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故郷

 夢を見ていた。長い夢だった。


何度かうなされていたかもしれないが、そんなことはどうでもいい。

目が覚めてお外真っ暗、隣にはなぜか少女、ヨルが抱き着いていたことに驚いた。


「どれだけ気を抜いてるんだ俺は。」


気絶させられたことを忘れていた俺は、今日一日がすでに気絶と睡眠と、身支度のみで終えていたことに気づき、いつ依頼に行けるのかと心底不安になった。







突然だが、俺の昔話、というか故郷の話でもしよう。

故郷といっても、王都とか、それなりに有名な領地や町でもない。いや、ある意味どこにでもあるから有名なのだろうか。


スラム。

俺たち貧民は毎日生きることを目標に、時に協力し、騙し、依頼を受け、売り、何とか毎日を生きていた。国に地位や権力があるように、スラムにもそれは存在した。


俺はスラムの中では恵まれていた、と思う。あくまでスラムの中ではの話だ。



畑を持っていた親代わりのおやっさんがいて、人よりも器用なことができて、たまたま身体能力が人よりも少し秀でていたから、喧嘩の仲裁なんかもよく行っていた。俺はスラムの中では権力を持っていたほうだ。それでも上は存在したし、俺より強い奴がたくさんいることも分かっていた。



そんな俺の故郷であるスラムに、突然軍隊が押し寄せた。

誰が見ても、スラムを占拠するには多すぎる人数でだ。軍人たちは大声で呼びまわりながら人を切っていた。



「我らが王よりお前ら貧民にありがたいご命令を受け賜った。心して聞け。


本日より数えて半年後、戦争を開始する。そのため無能なお前たちにも働ける場を設けてやるとのお達しだ。

脳が足りないお前らが、お国のため、王のため、国のために忠誠を誓い、喜んで死ねる機会を作ってくださることに感謝しろ。


抵抗する奴はその場で斬首してよいとも命を受けている。ごみども、早く馬車に乗り込め。」


何を言っているんだこの男は。


突然のことで誰も動けなかった。そうして固まっていると、一人の軍人がおもむろに剣を抜き、目の前を歩いていた人を切り捨てた。



その瞬間、スラムはパニック状態と化した。



ぼろい家に隠れる者、竹や錆びたナイフで戦おうという者、荷物を捨てて一目散に逃げる者。みな自分の命や、守るべきもののために命を賭している姿がそこにはあった。



「俺は、どうする。」



俺の家の大きさからして、多分軍の人間がすぐに押し寄せてくるだろう。だがあの家の中にはまだ教育中のガキどもが居やがる。どうにかしてあいつらの逃げる時間くらい作らないと上に立つ者、権力や力のある者の振舞いではない。



そう思った俺はすぐさま家に駆け込み、指示を飛ばした。


「おいステラ、ステラはいるか。」


「ここにいるよ。」



いつも当たり前だといわんばかりに俺の背後を取りやがる。だが今はそんな彼女、ステラの能力の高さが安心感をよんでいる。


「軍隊だ。ガキどもを連れて逃げろ。所定の位置で集合だ。2時間後、約束の場所に俺がたどり着かなかったら切り捨てろ。最優先はガキどもだ。


…あと、できればお前も死ぬな。」



俺が死んで、ステラまで死んだらガキどもの面倒を見るやつがいなくなっちまう。それに、人脈を持っている人間が死ぬことがいかにスラムで生き残りにくくなるのかを俺は知っている。



「兄さん、私は死なないよ。子供たちは私に任せて。何かやることがあるんでしょ、おおよそ見当はつくけど止めても無駄なの知ってるから。

…そっちこそ死なないでね。」



とりあえずステラに6人のガキどもを任せておけば問題ないだろう。よくわからないがあいつは相当に頭が回る。生きて次に出会ったら出身ぐらい聞いておこう。



「…時間稼ぎでもするか。」



そう言った俺は、他に生きているスラムの連中が周りにいないことを確認して、チートでもない、ずば抜けたステータスも持っていないが、唯一の武器を使って時間を稼いだ。



軍人たちはスラムの人間を侮っているのか、二人一組で家などを壊しながら進んでいた。



「スラムは俺たちの家同然だ。少しずつ分断して各個撃破が無難か。」



そう判断した俺は、小細工ばかりを使いまくった。


わざと家を倒れやすくしたり、あらかじめ壊しておいたり、声をあげては走ってかく乱したり、生きてる人を逃がすことも忘れなかった。


「こいつ…ちょこまかと…」

「おい、俺が先に行くんだよ。」

「なっ、ふざけんな俺が先だ。」



目の前で軍人二人が言い争っている。まるでここにいる俺はすでに得物であると確信しているのだろう。



「仕方がない、戦うか。」


十分に時間は稼いだし、これ以上下がっても被害は大きくなるだろう。各個撃破の時間だ。


特別な力もない俺でも、大の男二人、それも仮にも軍に入って鍛えている男くらいならどうにかなるくらいの力はあると自負している。



そこからは、育った環境による一方的な殺戮になったとだけ言っておこう。




言葉で伝えるって難しいです

次話7日予定です

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