初めての友達
「な、なんの事でしょうか?」
「とぼけなくていいよ、俺は人の隠し事は全て見抜けるから。」
なんなんだ一体、どうしてバレたんだ。仕草?喋り方?それとも最初の言葉で?でもそもそも隠してることじゃないし、正直に言ってもいいのだろうか。
俺はかなり悩んだ。この異世界に来て初めて正体がバレそうになったからだ。
「大丈夫、俺は誰にも言わねぇからよ!」
こう言う奴ほど口が軽いと言うのは昔からの言い伝えであってほしいものだ。とりあえず、俺はゼルンに正直に話すことにした。
「簡潔に言うと、見た目は女だが中身は男なんだ。」
「ええーーー!!まじかよ!!」
あからさまな驚きをありがとう。まさかここまでの反応をされるとは思わず、俺も少しびっくりしてしまった。
「お前中身が男でも、見た目は女だから女風呂覗き放題じゃねぇか!」
「いや、覗かなくても堂々と入れる。」
何故だが少し誇らしかった。俺は実際この家の敷地から出たことが無い為、風呂も母親としか入ったことが無い。
大人になって家を出たら、絶対に温泉に行ってやる。ちゃんと女湯にな。
「でも、どうして見た目は女なのに中身は男なんだ?」
俺はゼルンに異世界から来たこと、そしてその異世界で死に、自称『神』に会ったこと、全てを話した。
何故だかゼルンには、なんの気持ちもなく全て話せた。
「なるほど、異世界からねぇ・・・」
「あぁ、俺はここに来る前の姿にはなれないのか?」
「今の俺じゃ無理だな」
「そっか・・・」
「なんせ、俺でも見たことのない強力な魔術がかけられているからな。」
(あいつ、相当腕のある奴だったんだな。)
「でも、俺がもう少し魔術の勉強をして全ての魔術を使えるようになったら多分お前を男に戻せるぞ!」
多分か、まぁでも少しでも姿が戻る確率があるのなら、かけてみるしか無い!
「あぁ、頼むよ!」
「おう!そのかわり今日から俺たちは友達だそ⁈」
「友達・・・」
「おう!そうだ!友達だ!」
俺はいつも周りのやつは自分の配下にいる子分程度としか思っていなかった。
だからこそ、新鮮味があった。
「わかった!今日から俺たちは友達だ!しかも、俺はお前が初の友人となったんだ、喜べよ!」
「おう!俺もお前が初めてだ!」
まさかのこいつも友達いなかったのか。
だが俺は異世界で初めて友達ができた。子分でなく、友達が。
俺はなぜか自然と笑顔になれた。
初めて味わうこの感情、悪くない。
「じゃあ、俺はもうそろそろ帰るわ!」
「あぁ。じゃあな、約束忘れるなよ!」
「おう!また会おうな!」
「絶対だぞ!」
ゼルンは、体全身に力を込め始めた。
(また力加減を間違えないよな、流石に。)
ゼルンの立っている場所から、徐々に風が吹き始めた。
「よし、じゃあルミナまたなぁーーーーーーーーーー!!」
「ん??」
「やばい、力加減をまた・・・」
「おい、嘘だろ・・・」
「うわぁぁぁぁぁ・・・」
ゼルンはまた力の加減を間違えてあっという間に飛んで行ってしまった。
「すごいな、俺も負けてらんねぇな。」
異世界に来て初めて訪れた、男に戻れる希望。
初めて出来た友達。
次会う時までに強くなろう。
異世界に来て今までで一番、希望と喜びに満ちた一日になった。
読んでいただきありがとうございます。
今回は少し短めですみません。
明日もよろしくお願いします。




