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第八十八話 うぇいうぇいうぇい(訳:装備を新調しました)

いつにも増して酷いタイトル……。


最近ゲームセンター◯Xにハマってます。

 

 話題が無いと思っていたのだが、食事の席を一緒にすれば意外と話は盛り上がるらしい。気が付けば何気にアンサラとの会話が続いていた。最初の切っ掛けは何だったか? 


「ちなみに、君が女性に魅力を感じる部位はどこだい?」

「乳」

「…………即答とは恐れ入った」


 なんて会話も合間に挟まった。ちなみにアンサラはうなじフェチらしい。野郎同士の会話なんてこんなもんだろうさ。俺の中でちょっぴりアンサラの好感度が増した。エロは壁を貫通して繋がりを持たせてくれる。

 

 ただし、下品な馬鹿話で会話が全て終わったわけではなかった。


「ところで、君の装備だがEランクの登録試験を受けたときから変わっていないね」

「特に買い換えの必要を感じなかったからな」


 俺の装備は安手の布服の上に、鉄製の胸当てと両手足の装具。これはファイマと出会った町で購入した物をそのまま使い続けている。胸当てには諸事情により小さな穴が一つあいているが、特に目立った歪みも損傷も無い。手足の装具にしても然りだ。手入れの仕方はレアルから教わっているので錆の一つも無い。


 俺の場合、攻撃や防御の殆どは氷の精霊術を用いている為に、よほどのことがない限りは直接防具に攻撃が届く事が少ないのだ。それだけに装備品の消耗率も他者より抑えられる。


「これまではその装備でも問題無かっただろうが、Cランクに上がったのなら一度装備を見直した方が良いかもしれないな」


 Dランクまでの依頼はその殆どが魔獣を相手にする類だ。Cランク以降も多くの依頼は魔獣に関係したものだが、ここより先は人間を相手にする場合も度々出てくる。特に、護衛系の依頼であるならば護衛対象を狙う狼藉者と戦う可能性も出てくる。


「装備の質に頼りすぎるのは確かに問題だが、疎かにしすぎるのもまた問題だ。持ち主の意志に関係なく効果を発揮する装備そのものの能力は、不慮の事態における重要な要素になりえる。よい装備を揃えて損をすると言うことはあまりない」


 不意打ちで致命傷足りえる攻撃を受けたとしても、質の良い装備のおかげで九死に一生を得た、という話は割と良くある話だ。強いて言えば、良すぎる装備を付け狙う不届き者が出てきたりもするが、その程度を返り討ちにできなければ分不相応の装備なのだろうけど、とアンサラは笑いながら付け足した。


「つっても、俺に装備の善し悪しなんて分からないぞ。今の装備だって、そのときに一緒にいた旅の仲間に選んでもらったようなもんだし」

「早すぎる昇格の弊害だな。Cランクは新人の冒険者がどれだけ早くとも一年近くの実績を積んで至る位だ。その間に、装備の選択や質の善し悪しを自然と身につけるのだが、君の場合はその過程をすっ飛ばしてランクが上がったからな」

「スピード出世ってのも考えものだな」


 ランクが上がるにつれて狩猟すべき魔獣の強さや依頼そのものの難易度も上がってくる。それに応じ、低ランクでは通用していた武器では対処しきれなくなるのも当然か。そのために己の足で武器屋に足を運び、その手に新たな武器を持って質の善し悪しを判断するための知識を培うのだ。


 俺は己の胸当てに視線を落とした。胸の部分には親指大ほどの小さな穴が穿たれている。ルキスに対しては既にとやかく言う気はないが、『あの時』にもし氷結界がなければ、と考えると本当に今更ながらぞっとした。


 あのような機会が二度三度とあるはずがーー否、ここは素直に最悪の可能性を想定しておくべきか。そう考えると、経験者としてのアンサラの言葉が深く残った。


「…………けど実際問題、どうすりゃぁ良いんだ? ぶっちゃけ、俺の判断基準はお値段ぐらいしか無いぞ」

「それはそれで十分に判断として間違っていないな。まともな・・・・武器屋を選べばの話だが」


 どこの世界にも、詐欺紛いの商売人はいるらしい。当たり前か。


 霊山の麓村に住んでいたとある村人からも近しい話は聞かされた。大人の階段を上ろうと苦労して貯めた貯金を持って町に向かった話だ。色っぽいお姉さんが呼び子をしている色街のとある店に入ったら、『本番』に出てきたのは『女?』と思わず疑問符が出てきてしまうようなゲテモノだったとか。あまりの不細工具合に『食われる!?』と恐怖を覚えた彼は支払った金をそのままに村に逃げ帰ったという。以降、彼はちょっぴり人間不信と女性不信の二重不信に悩まされたという。


 ちなみに彼は、今では故郷で恰幅の良い嫁さんもらって三児のパパだ。乳も胴体もまるッとしているが、愛嬌の良いおばさんだった。


 野郎の失敗談はいいとして、RPGならば武器を見ただけでステータス画面に『強さ』が表示されるのだろうが、リアルファンタジー世界ではそれも望めない。結局、最後に頼れるのは人様の知識か。


「ま、その点に関しては安心しても良い。私もこの街を拠点にしてそこそこ長いからね。品質と値段が保証できる店を紹介してあげよう。かく言う私も、つい先ほどまで装備を預けていた店だからな。私の名前を出せば少なくとも邪険にはされないだろう…………なんだねその目は」


 俺はこの時、おそらく不審者を見るような目になっていただろう。


 アンサラは眉を顰めてから、諦めたように溜息をした。


「有望な若手にアドバイスを送るくらいの甲斐性はあるつもりなんだがね、私にも」


 その有望な若手の腕をちょんぱしてくれたのはどこのどいつだ、と喉まで出掛かるが口には出さなかった。己の中で一度は踏ん切りが付いた出来事を、それ以上とやかく言うのは躊躇われたからだ。


「…………あの件に関しては言い訳をするつもりはない。怪我に対する保障はあったろうが、最悪は有望な冒険者の未来を閉ざす可能性もあった。この程度のお節介は詫びの一部だと思ってくれてもいい」


 言葉にしなくとも考えは表情に出ていたか。アンサラは真剣な眼差しになりこちらに向けて頭を下げた。


「って、おいおい。Aランク様がCランクの若造に頭を下げるのは少々不味くねぇか?」


 周囲には俺たちのほかに食堂で飯を食べている大勢の冒険者がいる。アンサラの存在で少なからず注目を集めていたが、彼が頭を下げた事でどよめきが広がった。


「他の冒険者の規範となるべきAランクであるからこそ、君に対しても己に対してもきっちりケジメをつけておくべきだと思ったんだ。改めて先の件、試すような事をして申し訳なかった」


 ーーーーこうして俺は、『後より答えを出す者フラガラッハ』に一撃を加え、さらには頭を下げさせた若手冒険者『白夜叉』としてどんどん有名になっていくのだが、それをやはりこの時の俺は知らなかった。木刀は持ってないぞ?


 


 THE、三十分後。


 アンサラと食堂で別れた俺は、彼に教わった武具店へと足を運んだ。


 別れ際に「困ったことがあれば頼ると良い。できる範囲なら力になろう」との言葉をいただいた。本当に困ったことがあったら頼らせてもらおう、と額面通りに受け取る。笑顔で「そのときは頼むわ」と伝えたらなぜかアンサラの顔がひきつりましたとさ。


 彼にお世話になるのはまたの機会として、目の前にある武具店である。


 さすがはAランク御用達と言うべきか。以前に装備を調えた店と比べて店構えは立派であり、単純な面積だけでも二倍近くの敷地がありそうだ。


「おう、いらっしゃい」


 出迎えたのはガタイの良いヒゲダンディ。半袖から覗く浅黒く焼けた逞しい腕を見るだけで、まさしく『武器屋!』と言いたくなるような風貌だ。


 この店はBランク以上の冒険者がよく利用する店のようだ。ランクを聞かれて素直に「Cランクです」と答えたら眉を顰められたが、アンサラからの紹介だと申告するとすんなりと受け入れられた。


「アンサラの人を見る目は確かだからな。奴が認めたって奴ならそりゃぁ将来有望なんだろうさ」


 テンプレな頑固親父と思いきや、案外そうでもなかった。


 下手な見栄を張るのは主義ではないので、己が武器の目利きに関してはど素人であることも同時に伝えると、武器屋のおっさんは気持ち良くうなずいてくれた。


「ーーーーってなわけなんですが」

「うっし、良いだろう。坊主にちょうど良い装備を見繕ってやるよ。とりあえず今の装備を外してこっちに預けちゃくれねぇか。寸法が知りたい。あと予算は幾らぐらいまで出せる?」

「そうだなぁ…………。Cランク相当の装備で一番良いのって、おいくらぐらい?」

「金貨二十〜三十ってところだ」

「じゃ、三十枚以内でお願いします」

「お、太っ腹だねぇ」


 この程度なら『城』から拝借した貯蓄を切り崩さずにギルドで稼いだ分で賄える金額だ。

 

 それから補足で、己が手足の防具による直接打撃を望んでいると伝えるが、店主は顔色を変えることなく承諾してくれた。手甲に残っている僅かな傷から既に予想が立っていた言う。このオヤジ、できるな?

 

 少しして店主が抱えて持ってきたのは、一旦預けた防具と同じタイプの軽鎧一式だ。ただ、その色合いは鉄製というには不思議な色合いをしてた。

 

 一度だけ、その金属の色に見覚えがあった。


「…………もしかして、ミスリル合金製?」

「そうさ。金貨三十枚でなら、この一式でちょうど予算内に収まる。ちょいと値が張るのは間違いないが質は保障するぞ」


 俺は店主に勧められるままに装備すると、まず驚いたのはその軽さだ。鉄製の装備は多少なりとも重さを感じていたのだが、ミスリル合金製の装備にはそれがない。羽毛を纏っているかのようだ、という表現はこのことを言うのだろうと実感した。


「話には聞いてたがこいつぁ驚いた」

「だろ? 初めてミスリル合金製の装備を身につけた奴は、大体坊主と同じ反応を見せる」


 軽く体を動かしてみるが、店主の見立てに狂いはなかったのか違和感が全くない。動きの阻害を極力減らす軽鎧だからと言うのもあるだろうが、おそらくこの辺りも質の良さに繋がっているのだと納得させられる。


「少しでも不具合を感じたら今の内に言っておけ。今回は無料にしてやるが以後はちょいと金をもらうことになるからな」

「や、全然無いわ」


 この時点で俺の購入意志は九割方は固まっていた。


 だが、残りの一割が傾く寸前で、シャドーボクシング紛いの素振りをしていた俺の目に、店の一角に鎮座している『それ』に目が止まった。


 人混みの中で、己の関係者だけが目立って見える時の感覚に似ているか。何気ない視線が陳列している武器の中に埋もれている『それ』を見つけたのだ。


 素振りを止めた俺は歩み寄り、それをーー深い藍色の光沢を放つ一対の手甲を引っ張り出した。


「店主のおっさん」

「ん? …………ああ、そいつか。そんなところに埋もれてやがったか」


 俺が手に取った手甲を見ると、店主が顔をしかめた。


「見たところ、ミスリルでできてる感じじゃないが」

「『重魔じゅうま鉱』ってぇ素材で作られた一品だ」

「ジュウマコウ?」


 随分とごっつい名前だな。 


「ミスリルよりも遙かに産出量が低い鉱石でな。頑丈さだけ・・を見ればミスリル合金製よりも上だ」


 もはやこの時点で色々と想像ができるな。


「坊主の察しの通り、重魔鉱で出来上がった装備品には致命的な欠陥がある。一時期は新素材としてそれなりの注目を受けたんだが」


 重魔鉱は周囲にある魔力を吸い込むことで重量を増す特性がある。鉱石の状態であれば問題ないが、精錬してその純度を増すと凄まじいほどの増加量を発揮するのだ。しかもほかの金属との融和性も非常に悪く、ミスリルのように含有量を調整した合金では一番の利点である頑丈さが失われてしまうという。


「ん? でも俺は今こいつを手に持ってるけど重さはぶっちゃけミスリル合金の手甲と変わらないぞ? びっくりする軽さだ」

「そいつは重魔鉱を研究していた酔狂な鍛冶士が作った代物でな。通常の精製された重魔鉱は空気中に漂う魔力も許容の限界まで吸い込んじまうが、その手甲は特殊な加工がされてるためか、ただ置いておく・・・・・・・ぶんには重量を増すことはないのさ」

「なんだ、問題点がばっちり解消されてるじゃねぇか」

 

 と、思いきや。店主は溜息混じりに話を続けた。


「話は最後まで聞け。確かに無作為に魔力を吸うことはなくなったが、代わりに装備した者の魔力を根こそぎ奪っちまうのさ」


 魔力を奪われる上に重量が増すとか 完全に呪いの装備仕様だろ。


「魔術士ならまず論外。戦士系でも、肉体強化に回す魔力をごっそり持っていかれるからな。はっきり言って、装備するメリットが見つからん」


 魔力親和性の問題もあるか。魔術式を使わない戦士系は、余っている魔力を身体活性に回している。燃料である魔力が失われれば、魔力親和性が幾ら高くても意味がない。残るのは重量を増した装備によって動きを縛られた体だけだ。


「なんでそんなものを店に置いておくんだよ」


「そいつがただの装備品だったらさっさと処分しているさ。だが、どうにもこの店の先代の頃からあるちょいと曰く付きの代物でな」

「購入者がことごとく不幸な死に遭遇しているとか?」

「なんつぅ物騒なこと言いやがるんだこの坊主は。そもそも買う奴がいない。何でも先代の更に上の代の店主から「いずれ来る相応しき者に与えよ」とかなんとか気取った言い回しが伝わってるんだとよ。この店を受け継いだ身としては簡単に処分するわけにはいかんのよ」


 呪いの装備と思いきや伝説の武器かい。や、伝説とは決まっていないが。装備者には漏れなく重量過多の呪いが付属する防具をどうやって扱うんだよ。


「『相応しき者』って判断基準どこよ」

「俺に聞くなよ。…………ただ一応、『特定の魔力』に関しては呪いじみた魔力の吸収は起こらないって話は先代から聞かされたな」

「何そのご都合主義。特定の魔力っておい」

「だから俺に聞くな。この話をしてくれた先代は、その更に上の代から聞かされたって言ってたしな。事実、先代も俺もその『相応しい者』とやらに会ったことは無いな。もし会ってたらこんな不良在庫はさっさと売り払っただろうが」


 おい先々代。せめてその『相応しき者』とやらの情報をもう少し残すとか出来なかったのか。特定の『魔力』ってどんな特定だよ。


 ………………………………。


 ………………………………。


 魔力?


「あ」

「ーーーー随分と意味深な「あ」だな、坊主」


 俺は手に持っていた『呪われた手甲(仮)』に視線を落とし、それから店主の顔に目を向けた。


「…………いけるかも」

「は? 坊主何を言ってーーーー」

「ちょいとこれパス」


 俺は装着していたミスリル合金製の手甲を左腕だけ外し、重魔鉱の右腕側と共に店主に預けた。俺の行動に予想がついた店主は二つの手甲を受け取りはしたが大いに慌てた。


「ま、待て坊主! 確かに持ってる分にはそいつはミスリル合金より軽いが、装着した途端にマジで凄まじく重くなるぞ! 俺も昔試してみたが鍛えているはずの俺でも支えきれないほどだ! 坊主の細腕じゃ折れちまう!」


 店主の警告に構わず、俺は手早く重魔鉱製の手甲を腕にハメ、留め具を固定した。


「…………………………………………」


「…………………………………………」


 …………………………………………。


 十秒ほど経過。


「うぇぇぇい」

「うぇぇぇぇぇえいッッッッ!?」


 先の声が俺で、後の声が店主だ。ぬるい歓喜の声に続いて、驚愕の絶叫が武具店の中に響いた。


「うぇいうぇぇい」


 ぬるい喜びを声にしながら、俺は手甲を装着した左腕を天井に向けて突き上げた。


「うぇッ!? おいマジかッ!? ちょっと待て、本当にこいつが重魔鉱の手甲か確かめーーーー」


 と、店主は『手甲そいつ』が本物かどうかを確かめようと、俺の装着しているのと対になっている右腕側を己の腕に装着するが。


「ーーーーぬごぉおおッッッッ???!!!」


 俺の視界から店主が消えた直後、ズゴォンという音が轟いた。


 …………え、どこに行ったの店主。


 消えた店主の行く先はすぐさま判明した。俺の足下からうめき声が聞こえ、そちらを見下ろせば右腕を手甲ごと床に埋めた店主が苦しげに呻いていた。驚くのは石畳の床には、手甲がめり込んだ地点を中心に亀裂が走っていた。


 店主の説明してくれた重魔鉱の特性は紛れもなく真実である証拠だった。


「ぼ、坊主。悪いが手を貸してくれねぇか。魔力を一気に吸われすぎて力が入らねぇ」


 冗談抜きにキツそうな店主の声に、俺は大急ぎで彼の右腕を『拘束』する留め金を外した。


「ふぅぅ…………、助かったぜ坊主。しかし、昔に興味本位で装備したときと全く同じだ。あの時は先代も「俺も一度は通った」ってボヤいてたのを思い出すぜ」


 超重量からの開放感からか大きく深呼吸をした店主は、珍獣に出会ったような目で『手甲』を左腕に装着する俺を見た。


「坊主。本当に重くねぇのか?」

「うぇい」

「その妙に気の抜けた返事はやめろ。…………だが、その様子だと本当に重量は増加してねぇみたいだな」


 俺の左腕に装着されたままの手甲それを持ち上げて、重量が変化していないことを確認する店主。


「こいつぁ本当に驚いた。まさか、坊主が先々代の言う『相応しき者』って奴だったのか…………」

「や、それは断じて違う」


 あらぬ誤解が生じる前に、俺は『待った』を掛けた。


 ーーーー諸事情説明中ーーーー。


「ま、魔力が無い…………だと?」

「そ。吸われるべき魔力のない俺にとっちゃぁ重魔鉱のマイナス要素は関係ナッスィングなのよ。あ、これって企業秘密なんで迂闊に他言しないでくれよ?」

「あ、ああ。そいつは理解したが…………」


 店主の反応からして、やはり俺のような魔力無しの存在は常識の埒外にあるとみて間違いないか。彼よりも一回り歳を食ったリーディアルの婆さんにしても俺と同じような存在と出会ったことはないと言うのだから当然かもしれない。


「ーーーーよし、決めた! この重魔鉱製の手甲は坊主に売る!」

「え、良いのか? 興味本位に着けただけで買う気は無かったんだぞ? それに先々代からの言いつけってのもあるだろうし」

「先々代から直接言葉を預かってた先代も手甲こいつの扱いには困ってたからな。たとえ魔力が無くとも、間違いなく坊主はその手甲を装備できたんだ。いつ現れるか分からん『特定の魔力そいつ』を待つよりは、現に装備できている坊主に扱ってもらった方が手甲そいつの方も喜ぶだろうさ」


 そういって店主は笑いながら俺の背中を叩いた。売り手がそう言ってくれるなら拒む理由はない。ミスリル合金同等の軽さでありながらそれを越える強度。俺としては願ったり叶ったりだ。


 店主は重魔鉱に魔力を一気に吸われて体力を消費していたが、そうでありながらも手甲の微調整を行ってくれた。おかげで、若干だが『ズレ』が生じていた手甲は完全に俺の両腕に馴染んだ。


 また、肝心のお値段ではあるが、なんとミスリル合金の胸当てとセットで当初の予算である金貨三十枚でいいとの事。店主、中々に太っ腹である。


 ーーーー俺は知らない。


 この手甲が『曰く付き』では済まされないとんでもない代物であると判明することを。

 


 

 ーーーー今日はこんなのばっかりだな! と後の俺は思うのであった。


先日姉が美味いチョコケーキを買ってきてくれました。美味しい物をガッツリ食べるのも好きですが、『本当に美味い』物をちょっぴり食べて満足するのも好きなナカノムラです。


身の回りはこのぐらいで。

毎度の事ながら感想文やブクマ登録、ありがとうございます。

特に、(誤字脱字報告を含めてですが)感想文は計400を突破しました。

以降も頑張って『カンナのカンナ』をお送りしていきたいと思います。

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