終点
「お客さん、終点ですよ」
気がついたら知らない街に来ていた。駅のホームはひっそりと静まり返り、空は薄暗い。不安を煽るように空は冷たい雫を落とし始めた。
顔に滴るのは雨なのか、涙なのか、わからなかった。
気がつくと雨は止んでいた。通り雨だったのだろうか。空は泣き止んでも、顔に滴る雨は止まない。
ふと一筋の光が曇天から顔を出す。その光は眩しく、母親のように温かかった。
キラキラと雨粒を反射させる。まるで宝石が散らばっているようだった。あの光が心にも差したら、どんなに美しいことか。
必死で手を伸ばした。あと少し…もう少し…。
一筋の光を掴んだ瞬間、電車が大きなクラクションを鳴らして身体を突き破った。
そこに散らばったのは、紅く輝く血しぶきだった。