2.兄弟子
「おいっ! 翠、今日からお前にも弟分
が出来るぞ〜。名前は、目見りゃあ分かるだろ
う蒼だ。色々教えてやってくれ。」
「分かりました、隊長。」
「じゃあな、坊主。これから頑張れよ!」
そういうと隊長は去って行った。
隊長が連れてきた新人は、十二歳ってところだろうか。仮面を着用している兄弟子が怪しく見えているらしい。仕方が無いか、表情が見えず足のない人間が正常に見える方が問題だろう。装備品を全て外すと安心してくれたようで、興味津々といった感じで私を凝視している。
「蒼と言ったな。私の名は翠と言う。今日から君の兄弟子だ。ただ此処では師匠が教えるのは生活上の規律や座学だ。剣術や武術、魔術は自分で習得するしかない。良いか?」
ゆっくりとではあるが、蒼は縦に首を振る。
「それじゃあ、訓練場に行くぞ。歩きながらこれからについて話そう。」
「まず今の時間は……十時か。今日中に終わる
はずだな。今から君の適性を調べる。」
訓練場へは結構な距離があるのだが、歩幅があまり大きくない蒼は、ほぼ早歩きをしているように見える。
「まず戦闘向きか魔術師向きか。もしくは薬師になるかを調べる。そこから更に戦闘向きなら剣、銃、弓。魔術師向きなら何魔法を使うのか。と、細かく調べる。とにかくそれが決まらない限り、これからの生活は決められない。」
暫く黙っていた蒼が初めて口を開いた。
「どう調べるのでしょうか?」
緊張しているらしい。私がそれを避けて話しているのに、気づいてしまったようだ。
「訓練場に行けば分かる、という答えでは満足出来ないか?」
私にとってあまり良い記憶が無いそれを説明したら、適性試験を受けたがらなくなるかもしれない。出来ることなら言いたくは無い。その気持ちは十二分に込めて放った言葉なのだが、
それでも、
「教えてください。」
そう彼は答えた。覚悟を決めているような答えに勇ましい子供なのだな、と認識を改める。
「今から君一人で森に行く。その森から帰還する頃には、君の適性が明確になっているだろう。」
流石にかなり不安にさせただろうか、と少年の様子を横目で確認する。彼は不安そうではなかった。それは良かったと思う。
ただ彼が、
「ありがとうございます。」
と呟くように言った後に少し笑っているように見えたことは、私の見間違いだと信じたかった。
見間違いな訳ありませんよねぇ、朝月です。
えーと、盛大なネタバレをしますと、今回の主人公は翠さんです。前に皆さんは主人公が分かってますよねぇ、なんて言いましたが。蒼君ではありませんでした。騙す形になってしまいすみません。でも蒼君の正体はもちろん、分かっていただけるのではないでしょうか?
色々ネタバレをしないうちに失礼します。
それでは、また!