心許ない。他にもっと良いのはないのか?」


 お、おい、またマルシアさんが涙目になってるぞ!



お読みいただきありがとうございます。

この物語を気に入って貰えたら是非☆をポチッと宜しくお願いします。


明日も17時と20時に投稿しますm(_ _)m


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