最終話 黒銅の断罪者
ナイフを刺された右手から大量に血があふれ出る。
手を掴まれたままの態勢で左足で相手の右(浅岡から見て)を蹴りあげた。
すると、冴島は蹴った衝撃でふっ飛んだと同時に冴島の腹部辺りに鉄パイプのようなものが冴島に突き刺さる。
そのすきに倉庫の荷物の後ろに隠れ偶々、ポケットの中にあった布で右手をきつく縛った。
荷物から少しだけ顔を出すとそこには一時的に気絶している様に見える冴島のすがたがあったが何やら様子がおかしい。
少しずつ近づこうと考えていた時、奴の笑い声が倉庫内を響き渡った。
「やるじゃないか?浅岡洋一。いや、まいったよ僕の負けだ。さぁ君の手で僕を殺してくれ~」
そう言い、俺がいる方向へと足を運ばせている。ポタポタと水が地面に落ちるような音が聞こえる。たぶん血だろう。
そう思い、隠れていた場所を思い切り出て冴島に近付いた。
冴島の目を見ると俺がどこにいるのかもわからないくらい目が見えていない様に見えた。
「お前その目...」
冴島は苦しそうに腹部を抑えながら俺がいる方を向いてこう言った。
「君に負けた僕から最期に君に伝えないといけないことがある。君たちが探している人物は君たちの組織にいる...」
そう言うと口から血を吐きだした。
「もう、いいしゃべるな」
冴島が俺の顔に両手で手を当ててこう言った。
「君ならきっとこの世界の真相にたどり着けるはずさ。後は頼むよ...あさおか...」
そう言い残し息絶えた。
外からサイレンやヘリのプロペラ音が鳴り響く。
倉庫の外に出るとそこには公安のヘリなどがいた。
そのあとの記憶はかすかにしか覚えていないが多分あの組織を辞めることになった原因になったのだろう。
数年後
綺麗な海の景色が見える場所に立つ1つの墓があった。
その墓の前で花を供える男がいた。
その男は花を供えて墓に向かって手を合わせ終えた後、一本の煙草を取り出しライターで火をつけてこう言った。
「任せろ」と...
その男の名は浅岡洋一。元警部であり断罪者だった。




