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人喰らい

スラムで成長し、何をしてでも生き残る、そう心に決めている主人公。成長し、ギルドで依頼を受けられるようになってからも、報酬にばかり執着してしまい、誰からも嫌われる存在まで落ちてしまった毎日。ある貴族の連れてきた少女と依頼を遂行する中で、少年の心はどう動いていくのか。


 「お願いします。皆さんどうか助けてください。お金ならいくらでも払います。俺の差し出せるものならば何でも報酬として差し出します。ですから、どうか、どうか。」


周りの眼は冷たく、俺に注がれている。今まで一緒に旅をしたことがある奴らからもだ。冒険者だけではなく、ギルドの職員からもため息のようなものが聞こえる。


当然の報いを俺は受けていた。今まで自分よりも弱きものをいじめ、無視をして、強者には尻尾を振りまく。厄介ごとには首を突っ込まず、美味しいところだけをかっさらっていく、そんなやり方に皆が困り果て、気づけば町から無視されるまでになっていた。



「どうか、どうか俺の、俺の故郷を助けてください。」


やっと紡いだ言葉は空を切った感じがした。少しの時が経ち、一人、また一人と日常へと戻ってく。いつもの騒がしいギルドに戻るまで、そう時間はかからなかったのが今となっては悔しさしかない。


俺の名前は誰も分からない。人には名前があるのが普通だけど俺には無い。ただ、俺は町の奴らからこう呼ばれている、『人喰らい』と。







「今日も大金が手に入った。この調子でいけば、あと少しで買える。」


麻袋の中に銀貨、金貨が何枚か入っている。俺は枚数を二度数えた後、衣服の中に硬貨をしまった。誰に見られるわけにもいかず、路地裏で、こっそりとだ。


「今日の依頼主は羽振りが悪かったからな。だが、俺は依頼の報酬はしっかりともらっていくスタイルだ。」


俺が依頼とは別仕事をしないといけないことも多くなってきた。冒険者の中には、ギルドを介さずに依頼を受ける者もいるが、そうするとよく依頼主との間でトラブルが起こりやすい。そのため、俺も嫌々ギルドを通して依頼を受けているわけだが、俺のことを知っているためか、よく報酬をごまかされたり、依頼主から直接受け取るなどといった変わった依頼が多い。というか、そんな依頼ぐらいでないと俺は受けられないのだけどな。


今日の仕事については楽な部類だった。



朝起きた俺は、いつもと同じように冒険者ギルドに向かった。朝早くに依頼は張り出されるのだが、急を要する依頼などはその都度更新されていく。

俺は朝に弱いため、いつも依頼版を見るのはビリだ。当然、いい依頼なんて残っているはずもない。時折町の外からの依頼にかこつけて依頼を受けるくらいで何とか生活できている。


古臭い扉を開けた時、ギルドの職員と貴族風の男が会話しているのが視界の端に見えた。

この時間に来るということは、緊急の依頼だと予想し、さりげなく近づいてみる。



「おい。依頼を頼みたい。」


「はい、どのようなご依頼でしょうか。」


「内容は言えん。ただ、有能な奴に来てほしいと思っている。依頼は有能な奴との面談といったところか。」


話を聞く限りだとギルドに言えない内容なのか、それか貴族としての矜持が邪魔でもするのか、今の情報だけでは判断がつかない。とにかく、


「良い餌になってくれるかどうかだ。」


小さく言い放った俺は、その男の観察をしていく。

身長は俺と同じくらいか少し高め、でっぷりと太ったその腹から金持ちだろうという想像は容易だ。指に豪華なアクセサリーなんかつけて、よほど自己顕示欲が高いらしい。髪は少し白髪が出始めた頃だろう、髪も髭も使用人に整えてもらっているのか見た目はきれいだ。


そして、気になるのは付き人がいないことだ。

本来、こんな野蛮な人間の巣窟に貴族が単独で足を踏み込むなんて馬鹿でもしない。例え付き人がいようが護衛がいようが突っ込む知性の低い馬鹿はどこにでもいる。


本物の馬鹿なのか、本人に隠れた才能でもあるのか。

思考を巡らせていると、ご都合なことに馬鹿が現れた。


「おいおっさん、金持ってんだろ。少しは分けてくれよ。女でもいーぜ。いつも楽しんでるうちのすこーしを分けてくれよ、なっ、いいだろう。」


頭の悪そうな冒険者が貴族に絡んでいったな。王都のほうではどうかしらないが、こんな辺境の地の小さな町では、貴族の名前よりも今日を生き残る力ある者が大腕を振ってもおかしくはないが、あそこまでの馬鹿は久しぶりに見た。


もし貴族が馬鹿なら死んだな。



そう思った瞬間、絡んでいた男の腕が宙を舞っていた。

少し意識をそらしてしまったが、視界から外れてはいなかった。誰が腕を飛ばしたのか、そう考えているうちに貴族の男が冒険者に話しかけた。


「耳元で囁いても俺には聞こえん。」


「お前、さっきから何をぶつぶつ言ってるんだ。」



やばい、貴族の男に声かけられてしまった。未だ腕を飛ばした人物を見つけられていないこの状況で貴族の注目を得るなんて危険度高いことをしてしまった。



「いつまで騒いでいるんだ、うるさいぞ。無礼な。」


そういい放った貴族の男はおもむろに腰に下げていた豪華に飾り付けられた見た目重視の長剣で冒険者の首を刺した。

切れ味が悪かったためか一瞬で絶命することもできず、男は声も上げられないままのたうち回り、ゆっくりと動かなくなった。


「いかんな。剣が汚れた。」


頭のねじが飛んだいかれた野郎、そう決めつけるのに十分な行いを見せてくれた。


貴族の男は汚れた剣に興味が無くなったかのように見つめていると、おもむろに俺のほうに投げてきた。




題名、いまだ考え中です

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