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クマのぬいぐるみと一緒に  作者: こたろう2000
クマと魔術師と弟子
11/18

探索者始めます。1

 小さな呟きにあと「ステータスは見せる事も出来るんです」とクマを見据え強い声で告げた。

「綿貫ハジメのステータスは視るなよ」

 クマは低く言うとハジメの手から飛び出し、ミハエルの肩に腰掛けた。

 ミハエルは眉をひそめ、その後クマを丁寧に掴むとハジメに返した。

「お前、新種の生物だろ」

 手元に戻ってきたクマをしげしげと見ならハジメはクマのぬいぐるみをつつき回した。

 クマを解体する勢いのハジメの脳内にミハエルのステータスが浮かんだ。

 

ミハエル LV47

性別  男

年齢  29才

種族  人間

賞罰  無し

称号  稀代の魔術師

祝福  慈悲の女神の祝福、断罪の女神の祝福

スキル 慈悲の女神の加護LV5、断罪の女神の加護LV3、火魔法LV 3、水魔法LV5、土魔法LV3、風魔法LV3、光魔法LV5、闇魔法Lv3、演算LV3、鑑定LV2

体力  289

腕力  43

魔力  600

敏捷  72

器用  103

知力  139

耐性  42

 

「あんたのステータス、まんまチートだろ」

 力なくハジメは呟いた。

『勇者ならスキルレベル3は最低必要です。レベル3でその国屈指の実力者です。多くの人はスキルレベルを上げることなく生涯を終えます』

 城の人間に言われた勇者として求められる力の目安はレベル3。

 同時に新たなスキルの取得はほぼ不可能で、その上スキルレベルを上げることも非常に難しい事も教えられた。

 その前提を覆すようなミハエルのスキル数とレベル。

 そして慈悲の女神と断罪の女神、二つの祝福。

「なぁ、あんたが勇者で良かったんじゃない?」

 ハジメのぼやきにミハエルは困ったように笑い、日が沈む前に街を出ましょう、と話しを変えて誤魔化した。


 

「まずはこの先の村に向かい、そこで身分証を手に入れます。その後、路銀を稼ぎながら国境へ向かいます」

 ミハエルは二人分の荷物を詰めた袋を背負うと、軽い足取りで街道を進む。ハジメは必死でその後を追いかけた。

 日が沈み、宿営の準備をしていた大きな商隊を追い越した時点でハジメは疑問を抑えきれず、先を走るミハエルに話しかけた。。

「あんたオカシイだろ。ふざけた速度でいつまで走るんだ」

「後少し進んだら橋があります。それを渡ったら今日は休みますよ」

「ゾンビアタックじゃん、これ」

「ゾンビアタック?よく判りませんがこれで進めますね。ハイ・ヒール」

 ミハエルは速度を落としハジメと並ぶと、肩に手を置き魔法を唱えた。

 4時間近くハジメがランニング以上の速さを保てたのは数十分毎にミハエルが治癒魔法で体力の回復を施すからだった。

 治癒魔法のお陰で溜まっていた疲労は解消するが精神的な疲労は蓄積されていた。恨みがましく文句を言うが、ミハエルは意に介さず再び前を走り出した。

 

 ミハエルの光魔法で造られた光源を頼りに夜道を走り続ける。

「まだ先まで進むのか?さっきの商隊以降、誰も居ないって変だろ?」

「開門に合わせて王都を出た徒歩を含む旅人が初日に辿り着く限度があの商隊だったんですよ。

 安全を考えて街道を行き来する方達は大体同じ様な場所で宿営をします」

「・・・・・・ミハエル、なら、この先はますます人気が無くなって普通じゃない奴等か、人間以外の何かにしか遭わないってことか?」

「そうです。ですから橋を渡ったら街道を少し離れて宿営します」

「オレは死人扱いだから急ぐ理由はあんただよな」

「えぇ。最短で明日には王都から私への追手が来ます。向こうは騎乗した兵士でしょうからとりあえず橋は越える必要があるんです」

「追われる理由を言える範囲で説明して欲しい」

「先程、貴方が言ったでしょ?

 私が勇者で良かったんじゃないか、と。

 王家の管理下で在るなら彼等の懐刀ですが、王都を離れた瞬間から政敵になるんです。さ、もうすぐ橋を渡ります」

 今日の目的だった川に架かる橋。

 対岸までおよそ4、50メートルはあった。

 ミハエルは走りながら光源を等間隔に幾つも置いていた。

 渡りきったハジメは等間隔に光魔法の光源で照らされた橋を見て感嘆した。

 5つの石垣の橋脚で出来た木材の橋体。幅5メートルは優にあるそれは走っていても一切のぐらつきを感じない現代の橋と何ら遜色のない建造物。

 美しく照らされている橋――。

 何度も橋を越えたら、と言い続けたミハエル。

 まさか、と浮かんだ想像をハジメは否定した。

「こんな物、壊すはずないよな」

 ハジメの独り言に返事があった。

「壊します」

「壊すのかよ」

「残念ですが仕方ないんです。ここは王都と隣国を結ぶ唯一の街道に架かる橋です。これが無ければ崖を下り舟で川を渡るか、魔術師に橋を修復させるか。迂回路は遥か上流の山越えか、下流まで出て海を渡るか、そんな選択肢しか無いんです。橋を流してしまえばそれなりの時間稼ぎになります」

 残念だ、と言いながら晴れ晴れしく説明するミハエル。

 誠実で優しい男、と第一印象を抱いた自分の目の節穴っぷりにハジメは溜め息をつく。


 静かに佇み橋を眺めているミハエルから凄烈な魔力が流れてきた。

「風を集めて全てを切り刻め。ウィンド・ブレイド

 固く結ばれし物は最小に還れ。アース・デコンポジション

 慈悲の女神よ、川の流れを妨げる全てを海へと還したまえ」

 

 詠唱した2つの魔法。

 それだけで橋は木片と砂になっていた。

 そして川に浮かんでいた木片と、崩れ堤防になっていた大量の砂は女神の加護で海まで流されていった。

 もう反則としか例えようのないミハエルの力に背筋が寒くなり、何も言えず立ち尽くしていた。

「ハジメ、もう少し先で宿営します。明日も村まで走ります」

「わかった」

 太刀打ち出来ない実力差を突きつけられ、ハジメは口答えする気力もなくミハエルに従った。

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