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ゲーム

ようやく、題名に近づいてきました。


「自己紹介を始めます!」


「どーぞ子自由に。」


「ノリが悪いなー、まぁいいや。

まずはじめに言っておくけど僕の名前はないよ。毎回契約の一部に名前をもらうという内容

があるからね。悪魔は契約時に代償が必要なことは知ってるよね。僕の契約に必要な内容は…」



こんな姿をしていても、伝承や記録にある恐ろしい悪魔だ。いままでの代償に何を求められてきたのか、そんな記録はほとんど存在していない。眉唾物ばかりだが、決していい契約になったという記録は残っていないらしい。


だが、何事にも例外という物は存在する。このチビガキのように、お気楽な悪魔がいるという情報は調べた限り出てこなかった。代償とは何に対する代償なのか。悪魔の求めている事象に対する代償であれば、一体ずつ内容が違うことくらいすぐに理解できることだ。



「ねぇ、聞いてる?」


「あぁ、聞いてるから続きを話してくれ。」


「んふふー、了解したよ。

まず僕がどんな悪魔か説明するとね、遊戯の悪魔なんだ。各悪魔には二つ名のようなものがあってね。僕はほら、こんな性格だから遊戯って二つ名がついたんだよ。」


遊戯。子供の遊戯なら想像がつきやすいが、仮に悪魔の遊戯と言ったら、想像しただけでも気持ちが悪い。


「早速契約の内容についてなんだけど、他の悪魔みたいに野望とか企みが一切ないんだよね僕って!

だから、どれだけ僕を楽しませることができるかってことが代償かな。

勿論、楽しめなかったら、最悪の結末を迎えるってことだけお伝えしておくね。」



そういったガキは、顔は笑っているのに目が笑っていなかった。今まで無邪気に話していた子供のような顔とは別人の、悪魔の顔をしていた。


何事も見透かすよなその青い目からは、何か企みがあるのではないか、そんな想像が吹き飛ぶくらい猛烈な恐怖を感じた。



「分かった。とっておきの楽しみを与えられれば、お前は俺が死ぬまで力を貸すってことか?」


「んー、僕は気まぐれだからね。契約の時に話す言葉は絶対だと約束するよ、けどそれ以外は僕にだってわかんない。

それよりも、自信あるの?この際だから言うけど、僕今まで契約できたことないよ。」



契約したことがない悪魔とかどれだけレベル高いんだよ。ただ、今後俺以外の助力が必要なことも出てくるだろう。こいつほどの存在なら、手に入れば大きい。


一か八か、賭けに出るしかない。



「お前に命を使った面白い遊びを提供してやる。」


そういい放った瞬間に、俺左腕で右腕の残りにそっと触れた。




「ここにサイコロがある。1から6の目にそれぞれ決まった体の一部が書かれている。

1が右腕、2が左腕、3が右足、4が左足、5が首、6が魂だ。俺は右腕を失っていることは見ればわかるだろう。」


「なるほど、君が勝つには1しか出てはいけないんだね。」


「そういうことだ。このゲームに負けた瞬間に、サイコロの目に書かれている俺の体の一部をくれてやる。その光景を見た後に俺の命でもなんでも持っていくといい。

ただし、1の目がでたら、俺が死ぬまで俺への裏切りはしないと誓え。」



これは本当に賭けだ。

右腕に当たる確率は1/6しかない。俺の人生を賭したゲームだ。


「一つ、条件を追加してもいい?」


悪魔がそうつぶやく。どんな言葉を投げかけられようとも、俺にはもう逃げ場はない。腹をくくって何でも呑んでやる。


「そのサイコロ、僕が投げたい。」



そんなことだろうと思っていた。俺の人生を掴んでいるのは最早この悪魔だ。実は目を操れるとしても、それが俺の選んだ道だ。仕方がない。


「分かった。好きにしろ。」



「え、いいの!ありがとう。僕こういうの一度でいいからなってみたかったんだよね。人の命を預かるわくわく感、なんていうんだろう。

楽しいよ。ありがとう。」



普通、こんな基地外に命を賭けたゲームの全てを委ねるバカはいないだろう。だが、そうでもしない限り、この悪魔の楽しさには追いつけないと思った。一度失ったはずの命、元魔王に届かないこの程度のステータスなら、いつ死んでも仕方がないと思い込んでやる。



「えいっ。」


「なっ!?」


こいつ、あろうことか前振りもなくいきなりサイコロを振りやがった。そんな簡単に俺の命を振るうのかよ、いや俺が了解したことだけれども。



「そのそろ止まるよ!わくわく。」


その髪をぴょんぴょんさせながら、くるくると回るポーズを是非ともやめていただきたい。俺の人生を粗末にされすぎだ。


「2の目…がでた。」


「どれどれー?確認しに行きまーす!あっ!」


確認しに行こうとした悪魔が盛大にこけた。これでもかというくらい盛大にこけた衝撃で、ぼろい宿屋の床がきしんで再びサイコロが動き出した。


ゆっくりと俺の足元に転がってきたサイコロは、俺の靴に当たると同時に停止し、赤色の一つの目を俺に向けていた。


「いたかったぁ。

あっ!1の目がでてるよ。2の目が出たなんて嘘までついて、僕を楽しませる気満々だったんだね、ずるいなー。」



こうして俺の命は、偶然か必然か助かった。




次話は30日を予定しています。

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