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テラ生まれのターさん異世界に行く  作者: うゐのおくやま
第一章 異世界転移
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第一章 3.異世界転移で親不孝

(タカシ、部屋に籠もってばかりいては駄目よ。明日は学校に行きなさいね)


(うるせー、放っといてくれよ)


(タカシ、ご飯よ。タカシの好きなカツカレーを作ったわ。部屋から出て来なさい)


(うるせー、邪魔すんじゃねえよ、ババア!)


(タカシ、ご飯を持ってきてあげたわ。ドアを開けるわよ。大丈夫よ、母さん何も見てないから)


(なんで勝手に入ってくるんだよ、メシなんか要らねーよ。出てけー!)


(ゴメンよ、タカシ。……母さん、タカシのことが心配だったの。もっとちゃんと見ていてあげれば、心臓病なんかで……)


 ゴメンよ、ゴメンよー、母ちゃん。親不孝者でゴメンよー!




「はっ!」

 目が覚めた。知らない天井だった。


 薄暗い部屋の硬いベッドに寝かされていた。、天井は煤だらけで黒ずんだ梁が剥き出しに見えている、一瞬、古民家風のペンションにでも泊まっているような気分になったが、よく目を凝らして見てみると蜘蛛の巣だらけだ。ろくに掃除をしてねーな。保健所にチクったろか。


 などと考えていると、部屋の扉が開き、見たことのない顔の外国人の女が入ってきた。背がスラッとして高く、綺麗な長い黒髪をユルふわっと後ろで束ねていて、肌も色白で美人だけど、ちょっと目つきがキリッとして気が強そうな感じだ。なんとなく苦手なタイプだな。


 あ、ヤベー、俺、英語とか話せないわ!


 でもまあ挨拶は大事とか古事記にも書いてあるそうだから、ここは笑顔で挨拶だ。


「は、ハロー、アイムファインセンキュー! ホエアーイズディス?」


「ん? 聞き覚えの無い異語だな。其方は異国人とつくにびとなのか? 困ったな、言葉が通じないとは……」


「あ、いや、言葉、解ります……」

 チッ、日本語喋れんじゃねえかよ、頑張って英語を話して損したわ!


「あ、あのー、ここは何処なんでしょうか? 僕ちょっと記憶が混乱してて……」


「ここか? ここは惑星スメールの第三大陸の東の端にある都市国家マカダだ。昨日のことだが、其方が街の外で倒れていたのを拾ってきたのだ」


「え、えっ? 惑星スメール? 第三大陸のマクド?」


「うむ、其方は行き倒れておってな、そのまま無視するのも後生が悪いので、わざわざここまで担いできたのだ。感謝するが良い」


「そ、そりゃあ感謝しますよ。ありがとうございます」

 でもなんか上から目線で押し付けがましくね? やっぱり第一印象って信用出来るわ。


「それで、其方は名前は何という? なぜあんな場所で倒れておったのだ?」


「そ、それがですね。自分でもよく解らなくて。……部屋にいてトゥルパ生成の実験をしてたはずなんですが、床に穴が開いて、落っこちて……。あ、あれ? ……俺、死んだとか、地面に這いつくばって腹ペコだとか、変な夢が……あれ?」


「ふむ、どうやらまだ行き倒れてたショックから回復していないようだな。それで、其方は先程の異語と言い、何処の惑星から来たのだ? 帝国共通語ではない言葉だったから、よほどの田舎の藩国の惑星なのだろうが」


 え? 帝国共通語? 田舎の惑星?


「いやいやいや、何を言ってるんですか? ここは日本でしょ? あなたも日本語を上手に喋ってるじゃないですか! え? これってナニコレドッキリなの? テレビカメラとかあるんじゃないの?」


「其方こそ何を言ってるのだ? ここは惑星スメールのマカダ国だと言ったであろう。ああ、現地人とは違う服を着ていたから、てっきり私と同じ宙航者ツーリストだと思っていたが、この星の田舎の出身だったのか」


「え?」


「ん?」


 ………………。


 しばらく黒髪の外国人女性と無言で顔を見合わせていたが、ようやくこれがドッキリ番組ではなく、先程まで夢だと思ってた、ガラガラポンによる異世界転移なのではないかと思いついた。


「マジかよ~、俺、死んじゃったの? それで異世界? そういうラノベは好きだけど、マジで俺が異世界転移なのかよ……」


「色々とあって混乱中らしいのは解るが、もう少しこちらにも解りやすく説明をしてくれ。異世界だと?」


「そうなんすよー。異世界移転とか解ります? お姉さんはラノベとか読む人?」


「らのべ? とかは解らぬが、転移とは次元ジャンプのことか? まだ実用化はされていないと思ったが、たまに実験中に事故が起きて人が行方不明になるとは聞いたことがある。それで、そなたは何処の藩国から跳ばされて来たのだ?」


「どこって地球ですよ。えーっと、太陽系の第三惑星?」


「チタマでは解らぬ。人類居住可能惑星は全て普通に岩石惑星だろう。それに何処の太陽系なのだ?」


「チタマじゃなくてチキュウ! そう言えば、俺の住んでた太陽系って名前があるのかな? えーっと、惑星の名前はですね、テラですよテラ!」


「そうか、そなたはテラ生まれなのだな。……なるほど、解らん。聞いたことのない惑星だから、よほどの辺境の田舎国家なのだろうな」


「あー、そうですよー。田舎でスイマセンねー」

 マジでムカつくわ、この女!


「それで、お姉さんは何処の都会の出身なんですかー?」


「私か? 私は帝国の首都星出身だが、そなたが藩国人だからとてそんなに畏まらずとも良いぞ。この星では同じ宙航者ツーリストの稀人だからな」


「え、えーっと、俺はそなたじゃなくて、松浦崇って名前があるんだけど、お姉さんはなんて名前なの?」


「ふむ、マツーラ・ターカシか。私はソル・ジョイベルクだ。歴史愛好家でな。この帝国発祥の地である惑星スメールには、史跡巡りに来たのだ」


 なんだ歴女かよ。聖地巡礼とかしちゃう訳ね。



お読みいただきありがとうございますm(_ _)m

楽しんでいただけたら嬉しいです。


4話目は20時の投稿になります。

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